五 R9 じいちゃん
サタヴァは森の中で寝ている。昔の夢を見ているのだ。
…「じいちゃん!」
そう呼んでいるのは子供の姿の自分だった。
「これこれ、わしのことは、先生とよびなさい。カプ先生。じいちゃんとよぶのはちがうぞ」
そういいながらも、カプ先生はえがおだ。
「だってカプ先生は、ぼくのじいちゃんになんとなくにてるんだもん」
「そうか…」
カプ先生はそう言うと、もうぼくがじいちゃんとよぶことを直そうとしなかった。
ぼくには家族はいない。
じいちゃんがぼくを拾うまで、しばらく一人だった。
でも、さいしょから、家族がだれもいなかったわけじゃない。
カプ先生によくにたじいちゃん…本当のぼくのおじいさまもいた。
でもそれらをしっかり思い出そうとすると、もうれつにはき気がするんだ。
「むりはせぬようにな、サタヴァ」そんなぼくを見て、カプ先生は、やさしくいってくれる。
ところでカプ先生はぶじゅつかだ。
ぶじゅつかっていうのは、たたかうじゅつを身につけている人のことだ。
カプ先生のところには、弟子たちが通って来ていた。
でも場所がふべんなところにあるせいか、しばらく通うと、来なくなったりするんだ。
教室が始まる時間になっても、だれもいなかったりする。
そんなときカプ先生は、「ワヤ、タダ、メノイ…みんな元気でおるのかの」と、外を見ながらつぶやいてる。
それらはみな、弟子たちの名前なんだ。
もしかしたらもう来ることがないかもしれぬ弟子たちの名をよびながら、
カプ先生は外をながめてじっとまっている。
「…今日は、弟子がだれもこない」カプ先生がため息をつく。
そのたび、ぼくは「じいちゃんにはぼくがいるでしょ、ぼくも弟子だよ?」と答える。
カプ先生はさびしそうだ。元気になってほしい。
カプ先生には、ぼくがついてるんだ…
…サタヴァが薄く目を開けてみると、先程と同じく、他の二人は寝込んでいる。
今夜の自分は、眠りが浅いようだな。
サタヴァは横たわったまま夢の内容に思いを馳せるのだった。




