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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百四十五話 受けない仕事


農場の男が「今日はもういい」と言ったあと、ガレスは追加の調査をしなかった。


林の中に何かがいる。


少なくとも二匹。


だが、それ以上を確かめる仕事は頼まれていない。


ガレスは約束していた分の金を受け取り、荷物をまとめた。


「本当に帰るのか?」


農場の男が聞いた。


「ああ」


「もし今夜また来たら?」


「鶏は小屋に入れて、直した板を確認しろ。犬も夜は外に出すな」


「それでも来たら?」


「村の猟師に知らせろ。俺がまだ近くにいれば、宿にも伝えてくれ」


農場の男は林を見る。


「危ない魔物なんじゃないのか?」


「分からん」


「だったら調べた方がいいだろ」


「だから、そう言った」


男は黙った。


ガレスも責めるようなことは言わなかった。


鶏三羽の被害に、これ以上いくら払うか。


それを決めるのは依頼主だった。


二人は農場を出た。


⸻


村へ戻る道で、エイルは何度か後ろを振り返った。


「気になるか」


「気になります」


「だろうな」


「ガレスさんは気にならないんですか?」


「なる」


「じゃあ、やっぱり調べたいですよね?」


「調べたい」


エイルはガレスを見る。


「でも行かない?」


「ああ」


「……仕事じゃないから?」


「それもある」


ガレスは歩きながら答えた。


「二匹いる。正体は分からん。奥がどうなってるかも分からん。一人で入る理由がない」


「俺もいますよ」


「お前は数に入れてない」


「ですよね」


思っていた答えだった。


ガレスが少しだけ横を見る。


「不満か?」


「ちょっと」


「そうか」


「でも、分かります」


それ以上、エイルも言わなかった。


⸻


村へ戻ると、ガレスは昨日会った猟師の家へ向かった。


猟師は庭で弓の弦を張り直していた。


「どうだった?」


「猪が一頭。それとは別に犬に似た跡がある」


「灰犬か?」


「まだ分からん。二匹いる」


猟師の手が止まった。


「二匹?」


「ああ」


ガレスは農場で見たことを簡単に話した。


猟師はしばらく考える。


「俺も行った方がいいか?」


「依頼は終わった」


「終わった?」


「農場の親父が、これ以上は金を出さない」


「ああ……」


猟師は納得したように息を吐いた。


「鶏三羽じゃな」


「また被害が出たら話が変わる」


「分かった。こっちでも気にしとく」


それだけだった。


ガレスは村を出ようとする。


エイルが追いついた。


「今の人に、一緒に来てもらえばよかったんじゃないですか?」


「何の金で?」


「……あ」


「猟師にも仕事がある」


「自分の狩りとか?」


「畑もある。家もある」


エイルは振り返った。


猟師はもう弓の手入れに戻っている。


頼めば来てくれる。


そういうものでもないらしい。


⸻


その日は南へ進んだ。


途中、小さな村でガレスは何人かに声をかけた。


家畜の被害。


道で危ない場所がないか。


最近、見慣れない獣を見た者はいないか。


しかし、特に仕事につながる話はなかった。


「今日はもう仕事ないですかね」


村を出てからエイルが言った。


「たぶんな」


「ガレスさんでも、こんな感じなんですね」


「昨日も言っただろ」


「実際について歩くと、思ってたより何もないです」


「毎日魔物が出てたら、人が住めん」


「それもそうですね」


ガレスはそのまま歩く。


エイルも隣を歩いた。


やがて街道沿いに、小さな宿場が見えてきた。


⸻


宿に入る前に、ガレスは掲げられた看板を見た。


「部屋はあるか」


「あるよ」


宿の主人が答える。


「二人?」


「別だ」


エイルも自分の宿代を払った。


夕食を頼むと、財布の中身がまた少し減る。


ガレスは食事が来るまで、剣を壁際に置いて革の留め具を見ていた。


エイルも自分の剣を確認した。


特に問題はない。


「明日はどうするんです?」


「南へ行く」


「仕事を探しながら?」


「ああ」


「何もなかったら?」


「歩く」


「ずっと?」


「金が減ってきたら別の仕事も探す」


「魔物じゃなくても?」


ガレスが顔を上げる。


「当たり前だ」


「例えば?」


「荷運び。護衛。採集。畑」


エイルは少し笑った。


「俺が今までやってたのと、あんまり変わらないですね」


「何を期待してた」


「もうちょっと魔物を狩ってるのかと」


「昨日、森喰い犬を見ただろ」


「ガレスさんが倒してないですけど」


「あれは猟師が上手かった」


「そうですけど」


ガレスは革を拭いて、剣を置いた。


「魔物を倒した奴だけが金をもらえるなら、昨日の俺はただ働きだ」


エイルは森喰い犬の時を思い出した。


跡を探した。


回り込んだ。


猟師の方へ追い込んだ。


最後の一矢を放ったのは別の人だった。


「そういう数え方じゃないんですね」


「仕事だからな」


⸻


夕食が運ばれてきた。


二人で食べていると、宿の主人が近くの卓で客と話している声が聞こえた。


「明日も人が足りんらしいぞ」


「どこだ?」


「南の石切り場。荷を動かす奴が二人休んだって」


エイルはガレスを見る。


ガレスも聞いていた。


だが、すぐには立たなかった。


客との話が終わってから、宿の主人を呼ぶ。


「石切り場ってのは?」


「ここから南へ歩けば行ける。荷車に石を積む仕事だ」


「一日?」


「たぶんな」


「いくらだ」


主人が聞いている額を言った。


ガレスが少し考える。


「飯は?」


「昼は出るはずだ」


「朝に行っても入れるか?」


「人が足りないなら喜ぶんじゃないか」


ガレスはエイルを見る。


「お前は?」


「行きます」


「魔物じゃないぞ」


「今さらそこは気にしません」


ガレスがわずかに笑った。


「じゃあ朝、聞きに行くか」


「はい」


エイルは残ったパンを口に入れた。


二匹の足跡を残した林は、まだ気になっていた。


それでも明日は、石を運ぶ仕事になりそうだった。

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