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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第23話 出発の朝

「同行なさるのはお二人ですか?」

「そうですね」

「わかりました。では後ろにお乗りください。町長たちとは町の門のところで合流予定です」


 出発の朝、エルノーとソルフェンは迎えに来た馬車に乗って町はずれへと向かった。馬車は幌付きのもので、二人で乗るには十分な広さがあった。てっきり兵たちと相乗りになるものと思っていたが、配慮してくれたらしい。

 旅慣れたソルフェンは非常に軽装だ。動きやすいシャツとズボンに革製のベストと手袋、そして編み上げブーツ。腰のベルトにはショートソードを差し、ポーチにはマッチや紐、油布、折り畳みナイフなどが必要最低限入っている。ベルトにはヨルンが選んだ青空色のどんぐりランプも括りつけられていた。

 一方エルノーは少々大荷物だ。着替えや魔導ランプ、小さな結界を発生させる魔道具などでバックパックがいっぱいになってしまった。魔法薬も念には念を入れて各種持ってきている。もともと心配性なエルノーは、エリアがいないとなおのこと荷物が増えてしまう。更に今回は魔法師として振舞わなくてはならないため、おばあちゃん作の少々厚手のローブを羽織り、中の服もあまり動きやすいとはいえない上品なものだ。


 馬車に揺られ、エルノーたちの家とは反対方向にある町の門まで向かう。途中町兵の詰所の前を通ると、早朝にもかかわらず慌ただしく兵たちが動き回っていた。馬に馬具をつけたり、荷台に木箱を運び込んでいるようだ。


「この人たち、みんな行くのかな。結構大人数だね」

「一気にカタをつけようということだろうな」

「町の守りは大丈夫かな。ちょっと心配だ」


 町兵の多くがいなくなり、魔法師も不在となると何かあった時が不安である。海の男たちは腕っぷしが強いものが多く、診療所のオルネシアにもありったけの魔法薬を渡して出来る限りのことはしたつもりだが、なるべく早く帰りたいところであった。


「心配するのは自分のことだけにした方がいいな君は。そんなにあれこれ気にしていたらそのうち潰れてしまうよ」


 ソルフェンは冗談だったのだろうが、既に一度潰れたことのある身であるエルノーは苦いものを飲み込むように笑った。


 *


「エルノーたち、そろそろ出発したかな?」

「ケテの町で一晩過ごすのならそろそろ出発しないと間に合わないだろうからね。さすがに出たんじゃないかな?」


 エリアは行商人ロータスの魔導車の荷台から外を見た。出発した時はまだ薄暗かったが、すっかり日が昇っている。ヨルンは朝が早かったためか、毛布にくるまってすっかり夢の中だ。昨夜興奮して遅くまで起きていたせいもあるだろう。今日は一日中移動になるため、静かに寝ていてくれるのは構わない。

 

 エリアたちはエルノーたちが出発するよりも早く町を出ていた。ヨルンを遺跡まで連れていくためにロータスに協力を求めたのだ。

 ロータスは普段は王領の町々を渡り歩き商売をしているため、他領に行くことは滅多にないらしいのだが、相談をしてみたところ案外あっさりと乗ってくれた。「面白そうだし魔法師様に恩を売るのも悪くない」とのことで、実に商人らしい彼に頼ることにしたのだった。

 普通にカーガント領に入るだけならばエリアだけでも問題はなかっただろうが、今回は遺跡まで近づかなくてはならない。そこでロータスの出番である。『商人の情報網で領主が魔法素材を集めているという噂を聞いたため売り込みに来た』という設定で近づこうというのだ。そのため、荷台にはエリアたちが提供した当たり障りのない魔法素材をいくつか積んである。

 近くまで行ってしまえばあとは合流するまでロータスの口八丁かエリアの魔法でどうにかするつもりだ。要は無策なのだが、エリアはどうにかなるだろうとふんでいる。


「それにしてもこの車、あんまり揺れないね。高いやつ?」


 商人らしさを出すため、魔導車もロータスのものである。エリアたちが普段乗っているものと比べて明らかに揺れが少ない。今走っている街道は比較的整備されているとはいえ、普通もっとガタガタと揺れるものだ。おかげでヨルンもぐっすり眠っている。


「揺れるとダメになる商品もあるからね。良いものを買ったのさ。おかげで僕の財布は火の車ってわけだ!」


 そう言いながらもロータスは快活に笑った。商魂たくましい彼のことだ、きっと回収できる見込みがあって買ったのだろう。


「揺れを魔法で制御してるらしくてね。残念ながら魔石の消費が激しいんだが、今回はお嬢ちゃんに提供してもらっているから気兼ねなく飛ばせるよ!」

「安全運転でよろしくね。あとお嬢ちゃんはダメだってば」

「ああ、失礼。エリア」

「間違えないでね、ロータスおじさん!」


 潜入するにあたってエリアとヨルンはロータスの姉の子という設定にした。ロータスの子どもというにはいささかエリアの歳が近いのと、ヨルンがどうしても『お父さん』と呼んでくれなかったためだ。『おじちゃん』と呼ばせることには成功したため、姪と甥ということにした。

 そのため、エリアは今日はローブを着ていない。杖は荷物にどうにか忍ばせて持ってきているが、魔法師とばれるのは避けたいところだ。


「さあて、まだまだ旅路は長い。エリアも少し寝たらどうだ? あとで少し運転を代わってもらいたいからね」

「え? いいの? 高性能の魔導車楽しみだなー! 分解していい?」

「それはダメだ」


 和やかに冗談を飛ばしながら、エリアも毛布にくるまって横になった。

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