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THE GUILD  作者: axe
第三章 外の世界へ
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第百十四話 初めての稼ぎ


翌朝、エイルは昨日働いた店へ向かった。


店主は店先に商品を並べていた。


「おはようございます。今日は何かあります?」


「今日はない」


「明日は?」


「今のところないな」


「分かりました」


昨日一度働いたからといって、今日も仕事があるわけではない。


エイルは市場へ向かった。


何軒か聞いて回ったところで、穀物を扱う店から声をかけられた。


「午後なら人が欲しい」


「何するんです?」


「倉庫から麦袋を運ぶ。荷車二台分だ」


条件を聞く。


半日の仕事。


賃金も確認する。


「やります」


午後の仕事が決まった。


まだ午前中が空いている。


エイルは少し考えてから、鍛冶屋へ向かった。


⸻


「これ、見てもらえます?」


腰の剣を外して渡す。


鍛冶屋の男が鞘から抜いた。


刃を見る。


何度か角度を変え、指で軽く確かめる。


「何に使った?」


「学校の訓練です」


「実戦は?」


「まだです」


「なら大した傷みはない」


男は剣を返した。


「研がなくていいんですか?」


「今はな」


「どのくらいで研ぐものなんです?」


「使い方による」


「欠けたら?」


「持ってこい」


「錆びたら?」


「その前に手入れしろ」


もっと明確な答えが返ってくると思っていたが、そうでもなかった。


エイルは手入れ用の油の値段も聞いた。


「これも金かかるのか……」


「当たり前だ」


「剣って持ってるだけでも金かかりますね」


「使うならもっとかかるぞ」


結局、今日は修理せずに済んだ。


店を出る。


まだ時間がある。


エイルは町の外へ向かった。


⸻


街道から少し離れた空き地で、鞄から魔術のノートを出した。


昨日の夜にも少し確認したが、今日はもう少し動きながら試してみたかった。


まず身体強化。


形成。


発動。


軽く走る。


止まる。


方向を変える。


学校でも何度も使った術式なので、問題はない。


次に灯り。


昼なのでほとんど意味はない。


「これは今やっても分からないな」


消す。


別の術式を選ぶ。


風を起こす基本術式だった。


授業では紙や軽い物を動かす練習に使った。


形成して発動する。


草が揺れる。


もう一度。


今度は少し離れた場所へ向ける。


草が倒れ、すぐ戻った。


「旅で何に使うんだろ」


ノートには使い方まで全部書いてあるわけではない。


学校では術式そのものを学ぶために使った。


実際に外で生活すると、覚えた魔術の中でも便利なものと、使い道がすぐ思いつかないものがある。


エイルは次の頁を開いた。


簡単な加熱。


着火。


乾燥。


灯り。


身体強化。


風。


ほかにもある。


全部を順番に使ってみる必要はない。


「火は野宿で使えるな」


着火の術式を形成する。


地面に置いた小枝へ向けようとして、手を止めた。


周りを見る。


乾いた草がある。


「ここでやるのは駄目か」


学校なら、使う場所まで用意されていた。


外では自分で考えなければならない。


術式を消す。


その代わり、地面に小石を一つ置いた。


学校で習った、ごく弱い衝撃を与える術式を形成する。


発動。


小石が転がった。


「これなら大丈夫」


もう一度。


今度は少し離れた位置から。


小石が跳ねる。


三度目は外した。


「難しいな」


術式そのものは形成できている。


狙った場所へ使うとなると別だった。


もう一度やる。


今度は当たった。


エイルはしばらくそれを繰り返した。


⸻


昼前になり、ノートをしまう。


最後に剣を抜いた。


素振りをする。


身体強化を使わずに何度か。


次に使って何度か。


学校でレオンと戦った時のことを思い出す。


身体強化が使えても、間合いや足運びまで勝手に良くなるわけではなかった。


魔術も同じなのかもしれない。


術式を作れる。


発動できる。


だから狙ったところへ、狙った瞬間に使えるとは限らない。


「そりゃ練習いるか」


剣を鞘へ戻した。


午後の仕事へ向かった。


⸻


穀物店では、すでに荷車が用意されていた。


「遅れてないな」


「はい」


「これを積む」


麦袋を指される。


エイルは一つ持ち上げた。


重い。


身体強化を使う。


一気に楽になる。


二つ持とうとすると、店主に止められた。


「一つでいい」


「持てますよ」


「荷車の上で積む奴のことも考えろ」


「あ」


エイルが二袋まとめて渡せば、受け取る側が困る。


一つずつ運ぶ。


しばらくすると荷車がいっぱいになった。


エイルがさらに袋を載せようとすると、今度は御者に止められた。


「そこまで」


「まだ載りますよ」


「坂がある」


「坂?」


「重すぎると下りで止めにくい」


エイルは荷車を見る。


載せられる量と、運べる量は違うらしい。


「分かりました」


残りは二台目へ回した。


⸻


夕方まで働き、半日分の賃金を受け取った。


昨日より少ない。


当然だった。


宿へ戻りながら、エイルは財布を確認する。


二日続けて稼げた。


それでも宿代と食事代を引けば、それほど残らない。


翌日は仕事が見つからなかった。


午前中は市場と運送商会を回った。


午後は宿の部屋でノートを読み、少し離れた空き地で魔術を試した。


次の日は朝だけ荷運び。


その翌日は一日仕事があった。


仕事がない日は、魔術の練習をする。


剣も振る。


町の外へ出る時には、学校で習った術式を一つか二つ実際に使ってみた。


灯りは便利だった。


着火も使いやすい。


風はまだ使い道がよく分からない。


弱い衝撃の術式は、止まっている小石なら当てられるようになったが、動く相手に使えるかは分からない。


⸻


数日後。


市場で仕事を探していると、商人から声をかけられた。


「近くの村まで荷を運ぶんだが、手伝えるか?」


「何日です?」


「半日で行ける。荷を下ろして、明日の朝戻る」


「食事と寝るところは?」


「こっちで出す」


「報酬は?」


条件を聞いてから引き受けた。


町の外へ仕事で出るのは初めてだった。


⸻


村へ向かう途中。


商人と御者、それにエイルの三人で荷車を進めた。


日が傾き始めた頃、御者が指を鳴らした。


小さな光が荷車の前に浮かぶ。


エイルが見る。


「灯り使えるんですね」


「これくらいはな」


「誰に習ったんです?」


「兄貴」


「ほかには?」


「身体強化と着火くらいだ」


「術式は読めます?」


「読めん」


御者は笑った。


「お前、学校出なんだって?」


「はい」


「なら俺よりいろいろ使えるだろ」


「使えるのはありますけど、外でどう使うかは今試してます」


「変なところで火だけ出すなよ」


「この前やめました」


「ならいい」


少し先で道が暗くなる。


エイルも灯りを形成した。


御者の光より明るかったが、その分、維持していると少し疲れる。


「明るすぎるな」


商人が言った。


「駄目ですか?」


「道が見えれば十分だ」


「ああ」


エイルは一度消した。


今度は学校で習った形を思い出しながら、必要以上に力を流さないように発動する。


さっきより弱い光になった。


御者が見る。


「変えられるのか?」


「少しくらいなら」


「便利だな」


エイルは光を見る。


学校では、明るく安定して出せればそれでよかった。


旅では、必要な明るさが違う。


そのまま三人で村へ向かった。


⸻


村に着き、荷を下ろしていると、一人の男が商人に話しかけてきた。


「北の森の方で、羊がやられたらしいぞ」


商人が手を止める。


「いつ?」


「三日前だったかな」


エイルも聞いていた。


「魔物ですか?」


男がエイルを見る。


「さあな。狼かもしれん」


「どこの羊です?」


「ここじゃない。もう少し北の牧場だ」


「誰か見に行きました?」


「知らん」


エイルはそれ以上聞かなかった。


明日は商人と町へ戻る約束がある。


勝手に北へ行くことはできない。


ただ、場所だけは覚えておいた。


翌朝。


予定通り町へ戻る。


荷を片づけ、報酬を受け取った。


エイルは昨日聞いた話を思い出した。


北の牧場。


羊。


三日前。


魔物かどうかは分からない。


明日は、今のところ仕事がない。


なら見に行くことはできる。


エイルは宿へ戻ると、地図とノートを取り出した。


剣だけではなく、雨具と水、食べ物、薬を確認する。


それから魔術のノートも開いた。


森の近くへ行くなら、何が使えるだろう。


身体強化。


灯り。


着火。


弱い衝撃。


ほかにも学校で習ったものがある。


エイルは一つずつ見直した。


魔物と戦いに行くつもりはない。


まず、何が起きたのかを見に行く。


それでも町の外へ一人で行く以上、使えるものは確認しておいた方がよかった。

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