↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
PR
140/403

第百四十話 次の仕事


まだ空が暗いうちに、エイルは宿を出た。


ガレスはすでに外にいた。


背負い袋を背負い、剣を腰に下げている。


「おはようございます」


「ああ」


「早いですね」


「昨日言っただろ」


「言ってましたけど、本当に暗いうちなんですね」


ガレスは歩き始めた。


エイルもその隣へ並ぶ。


村を出る頃、東の空が少しずつ明るくなり始めた。


⸻


二人は南へ向かった。


昨日までとは違って、今日は急ぐ理由がない。


それでもガレスの歩く速度は速かった。


「次の仕事、どこで探すんです?」


エイルが聞いた。


「途中の村で聞く」


「誰に?」


「人に」


「それは分かります」


ガレスが横を見る。


「宿。農家。猟師。商人。知ってる奴がいればそいつにも聞く」


エイルはこれまで自分がやってきたことを思い出した。


あまり変わらない。


「ガレスさんくらい長くやってても、同じなんですね」


「何が」


「仕事の探し方です」


「他に何がある」


「もっと知り合いから仕事が来るのかと思ってました」


「来ることもある」


「今回は?」


「ない」


ガレスは淡々と答えた。


「だから探す」


⸻


日が昇ってしばらくした頃、道沿いの小さな集落へ着いた。


ガレスはまず、畑で柵を直していた男に声をかけた。


「最近、獣か魔物の被害は?」


「うちじゃないな」


「近くは?」


「東の方で羊が減ったって聞いたが、いつだったかな」


それだけ聞くと、ガレスは礼を言って離れた。


次は井戸の近くにいた女。


その次は荷車を直していた男。


話は少しずつ違った。


羊が一頭。


いや二頭。


東ではなく南。


先月だったという者もいれば、数日前だという者もいる。


集落を出てから、エイルが聞いた。


「行かないんですか?」


「どこへ」


「羊が減ったところです」


「場所も日も分からん」


「もう少し聞けば分かるかもしれませんよ」


「誰に?」


エイルは少し考えた。


「羊を飼ってる人」


「それはそうだな」


ガレスが足を止めた。


「じゃあ探すか」


「え?」


「聞きたいんだろ」


「はい」


二人は集落へ戻った。


⸻


羊を飼っている家はすぐ分かった。


だが、被害を受けた家ではなかった。


「それなら東じゃなくて、川向こうの村だと思うぞ」


男が言った。


「いつだ?」


ガレスが聞く。


「十日くらい前かな」


「何がやった?」


「知らん。羊が一頭いなくなったって話だけだ」


「その後は?」


「聞いてない」


ガレスは礼を言った。


今度こそ集落を出る。


「行かないんですか?」


エイルが聞いた。


「十日前に羊が一頭消えただけだ」


「魔物かもしれないですよ」


「人に売ったかもしれん」


「あ」


「崖から落ちたかもしれん。盗まれたかもしれん。狼かもしれん」


「確かに」


「仕事を頼まれてもいない」


エイルは頷いた。


ガレスはそのまま南へ歩いた。


⸻


昼頃、街道脇で休んだ。


パンと干し肉を食べる。


エイルが水を飲んでいると、ガレスが聞いた。


「金はあるのか」


「あります」


「どれくらい」


エイルは答えようとして止まった。


「全部言うんですか?」


「言いたくないならいい」


「何日か仕事なくても宿と食事には困らないくらいです」


「ならいい」


「ガレスさんは?」


「何が」


「何日くらい仕事なくても大丈夫なんです?」


ガレスは干し肉を噛みながら答えた。


「今ならしばらく」


「結構貯めてるんですね」


「怪我したら働けん」


エイルは自分の財布を思い出した。


宿代と食費。


道具の修理。


移動費。


それまでは考えていた。


「怪我してる間の分も残してるんですか?」


「残せる時はな」


「残せない時も?」


「ある」


ガレスは水筒をしまった。


「道具が壊れる。薬を買う。仕事がない。そういうのが重なるとな」


「じゃあ今回の報酬も、全部使える金じゃないんですね」


「使おうと思えば使える」


「使ったら困る?」


「あとでな」


休憩を終え、また歩き始めた。


⸻


午後になると、少し大きな村が見えてきた。


今日はここで泊まるらしい。


ガレスは宿へ行く前に、村の雑貨屋へ入った。


針と糸、それから小さな油の瓶を買う。


「何に使うんです?」


「革」


「自分で直すんですか?」


「直せるところはな」


店を出る。


次にガレスが向かったのは村の猟師の家だった。


知り合いらしい。


「久しぶりだな」


猟師が言った。


「何かあるか」


挨拶もそこそこにガレスが聞く。


「仕事か?」


「ああ」


「ちょうど一つある」


エイルがガレスを見る。


猟師は続けた。


「西の農場で、夜に家畜小屋の周りを何かが歩いてる」


「被害は?」


「鶏が三羽」


「見た奴は?」


「農場の親父。影だけだそうだ」


「足跡は?」


「あるらしい」


「いつから?」


「ここ数日だ」


ガレスは少し考えた。


「誰か行ったか?」


「まだだ」


「金は?」


「そこまでは知らん。親父と話せ」


「分かった」


ガレスが家を出る。


エイルもついていった。


「行くんですか?」


「まず話を聞く」


「西の農場に?」


「ああ」


少し歩いたところで、ガレスが止まった。


エイルを見る。


「お前、まだ俺についてくる気か」


「はい」


「昨日、魔物の仕事を見たいと言ったな」


「言いました」


「明日、農場へ話を聞きに行く」


「はい」


「まだ狩ると決まったわけじゃない」


「分かってます」


ガレスは少し黙った。


「話を聞くところまでなら来い」


エイルは一瞬、返事が遅れた。


「いいんですか?」


「農場だ。森には入らん」


「はい」


「勝手なことはするな」


「しません」


「俺が危ないと言ったら離れろ」


「分かりました」


ガレスはまた歩き始めた。


エイルも追いつく。


「それと」


「はい」


「金は出ないぞ」


「俺の分ですか?」


「ああ。お前はまだ雇われてない」


「分かりました」


「宿代も自分で払え」


「それも分かってます」


二人は宿へ向かった。


明日はまず、鶏が三羽いなくなった農場へ行くことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。