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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百二十五話 知らない町

第百二十五話 知らない町


荷下ろしが終わると、商人は宿を探しに行った。


「夕食までには戻れよ」


「はい」


エイルは荷車を離れ、ラダの町を歩いてみることにした。


学校のあった町ほど大きくない。


大通りと呼べそうな道も一本だけで、その両側に宿や食堂、商店が並んでいる。少し外れるとすぐに住宅が増え、その向こうには畑が見えた。


まず目についたのは鍛冶屋だった。


その隣には革を扱う店。


少し先には薬屋がある。


エイルは薬屋へ入った。


「何か買うのか?」


店主に聞かれる。


「いや、仕事がないかなと思って」


「採取か?」


「それもです。魔物関係でも」


「うちは薬屋だぞ」


「ですよね」


店主が少し笑った。


「採ってきてほしい薬草ならある」


名前を聞く。


エイルも学校で習ったことのある薬草だった。


「どこにあります?」


「この辺なら北東の丘だな」


「どのくらい?」


「歩いて半日くらい」


「いくらで買います?」


量と値段を聞く。


悪くはない。


ただ、明日の朝にはこの町を出る。


「今回は無理ですね」


「なら仕方ない」


エイルは礼を言って店を出た。


⸻


次に鍛冶屋へ寄った。


仕事を探すというより、自分の剣を見てもらった鍛冶屋と何が違うのか気になっただけだった。


店先には農具が多い。


剣は数本しか置いていない。


奥では男が金属を熱していた。


火のそばで、短い術式が形成される。


炉の中の火が一瞬強くなった。


エイルは少し見てから店を出た。


町を歩いていると、こういう魔術は時々目に入る。


わざわざ誰も気にしない。


必要だから使っているだけだった。


⸻


大通りへ戻り、今度は食堂へ入った。


まだ夕食には早い。


客は少なかった。


水を頼み、店の女主人に聞く。


「この辺で魔物を狩ってる人っています?」


「いるんじゃない?」


「誰か知ってます?」


「私は知らないねえ」


「最近、被害とかは?」


女主人は少し考えた。


「西の方で畑を荒らされたとか聞いたけど」


「いつです?」


「いつだったかな」


「何が出たかは?」


「そこまでは知らないよ」


また曖昧だった。


「この町でそういう話を知ってそうな人っています?」


「猟師なら森のことは知ってるんじゃない?」


「どこにいます?」


「今の時間なら帰ってるんじゃないかね」


家の場所を聞くほどでもなかった。


明日の朝には出る。


エイルは水代を払って店を出た。


⸻


通りを歩きながら、何人かに同じようなことを聞いてみた。


荷車を直していた男。


店先を掃いていた老人。


井戸で水を汲んでいた女。


返ってくる話はばらばらだった。


北で灰犬を見た。


それは去年の話。


東の林で大きな猪が出た。


普通の猪だったかもしれない。


西の畑が荒らされた。


どこの畑かは知らない。


誰かが退治したらしい。


いや、まだらしい。


エイルは途中から笑ってしまった。


「全然分からないな」


一人で町を歩いて聞くだけでは、そんなものだった。


⸻


宿へ戻る途中、小さな広場があった。


荷運びをしている男たちがいる。


エイルは少し立ち止まった。


仕事があるのかと思ったが、すでに人数は足りているようだった。


そのうちの一人が、重そうな樽を持ち上げる。


身体強化を使っていた。


別の男は普通に二人がかりで運んでいる。


エイルはそのまま通り過ぎた。


宿へ戻る。


⸻


夕食の席には、商人と御者、それにダンがいた。


「何してた?」


商人に聞かれる。


「町を見てました」


「何か面白いものあったか?」


「薬草の仕事はありました。でも明日帰るから無理です」


「そりゃ無理だ」


「あと魔物の話も聞いてみました」


ダンが顔を上げた。


「何かあったか?」


「いろいろ聞いたんですけど、どれが今の話か分かりません」


「そんなもんだ」


「ダンさんならどうします?」


「何が?」


「この町で魔物の仕事を探すなら」


ダンは少し考えた。


「まず猟師に聞くかな」


昼間にも同じことを言われた。


「猟師ですか」


「森に入るからな。あとは農家」


「一軒ずつ?」


「必要なら」


「大変ですね」


「仕事だからな」


ダンは普通に食事を続けた。


エイルもパンをちぎった。


⸻


翌朝。


荷車はラダを出た。


帰りの荷は行きより少ない。


商人が仕入れた革と木材、それに空の樽がいくつか。


エイルは荷台の縄を確認してから歩き始めた。


昼前。


昨日倒木を動かした場所を通る。


木はまだ道端に残っていた。


誰かがさらに端へ寄せたらしく、昨日より道が広くなっている。


「このままなんですね」


エイルが言った。


御者が振り返る。


「何が?」


「木です」


「邪魔じゃないならそのうち腐るだろ」


「片づけないんですか?」


「誰が?」


エイルは答えなかった。


荷車はその横を通り過ぎた。


⸻


午後。


空が曇り始めた。


雨が来そうだった。


御者が少し速度を上げる。


「宿場まで持つかな」


ダンが空を見る。


「微妙だな」


エイルも雨具を取り出しやすい位置へ移した。


少しして、ぽつぽつと雨が落ちてきた。


「来た」


荷車を止める。


積み荷に布をかけ直す。


エイルも手伝った。


風が出てきて、布の端が持ち上がる。


エイルは押さえながら縄を取る。


「そっち引け!」


「はい!」


ダンと二人で固定する。


雨が強くなる前に作業を終えた。


再び進む。


⸻


宿場へ着いた頃には、全員かなり濡れていた。


エイルは部屋へ入ると、上着を脱いだ。


濡れている。


乾燥の術式を使う。


布から湿気が抜けていく。


旅に出たばかりの頃より、こういう時には迷わなくなった。


靴は脱いで壁際へ置く。


こちらには使わない。


「そこは覚えた」


誰もいない部屋で呟いた。


⸻


翌朝には雨も上がった。


道の状態を確認しながら進み、昼過ぎには元の町へ戻った。


荷を下ろす。


商会の男から報酬を受け取る。


三日分。


宿と食事は向こう持ちだったので、町に残って働くより手元に残る金は多かった。


「また頼めます?」


「仕事があればな」


いつもの答えだった。


エイルは商会を出た。


三日ぶりに町へ戻った。


まず安い宿へ行き、預けていた荷物を受け取る。


部屋を取る。


そのあと市場へ向かった。


明日の仕事を探すためだった。

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