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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百十九話 空いた一日


翌朝、エイルは少し遅めに宿を出た。


昨日まで四日間、荷車について歩いていたせいか、足に疲れが残っている。


それでも市場へ向かった。


仕事が決まっていない以上、休むと決めたわけでもない。


いつもの店を順番に回る。


「今日は?」


「ない」


「明日は?」


「まだ分からん」


次の店でも似たような返事だった。


運送商会にも寄ったが、今日は人手が足りているという。


「昨日戻ったばっかりだろ」


顔を覚えていた男に言われた。


「はい」


「休めばいいじゃないか」


「休んでも宿代かかるので」


「働いてても宿代はかかるだろ」


「それはそうですけど」


男が笑った。


結局、午前中いっぱい歩いても仕事は見つからなかった。


---


昼食は安いパンとスープにした。


食べながら、財布の中身を数える。


町へ来たばかりの頃より、仕事は見つけやすくなった。


市場では顔を覚えてくれた人もいる。


紹介で遠出の仕事にも行けた。


それでも、毎日働けるわけではない。


エイルは頭の中で、ここ数日の金の出入りを思い返した。


遠出の四日間は食事も寝床も商人持ちだった。


その間はほとんど金を使わなかった。


一方で、北の牧場へ行った日は収入がない。


西の村へ行った日も、野菜をもらっただけだった。


今日も、このままなら収入はない。


「もう少し安いところ、あるかな」


宿代を下げられれば、その分だけ余裕ができる。


食事を終えると、エイルは宿を探してみることにした。


---


最初に入った宿は、今泊まっているところより少し高かった。


二軒目は安い。


「一泊いくらです?」


金額を聞いて、エイルは部屋も見せてもらった。


狭い。


寝台と小さな棚だけ。


それ自体は構わない。


「荷物は部屋に置いていいですか?」


「ああ」


「長く空けることもあるんですけど」


「何日くらいだ?」


「仕事次第です。三日とか、五日とか」


「泊まってない日も部屋を取っとくなら金はもらうぞ」


「ですよね」


「荷物を預けるだけなら別だ」


「いくらです?」


宿の主人が金額を言う。


エイルは少し考えた。


遠出の間だけ荷物を預けて部屋を空ければ、その分はかなり安くなる。


「食事は?」


「別」


「洗濯は?」


「自分でやるなら裏で水を使っていい」


「お湯は?」


「金を取る」


細かく聞いていく。


今の宿より不便ではある。


ただ、安い。


「明日から空いてます?」


「一部屋ある」


「じゃあ、明日移ります」


決めた。


---


今の宿へ戻り、主人に話す。


「宿、変えます」


「そうか」


あっさりしていた。


「もっと安いところ見つけたので」


「うちは安宿のつもりなんだがな」


「向こうはもっと狭かったです」


「なら納得だ」


主人は笑った。


エイルも部屋へ戻り、荷物を整理する。


学校の寮にいた頃は、部屋代を毎日考えたことなどなかった。


今は、寝る場所を少し変えるだけで、何日働かずにいられるかが変わる。


ただ、安ければ何でもいいわけでもない。


荷物を置けるか。


遠出の間どうするか。


食事はいくらか。


水は使えるか。


町で仕事を探しやすい場所か。


結局、宿一つ決めるにも考えることが多かった。


---


荷物をまとめ終えたところで、まだ日が残っていた。


エイルは剣を持って外へ出た。


町の外まで歩き、人のいない場所を探す。


剣を抜く。


学校を卒業してから、まともに振る機会が減っていた。


荷運びでは身体強化を使う。


だが、剣は使わない。


構える。


一歩踏み込んで振る。


戻る。


もう一度。


何度か繰り返すうちに、少し動きが重いことに気づいた。


「鈍ってるな」


レオンと最後に打ち合ったときのことを思い出す。


あのときも負けた。


今やれば、もっと早く負けるかもしれない。


エイルは少し笑った。


身体強化を使って、もう一度構えた。


一人なので無理はしない。


基本の動きを繰り返す。


しばらくして剣を収めた。


帰ろうとしたところで、街道から声をかけられた。


「兄ちゃん」


振り返る。


荷車を止めた男がこちらを見ていた。


「剣使えるのか?」


「少しなら」


「護衛は?」


「まだやったことないです」


「そうか」


男はそれだけ言って、荷車を進ませようとした。


エイルが慌てて呼び止める。


「護衛、探してるんですか?」


「いや。明日、一人来られなくなっただけだ」


「どこまで行くんです?」


男が振り返る。


「西のミルダまで」


聞いたことのない名前だった。


「何日です?」


「二日。向こうで一泊して戻る」


「荷運びもします?」


「する」


「俺でもいいですか?」


男はエイルを見る。


「護衛としては数えんぞ」


また同じことを言われた。


「それでいいです。荷運びならできます」


「なら明日の朝、南門に来い。商会の名前は――」


「待ってください」


エイルは男を止めた。


「報酬と、食事と、泊まるところも聞いていいですか?」


男が少し黙った。


それから笑った。


「先にそこを聞くか」


「前の仕事で、聞いた方がいいって言われたので」


条件を一つずつ確認する。


二日。


食事あり。


寝床あり。


予定が一日延びた場合は追加あり。


荷運びが中心で、護衛は別に二人いる。


エイルは頷いた。


「行きます」


「じゃあ遅れるなよ」


「はい」


荷車が街道を進んでいく。


エイルはその背中を見送った。


朝には仕事がなかった。


一日探しても見つからなかった。


それが夕方、剣を振りに町の外へ出たところで、明日の仕事が決まった。


探したから見つかるとも限らない。


探さなくても、声をかけられることがある。


ただ、声をかけられたのは、腰に剣を下げていたからだった。


エイルは宿へ戻りながら、明日の行き先をもう一度頭の中で確認した。


西のミルダ。


今度は二日間の仕事だった。


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