六 R12 マ術師とマ道士の会話
うす暗い部屋の中、ローブを着た似た格好の男が二人、いすに腰かけて話しこんでいる。
黒っぽいローブの男が、茶色のローブの男に何かを手わたした。
「…これは?」
「これは、一見ただのネックレスに見えるが、知られざる一族の宝で、強いマ力があるものだ。
これをゆずるので、例のものをわたしてほしい。」
それを聞くと、茶色のローブの男は苦い顔をした。
「あれは…
マ道士を祖とする私の家系に代々受けつがれているものではありますが…
おおっぴらに表に出して研究していないのは、それ相応な理由があるのです。
あれは宝物の類ではありません。のろわれた物なのです。
祖先は手に入れてから安全にほうむり去る方法をずっと探してきたのですが、今になっても有効な手段はまだ見つかっておりません。
そんなものを持ち出して、おわたしするとなると…」
「金が足りない感じかな」黒のローブの男は、ふところに手をやると、そこから金色にきらめくものを取り出して見せた。
「これも加えて渡そう。
金属の部分も価値が高いが、今の職人にはむつかしい細工がほどこされた代物だ。一財産になるぞ」
「さすがは大貴族の家系の方です。
…うちのような貧乏なマ道士の家系とは比べものにならないくらい研究資金も使えることなんでしょうな。
大変うらやましいことです。
しかし、ご希望のものは、対価が足りないという問題ではなく、安全性の問題で持ち出さないようにしているのです。」
「…このネックレスには、きわめて強いマ力があると話したと思うが、強力な術式を行うことの助けとなるはずだ。
そちらは、確かマ神を呼び出す研究をされていたな。
このネックレスを用いれば、むずかしい術式でも成功する確率は高くなるぞ。」
茶のローブの男は、ぴくりとほおを引きつらせた。「そ…うですか…これが」
黒のローブの男は笑みをうかべた。
「なに、例のものは、少しの間だけお借りするだけだ。
マ術師の私から見ると、マ術的な品は、全てが研究対象だ。
のろわれた物もその一部なので、一度見ておきたいだけなのだ。
用が終わると、すぐにお返しする。」
「わかりました、必ずお返しください。できたら早めに返してください。」
茶のローブの男はそう言いながら立ち上がると、くたびれた布に包まれた小さな丸いものを持ってきた。
「こちらになります」
黒のローブの男が素早く布の包みをほどくと、
片手におさまる大きさのガイコツがあらわれた。
「これか!」
「そのガイコツの目をのぞき込んだらいけません。
自分の意思が消えてしまいます。
場に居合わせた者に命令されると、
どんな無茶な命令でも聞いてしまうのです。
それを調べる時、うっかり見てしまうと、大変なことになりますのでお気をつけください。」
「その状態を解く方法は?」
「ありません。
…時間が経てば元にもどる場合もありますが、必ずそうなるわけではないのです。
…申し出は、お受けいたします。
そちらをしばらくお貸しします。
危険なものなので、必ず早めにお返しください。」
黒いローブの男は口の中で小さくつぶやいた。
「フフ…こんな便利な代物、もう返すはずがないだろう…」
…サタヴァは、ぼんやりと目を開いた。また夢を見ていたようだ。
夢に出てきたネックレス、なぜかよく見ておくべきだったという気がしていた。
だがその考えは、彼が再度眠りにつくと、程なく消え去り、意識にのぼってくることはなかったのだった。




