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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第22話 遠征の準備

「さて、事情を説明してもらおうかな」

「うん……」


 突然巻き込まれて訳がわからないという顔をしているソルフェンに、魔法師協会のことはぼかして話をする。


「はあ、なるほど。君たちは行きたくないわけだな」

「まあねー。あたしたちはほどほどにお仕事しながらのんびり暮らしたいだけなの。この町に暮らしてる以上町のために必要なことはやるつもりではいるけど、他領のことなんて関わりたくないよ」

「でもどっちにしろ断るのは無理だったと思うよ。貴族様のご依頼だからね……」


 町長は平民との関りも多く気さくな方ではあるのだが、貴族は貴族。表立って逆らえばこちらの立場が危うい。いざとなれば家を捨てて逃げ出すこともできるが、あくまで最終手段だ。

 

「でもなんでそんなに町長ははりきってるのかな。そんなに良いことがありそうなのかな」

「おそらくその遺跡というのが魔の森にあるからだろうな」

「え? そうなの? 魔の森ってうちの裏にある魔の森?」

「そう。もともとは深獣の森と呼ばれていたのだけどね。この森がとても大きいことは知っているか? 王領とカーガント領の境目はこの森の中にある。というか、はっきりしていない」


 いつの間にかソルフェンは遺跡の場所を特定していたらしい。魔の森を突っ切り反対側の端に近い場所にあるという噂を聞きつけていたようだ。直線距離はそれほどでもないが、森をぐるりと回り込み馬車で向かうと1日半ほどはかかるだろう。


「どちらの領地とも言い難い場所で妙な動きをされるのが嫌なのだろうな。以前他の国の遺跡であったことなんだが、罠を作動させてしまった結果、あたり一帯に被害が出たことがある。森で何かあるとうちの町まで巻き込まれる可能性があるからね」


 それにもう一つ、とソルフェンは人差し指を立てて言った。


「町長はこの町を観光地化したいらしい。何年も前からあれこれ画策しているようなんだが、森に魔物が出るようになったこともあってあまりうまくいっていないみたいでね。手柄を立てて安全性をアピールし、王都から人を呼びたいようだよ。王家所有の船の停泊地にもしたいようだ」


 町の発展のためではあるものの、巻き込まれる側としてはたまったものではない。二人は思わずため息を吐いた。


「出発は二日後かぁ。急いで準備をしないと間に合わないな」


 エルノーは手持ちの魔法薬の在庫を思い浮かべた。傷薬など需要の高いものは十分にそろえてあるが、自分たちで使うような効果の強いものはそう頻繁には使用しないため、最低限しか作っていない。戦闘になる可能性を考えてある程度は持って行った方がいいだろう。


「町兵は連れていくんだろうけど、相手の魔法師が攻撃してきたらどうするんだろうねー町長。あたしたちだけでどうにかできると思ってるってことだよね」

「町長を攻撃するってことは王領、ひいては王家を敵に回すってことだから、そこまではしてこないとふんでいるのかもしれないけど……」

「しんぱーい」


 考えれば考えるほど不安しかない遠征である。町長はおそらく魔法師の戦いというものを見たことが無いのだろう。大きな魔法を使うには長い詠唱が必要であり、周りを固める兵が揃わないうちに先手を取って乗り込めば制圧できると思っているに違いない。間違いではないが、そう上手くいくとは限らない。相手の人数さえ不透明なのだ。


「まぁそれに関しては僕も頑張って君たちを守るようにするよ。詠唱を妨害するような戦い方には多少心得があるからね。エリアも一緒に行くということでいいのかな?」

「うん。エルノーひとりに戦わせるわけにはいかないから」


 共鳴魔法は一人では使えない。今回は大人数での移動になるため使うのは難しいかもしれないが、それでもやはり、そばにはいるべきだ。

 

「そうか。ならヨルンは一旦実家に預けよう」

「おれもいっしょにいくよ!」


 それまで静かにしていたヨルンは急にはじかれたように立ち上がった。


「ぜったいいく! ソルにいといっしょにいく!」

「ヨルン……。遊びに行くわけじゃないんだぞ。危ないことがあるかもしれない。父様と母様のところで待っていてくれないか」

「やだ! おれもいく! いせきにいくの!」


 普段かなり聞き分けが良く癇癪などめったに起こさないヨルンが、今にも泣きだしそうに必死にソルフェンに縋り付く。


「遺跡に行きたいの? なにかあるの?」

「うん。あるの。おれもいくの……」

「何があるんだ?」

「わかんない……」


 ヨルンはすでに半べそで、ソルフェンの服に顔を埋めてぐすぐすと鼻をすすっている。その必死な様子にソルフェンと双子は顔を見合わせた。


「どうしよっか」

「本当に何かあるのかも。連れて行ってあげたいのはやまやまだけど」

「町長が幼児の同行を許してくれるだろうか」


 どう考えても邪魔になるため、許可が下りるとは思えない。しばらく三人で頭を捻っていたが、エリアが「じゃあこういうのはどう?」と思いついた案を披露した。


「それでうまくいけばいいけど」

「とりあえず相談だけでもしてみようよ」

「僕は結構ありだと思うよ。早速交渉に行ってこよう。エルノーは準備を進めていてくれるか?」

 

 そうして四人は出発に向けて準備を始めたのだった。

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