神龍の娘と進路の話
母の部屋から聞こえる笑い声は、伯母の美織、叔母の千織、そして母が高校、大学と仲の良かった羽織の3人だった。
母を含む4人は高校時代の友人で、中でも2人は父や母の兄弟の元に嫁いでいる、義理の姉妹だ。
わたしが麦茶を持って母の部屋に行くと、美織伯母さんが、戸を開けてくれた。
「姫花ちゃんも、ココに座って!」
美織伯母さんに言われ、母のベッドの近くに腰掛けた。
今日の母は、少し体調が良いのか、ベッドの上に上半身を起こし、座っていた。
「大丈夫?お母様。」
わたしは心配になったが、母は少しだけ顔色も良かったので、安心した。
母も
「いつも、ありがとう。」
と声をかけてくれた。
たぶん、巫女の力を持つ3人が来てくれたので、少し楽になったのだろう。
わたしも、強い巫女の力があったら良かったのに。
話の最中、千織叔母さんが、突然わたしに話をふってきた。
「姫ちゃんはどうなの?素敵な人は見つかった?」
そんな質問に、わたしは曖昧に答える。
わたしの歳の時、母は神様である父の花嫁として生きることを運命づけられていた。
さらに、美織伯母さんや千織叔母さんも、色付きの龍を使役する伯父たちとの婚姻が、ほぼ決まっていたと言う。
術者の世界では、当たり前のことになる。
しかし、わたしと同じ、特定の人の巫女ではない羽織さんは、仕事を始めてから出会った人と結婚した。
わたしも、今のところ、特定の人と、どうこうはないし、まして巫女の力もほとんどないので、結婚は先の先だと思う。
とりあえずは、大学へ行き、就職してから考えよう、と言った感じかな。
そんなわたしでも、父や母は決して批判したり反対することなく、自分で選ぶほうがすごいことだ、と褒めてくれる。
わたしの両親は、見た目だけでなく、考え方も若いので、すごく自然でいられた。
ただ、母が父の花嫁と決まっていても、術者の健康を食事の面から支えたい、と管理栄養士になったように、わたしも何か資格が取れる仕事に就きたい、とは思っている。
ただ、その時に
「姫花のお嫁さん姿、見たいなー。」
と呟く、母の言葉は忘れられなかった。




