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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百二十九話 北を回る商人


それから数日、エイルはいつも通り仕事を探して過ごした。


朝に市場へ行き、仕事があれば受ける。


なければ運送商会へ行く。


半日だけ荷を運んだ日もあれば、一日何も見つからなかった日もあった。


皮を扱う店の前を通る時には、店先の荷車を見るようにしていた。


探している商人はいない。


翌日もいない。


その次の日は、エイル自身が町にいなかった。


近くの村まで荷を届ける仕事が入り、一泊して戻ってきた。


⸻


町へ戻った翌朝。


エイルは市場で野菜の入った木箱を運んでいた。


「それ終わったらこっち!」


「はい!」


荷を置き、次の箱へ向かう。


午前中いっぱい働いた。


報酬を受け取る。


「午後もあります?」


「今日は終わりだ」


「分かりました」


店を出て、いつものように市場を歩く。


皮を扱う店の前まで来たところで、見慣れない荷車が止まっていた。


荷台には丸めた皮が積まれている。


エイルは足を止めた。


店の中を見る。


店主と、一人の男が話していた。


五十くらい。


日に焼けた顔。


外套には土埃がついている。


以前聞いた商人の顔は知らない。


エイルは店へ入った。


「こんにちは」


店主が振り返る。


「ああ」


エイルは男を見る。


「もしかして――」


名前を言う。


男もこちらを見る。


「そうだが」


見つけた。


「ちょっと聞きたいことが――」


「待て」


店主に止められた。


「今、商売してる」


「あ、すみません」


男の前には、皮が何枚か広げられていた。


エイルは店を出た。


⸻


店先で待っていると、しばらくして男が出てきた。


「俺に用か?」


「はい」


「何だ?」


「ガレスっていう人を知ってます?」


男の眉が少し動いた。


「ガレス?」


「魔物を狩ったり、護衛をしたりしてる人です。四十くらいで、一人で動くことが多いって聞いてます」


男は少し考えた。


「知り合いじゃないな」


「見たことは?」


「たぶんない」


エイルは頷いた。


やはり直接会ったわけではないらしい。


「じゃあ、名前を聞いたことありません?」


「どこで俺の話を聞いた?」


「運送商会の人からです。北を回ってる商人がガレスの名前を話してたって」


「ああ……」


男は荷車へ荷を積みながら考えている。


エイルも待った。


「ラダだったかな」


「ラダ?」


「いや、違う。ラダより先だ」


エイルは鞄からノートを取り出した。


「どこです?」


「待てって。思い出してる」


「はい」


しばらくして、男が一つの村の名前を言った。


エイルは書き留める。


知らない村だった。


「そこでガレスを見たんですか?」


「だから見てない」


「じゃあ誰から?」


「猟師だったと思う」


「その人がガレスを知ってた?」


「近くの村で仕事をしたとか言ってたな」


「何の仕事です?」


「そこまでは知らん」


「いつです?」


「さあ」


「一月前とか?」


「分からん」


エイルの手が止まった。


場所は分かった。


だが、その情報がいつのものなのか分からない。


「その村、ここからどのくらいです?」


「荷車なら三日くらいだ」


「歩いたら?」


「もっとかかる」


「ラダを通ります?」


「ああ。そこからさらに北だ」


エイルは地図を取り出した。


男に場所を教えてもらう。


「この辺?」


「もう少し東」


「こっち?」


「そうだ」


印をつける。


ようやく、これまでより具体的な場所が一つ増えた。


⸻


「お前、そいつを探してるのか?」


男が聞いた。


「はい」


「何で?」


「一緒に仕事をさせてもらえないかなと思って」


「知り合いじゃないんだろ?」


「会ったこともないです」


男がエイルを見る。


「それで三日先まで追うのか?」


「今すぐは行きません」


「行かないのか」


「だって、今そこにいるか分からないですよね」


男は少し笑った。


「まあな」


「北へ行く仕事があったら、その時に近くまで行けないかなと思ってます」


「それがいいんじゃないか」


男は荷車へ乗った。


「ありがとうございます」


「次は買い物してくれ」


「お金が余ったら」


「じゃあ当分無理そうだな」


「たぶん」


男は笑って荷車を出した。


⸻


エイルはそのまま運送商会へ向かった。


「仕事あります?」


「今日はもうないぞ」


「明日以降で北へ行くのは?」


受付の男が顔を上げる。


「北のどこだ?」


エイルはさっき聞いた村の名前を言った。


「そこまで行くのは、うちじゃあんまりないな」


「ラダは?」


「たまにある」


「その先へ行く荷車は?」


「荷次第だ」


「近いうちにあります?」


男は予定を確認した。


「今のところない」


「そうですか」


エイルはすぐに諦めた。


「じゃあ普通の仕事で何かあったらお願いします」


「そっちは明日の朝また来い」


「分かりました」


⸻


宿へ戻る。


机に地図を広げた。


町。


ラダ。


そのさらに北。


今日聞いた村。


指で道を追う。


かなり遠い。


歩いて往復するだけでも何日も使う。


しかも、着いたところでガレスがいる保証はない。


エイルは地図を畳んだ。


明日の仕事もまだ決まっていない。


まずは朝、運送商会へ行く。


北へ向かう仕事があれば聞く。


なければ別の仕事をする。


それでよかった。

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