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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第21話 厄介な依頼

 そろそろ店を閉めようかという夕方、レプティス魔法店の前には珍しく魔導車が停まっていた。町長が訪れているのだ。

 

「何の用だと思う?」

「きっとろくなことじゃないだろうな」


 エルノーとエリアはミニキッチンでお茶を淹れながらこそこそと話し合った。レストの町長であるレクトール・ファステイルは王都出身のエリートであり、曲がりなりにも貴族籍を持つ男だ。この町の牧歌的な雰囲気とは明らかに違う都会の空気をまとっていて、二人は正直苦手だった。

 追い返すわけにもいかず、しぶしぶお茶を持って応接室へ向かう。ソファーには金ボタンが華やかなスーツを着た中年男性が品よく腰を下ろしていた。その後ろにはよく見知った顔の役人が制服姿で立っていた。相変わらずウォルトはお供として連れまわされているようだ。気づかわしげな視線をちらちらと二人に送ってきているあたり、厄介な話なのは確実だった。


「お待たせいたしました。本日はどのようなご用件で?」

「うむ、まずは先日の礼を言おう。密輸船の摘発に協力してくれただろう。おかげでカーガント領へ行く足がかりができた」


 その件に関しては依頼人から既に報酬を貰っている。わざわざ町長が出てくるようなことではない。無言で先を促すと町長は少し前かがみになり、声を潜めた。

 

「カーガントが妙な動きをしているのは知っているかね? 遺跡の調査のために魔法師を集めているそうなのだが、どうも何かを企んでいるようなのだよ。中央から査察に行ったりなどもしたようだが、巧妙に隠されてしまっているようでね。だが今回ようやく尻尾を出したというわけだ」


「その噂と私たちにどういう関係が? まさか報奨のためにわざわざ来たわけではないのでしょう?」

「そう急かすものではないよ。――まあそろそろ本題に入ろうか」


 町長はお茶を一口飲むともったいぶって口を開いた。

 

「君たち、私と一緒にカーガント領まで来てくれたまえ」

 

 やはり、ろくでもない依頼であった。

 

「それは……お断りさせていただきたいのですが」

「待ちたまえよ。君たちにとってもそう悪くはない話だ。今回の件が上手くいったら君たちを魔法師協会に推薦しようじゃないか!」


 町長はいかにも素晴らしい報酬を用意したというように誇らしげな顔をして言い放った。

 協会に所属すれば身分が保証され、扱える素材が増える。協会が所有する資料も閲覧可能になり、入れる場所が増える。多少の義務労働はあるがそれを差し引いてもかなり利があるため、駆け出しの魔法師なら誰もが憧れる。普通ならば。

 だがエルノーとエリアは既に協会を抜けた身である。今更戻れるわけがない。むしろ居場所がバレるとまずいことになるのだ。

 どう断ったものかとつい無言になっていると、町長は怪訝な顔をした。


「あまり嬉しくなさそうだな。何か問題があるのかね?」

「ああいえ、私たちとは無縁な話だと思っていたものですから、驚いてしまって」


 エルノーは慌てて否定した。ワケアリだと知られるのもそれはそれでまずい。どちらに転んでも非常に不利な話である。


「協会のこともそうですが、カーガント領までお供するというのも私たちには力不足だと思います。王都のベテラン魔法師をお連れした方がよろしいのではないでしょうか。長く町を空けるのも心配ですし」

 

 どうにかして諦めてもらえないかと粘ってみるが、町長にも思惑があるようだった。


「いや、それではうちの町の手柄にできない。せっかく君たちが迅速に禁制品を特定してくれたのだ。情報がカーガント領の連中や中央に渡る前に解決することが町の利益につながるのだよ。町に魔法師がいなくなることを心配しているようだが、一年も不在のまま何とかなっていたのだ。二週間やそこら空けても問題あるまいよ。謙遜しているようだが、私は君たちをかなりの実力者とみている。此度の遠征も問題なく遂行できると信じているよ。それにもう一人雇おうと思っている者がいてね――」


 そう言いかけたところで、外から魔導車の音が聞こえた。市場に行っていたソルフェンたちが帰ってきたようだった。


「ちょうどいいところに。ソルフェンくんだろう? 君は探究者(シーカー)だと聞いているよ。カーガント領の遺跡調査に一緒に来てくれないかね? 魔法師様たちも来てくれることになっているのだよ」


 目ざとくソルフェンを見つけた町長は窓から身を乗り出して声をかけた。勝手にエルノーたちも一緒に行くことにされている。

 突然のことに目を瞬かせたソルフェンだったが、後ろでぶんぶんと首を振るエルノーとエリアの様子を見て無茶なことを吹っ掛けられているということは察してくれたようだった。


「遺跡の調査ですか? それはこちらとしても興味がありますが、魔法師様を連れていく必要はないのでは。お二人は古代遺跡に精通しているわけではありませんから、かえって身動きがとりづらくなるかと。護衛でしたら私一人で十分ですよ」

「いや、そういうわけにはいかないのだよ。うちの町の魔法師様が優秀だということをアピールする意味もあるのでね。せめてどちらか一人だけでも連れていく必要があるのだ」


 町長は後ろを振り返ると一方的に告げた。


「そういうわけだ。エリアさんは留守番でも構わんよ。出発は二日後の早朝だ。迎えの馬車をよこすから準備をしておいてくれたまえ。ソルフェンくん、急ですまないが詳しい話はエルノーくんから聞いてくれたまえよ。では私も準備があるのでこれで失礼するよ」

 

 そう言うと町長は有無を言わさず嵐のように去っていった。

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