十 R15④
サタヴァはギズモンドの話を聞きながら微妙な気持ちになった。
そもそも、彼は帝国の貴族に列せられなくとも、今は無きアグドラ王国では王子であった身の上だ。
王子は一人だけだったので、そのままゆけば王となるはずだった。
辺境伯は、かなり位が下がることになる。
他国である帝国の兵士として一時的に奉仕するのは良くても、
元の身分より、位の低い貴族の地位を得るのは、納得がいかない。
サタヴァが口を開く前に不思議な猫ルクが話しだした。
ルクは話すのだが、サタヴァしか内容は理解しないのだ。
「サタヴァ、元の身分より低い貴族とされるのが気に入らないといった顔だな。
だが、王族や貴族が、他に身分の低い爵位を持つことはさほど珍しくないことだぞ」
「そうなのか?」
サタヴァは幼い頃に家族や故郷を失ったため、まだ王族としての教育はさほど受けておらず、知らないことも多い。
「それに、ここはサタヴァの故郷であるアグドラの土地ではない。
だから、アグドラ王国が帝国の傘下に入ったとされることも無いだろう。
全く無関係の土地を貰い、その地を治める貴族とされた、ということだな。
普通の人間は暮らすどころか、行き来するのも大変なところだが。
…ま、話を受けるかどうかはお前次第だ。」
「そうか…」
サタヴァはルクとの会話が目の前の二人にどう思われたかと思ったが、
ギズモンドとレベラは会話があったことにも気づいておらず、ただサタヴァの返答を待っている様子だった。
サタヴァは少し迷ったが、話を受けることを伝えたのだった。




