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THE GUILD  作者: axe
第二章 学びの街
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第百話 作る側

次の実習先は、学校から少し離れた工房だった。


前回見学した工房よりも大きく、建物もいくつかに分かれている。


木工をする場所。


金属を加工する場所。


完成した部品を組み立てる場所。


そして奥には、魔道具を扱う区画もあった。


「ノア」


エイルが隣を見る。


「何?」


「嬉しそう」


「まだ何もしてない」


「でも嬉しそう」


「うるさい」


否定はしなかった。


---


工房の職人が、生徒たちを作業台の前に集めた。


「今日は簡単な照明具を作ってもらう」


机の上には、手のひらほどの木製の台と、薄い金属板、小さな透明板などが置かれていた。


エイルが聞く。


「光るんですか?」


「最後までちゃんとできればな」


「魔術使う?」


「使う。ただし、先に道具を作る」


職人は部品を一つずつ説明した。


土台を整える。


金属板を決められた位置に固定する。


魔力を通す部分を作る。


その上で、あらかじめ決められた術式を組み込む。


「術式だけできても駄目なんですか?」


「その術式をどこに入れる?」


「ここ?」


「そこに入るように作れていればな」


エイルは部品を見る。


基礎魔力学では、完成した術式そのものを扱うことが多い。


けれど魔道具では、その術式を入れる場所から作らなければならない。


「面白い」


横を見る。


ノアはもう説明用の見本を覗き込んでいた。


---


作業が始まった。


エイルは木製の土台に金属板を取り付ける。


「……入らない」


押す。


入らない。


向きを変える。


やはり入らない。


「ノア」


「何?」


「これ入らない」


ノアが見る。


「土台削った?」


「削ったよ」


「足りないんじゃない?」


「でも線まで削った」


ノアが土台を手に取る。


少し見る。


「ここ斜めになってる」


「どこ?」


「ここ」


指を差されても、エイルにはほとんど違いが分からない。


「ちょっとだけじゃん」


「だから入らないんだよ」


前の工房でも似たようなことを言われた気がする。


エイルはもう一度削った。


今度は金属板が入った。


「入った!」


「押し込みすぎ」


「え?」


少し深く入っている。


「取れる?」


「取れると思う」


二人で外す。


「壊すなよ」


職人から声が飛んできた。


「はい!」


---


ノアは速く作るわけではなかった。


むしろエイルより遅い。


部品を合わせる。


外す。


見る。


少し削る。


また合わせる。


「まだ?」


エイルが聞く。


「まだ」


「入るじゃん」


「少し動く」


「動いたら駄目なの?」


「たぶん」


「たぶん?」


ノアが職人を呼んだ。


「これ、これくらい動いても大丈夫ですか?」


職人が確認する。


「この程度なら使える。ただ、長く使っていると緩みやすいな」


「じゃあ直します」


「そうした方がいい」


ノアはまた部品を外した。


エイルが見る。


「使えるって言ってたよ」


「長く使ったら困るって言っただろ」


「今は使えるのに?」


「今だけ使えても仕方ないだろ」


ノアは当然のように答えた。


---


土台が完成すると、ようやく魔術を扱う作業になった。


決められた術式を、魔力を通す板へ形成する。


ここはエイルが得意だった。


見本を見る。


構造を確認する。


形成する。


一度で形が整った。


「できた」


ノアが振り向く。


「早いな」


「うん」


エイルは少し嬉しくなる。


ノアはまだ形成している。


こちらはエイルの方が明らかに速かった。


ところが。


「じゃあ組み込め」


職人に言われ、エイルは完成した板を土台へ取り付けようとした。


止まった。


「……入らない」


ノアが見る。


「また?」


「今度はちゃんと削ったよ」


職人が来る。


板を見る。


土台を見る。


「ここの留め具が逆だ」


「これ?」


「そう」


エイルは外して付け直す。


今度は入った。


「できた」


魔力を通す。


透明板の向こうに、小さな光が灯った。


「おお」


思ったより嬉しかった。


エイルは手のひらほどの照明具を見る。


自分が普段使う魔術とは違う。


誰かが魔力を通せば、同じように光る。


隣でも光が灯った。


ノアのものだった。


「できた!」


珍しく大きな声だった。


「ノアのも光った」


「うん」


ノアは照明より、その周りを確認している。


「何見てるの?」


「ちゃんと固定できてるか」


「光ってるよ」


「光ってても外れたら駄目だろ」


エイルは自分の照明具を見る。


少し振ってみる。


「振るな!」


職人に怒られた。


---


午後は、完成品の検査を手伝った。


作ったものを動かして終わりではない。


一定時間光るか。


途中で暗くならないか。


部品が緩まないか。


熱を持ちすぎないか。


いくつか確認する。


「全部見るんですか?」


エイルが聞く。


「売るものならな」


「作った人がちゃんと作ったって言っても?」


「間違えることはある」


「職人でも?」


「職人でもだ」


エイルは自分が最初に留め具を逆につけたことを思い出した。


「じゃあ見る」


「そうしてくれ」


何個か確認していると、ノアが一つを止めた。


「これ、少し暗くないですか?」


職人が比較する。


確かにわずかに暗い。


「よく気づいたな」


中を確認すると、接触部分に小さなずれがあった。


「使えない?」


エイルが聞く。


「今は使える」


職人が答える。


「でも、このまま売るのはよくないな」


修正する箱へ入れる。


ノアはその箱を見ていた。


「面白い?」


エイルが聞く。


「うん」


「失敗なのに?」


「なんで暗くなったか分かったから」


エイルには少し変な答えに聞こえた。


けれどノアは本当に楽しそうだった。


---


学校への帰り道。


「ノア」


「何?」


「工房で働きたい?」


ノアはすぐには答えなかった。


「まだ分からない」


「そうなの?」


エイルは意外だった。


あれだけ楽しそうだったから、もう決めたと思っていた。


「魔道具は好きだけど、工房にも色々あるだろ」


「今日のところじゃ駄目?」


「駄目じゃない。でも一個しか見てない」


「そっか」


少し歩く。


「でも、もっとやってみたい」


ノアが言った。


「俺も」


「エイルは何でもそう言うだろ」


「そんなことないよ」


「商店も面白いって言ってた」


「面白かった」


「戦闘も好きだろ」


「うん」


「魔物も」


「うん」


ノアが笑った。


「やっぱり全部じゃん」


エイルも笑った。


その日の実習で同じ照明具を作った。


エイルは術式を形成するところが一番早かった。


ノアはそこではエイルより時間がかかった。


けれど、部品のわずかなずれに気づいたのはノアだった。


長く使ったらどうなるかを気にしたのもノアだった。


二人は同じものを作っていても、見ているところが違った。


エイルは自分で作った小さな照明具を手の中で転がした。


「これ、持って帰っていいのかな」


「説明聞いてなかったの?」


「聞いてたよ」


「学校に提出だよ」


「そうだっけ」


「やっぱり聞いてないじゃん」


二人は工房でもらった荷物を抱えて、学校へ戻った。


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