十一 R15④
ギズモンドとレベラの訪れから一季節ほど過ぎた頃。
外にいたサタヴァは、数名の人物が、彼の城へと歩いて向かってくるのを見た。
サタヴァは目をこすった。
こんな場所に人が訪れるなど…
馬車などの乗り物もなく、徒歩でやってくるなど、幻ではないか。
だが、彼らは、いつの間にやら、サタヴァの目の前まで来てしまった。
彼らは、帽子にマントといった、まるで帝都にでもいるかのような格好をしていた。
「こんにちは」先頭の者が帽子を脱ぎながら挨拶をした。「辺境伯様の城はこちらですね。」
サタヴァは驚きのあまり立ちすくんでいたが、爵位を受けたことを思い出し「あ、ああ」と答えた。
「まずは爵位及び広大な領地を授かられた件に祝辞を述べさせていただきます。
ただこのことにより、本年度から帝国への税金の支払が必要となります。
そのため、私共は本庁から実態の調査及び納税の指導にまいりました。」
「の、納税…?」サタヴァはポカンと口を開けてしまった。
「さようでございます」彼は頷いた。
「私共は帝国税庁の者でございます。
本件は私共の方で担当させて頂きます。」
「納税と言われても、何のことやら皆目わからぬ。
そもそも、税を納められるような収益は、ひとつもあげておらぬ。」
サタヴァがそう答えると、彼等は一様に笑みを浮かべた。
楽しげな笑顔ではなく、何かしら背筋が寒くなるような笑みだ。
「税は必ず納めて頂かないと困ります。
辺境伯ともなればそれ相応の地位ですので、無税というわけにはまいりますまい。
加えて、こんなに広大な領地を元手も無く、いきなりただで手に入れたわけです。
儲けがない、などは言い訳になりませぬ。
これで無税なら、私ども全員クビになりますな。」
「何だと!お前達は、遥か遠方のこんな地まで、税を徴収するために赴いたと言うのか。
だいたい、こんな場所までどうやって徒歩でやって来たんだ。」
「なあに、毎年、どこの土地に何があり、誰の所有物となったか、必ず調べるのです。
現地調査が必須なのですよ。
歩いて隅々まで調べます、我々はね。
大雪に覆われた道であろうが、灼熱の土地であろうが、関係ございません。
それこそ、どんな場所であろうが、税の発生する場所であれば、見に行くんですよ。」彼等は笑顔を崩さぬままそう語るのであった。




