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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第10話 依頼の品を納品しよう

「わかりました。できる限りということにはなりますが協力しましょう」

「ありがとう。ふふ、まだ報酬の話をしていないんだけどな。聞いていた通り人がいいね」

「あなたはお金を出し渋るタイプの人ではないと思うので」

 

 ソルフェンは気が抜けたように笑顔を見せた。

 協議の結果、資料を確認したり対処法を考えるのに使った時間を申告し、その分の時給を貰うことになった。金額は一般的な町の魔法師を動かせる額に、やや上乗せした程度に決まった。それも二人分だ。現場で魔法を使う訳では無いにも関わらずそれだけ出すというのはなかなか太っ腹である。知識の価値を知っている探究者(シーカー)だからこそだろう。更に解決することが出来れば成果報酬まで出すという話であった。


「これが資料だよ。写し(コピー)だから好きにして構わない」

「これは……なかなかの分量ですね」


 渡された紙束には図や字がびっしりと書き込まれていた。ぱらぱらとめくると古代魔導文字らしきものも見えた。解読するだけでもそれなりに時間がかかりそうだ。


「お預かりします。何か分かったらお知らせしますね」

「うん、よろしく頼むよ。僕らはしばらく実家にいる予定だから、呼び出してもらえたらすぐに行くよ。父に言付けてくれても構わない」

 

 話が一段落したところで、エルノーは本来の依頼であった魔法薬を並べた。小瓶に白っぽいピンク色の液体が入っている。パールのようなつやもあり、傾けるとわずかに虹色のきらめきが見えた。


「ひとまずこちらをお渡ししておきますね。魔力補充薬です。体の負担を考えてかなり効果は弱くしてあります」

「これが……。綺麗だけど飲むにはちょっと勇気がいる見た目だな。ヨルンがちゃんと飲んでくれるかどうか」


 ソルフェンは小瓶を持ち上げてまじまじと見つめた。魔法薬全般に言えることだが、大抵きらめいていて食物の見た目をしていない。茶色や緑色でいかにも苦そうな自然薬とはまた違った意味で、口にするのに抵抗があると言えるだろう。


「飲みやすさと保存性を高めるために希釈用のシロップにしてあります。飲ませる時には同量の液体で割ってください。何を混ぜても大丈夫ですが、おすすめはミルクですね。見た目もにおいもそんなに気にならなくなると思います。シロップ自体が結構甘いですが、さらにハチミツを少し足すと薬っぽさが無くなります。温めるとちょっと臭みが出てしまうので冷やすほうがおすすめですね」


 困って薬屋のアルマに相談した結果完成したのが、この『小児用魔力補充シロップ』である。この町の人々は幼い頃から砂糖やハチミツがたっぷり入った菓子を頻繁に食べているため、薬も甘さとハチミツの香りでごまかしておやつ感覚で飲ませるのが最も手っ取り早いという話だった。ミルクをすすめてくれたのもアルマだ。アルマに魔力の薬を飲ませるわけにはいかないため試飲はエルノーひとりでやったのだが、油分のおかげか水で割った時よりも口当たりがよく、より『おやつ感』を感じるのがミルクだった。余裕があればベリー系の果物をつぶして混ぜるとピンク色も気にならなくなるだろう、というアドバイスも買ってある。それからもう一つ。


「混ぜるところはヨルンくんには見せないようにしてください。薬だと言わなければそういう飲み物だと思って飲んでくれると思います」

「なるほど。気を付けよう」


 代金を告げると、ソルフェンは「思ったよりも安いな」と言いながらしっかりと即金で支払ってくれた。エルノーとしては妥当な値段だと思っているのだが、やはり魔法師にぼったくられた経験があるのかもしれなかった。


「飲ませた後一時間くらいは誰か大人がそばで様子を見るようにしてください。もし万が一異変があったら、夜中でも構いませんから俺たちを呼んでください」

「わかった。頼りにさせてもらうよ」


 ソルフェンが薬を鞄に仕舞うのを確認して、エリアとヨルンを呼びに行く。二人は布と綿で作られたボールを投げて遊んでいた。


「ヨルン、待たせたね。遊んでもらってたのか?」

「うん! エリアんちたのしい! あったかいし!」

「へえ、あったかいのか」


 確かにこの辺りは比較的魔素の多い土地である。主に井戸が原因であるのだが。

 あの井戸には魔導昇降機(エレベーター)を設置して、楽に下りられるように改造してある。時々様子を見に行くついでに、地底湖や鍾乳洞で採れる素材を回収しているのだ。亀裂が開いていた時と比べれば魔素の量は多少落ち着いたが、まだまだじゅうぶん濃い。


「さすが魔法師様の家だ。随分体調もいいみたいだな。――そうだ、ちょくちょくヨルンを遊びに連れてきてはダメかな? もちろんその分の代金も払うよ。なるべく仕事を邪魔しないように僕が見ておくから」


 エルノーとエリアが顔を見合わせると、ソルフェンは慌てて「庭に入れてくれるだけでもいいんだ」と言った。だが庭はむしろ井戸や毒草があるためウロウロしてほしくはない場所である。

 遊びに来ること自体はいい。現に町の子どもたちがたまに遊びに来ているのだ。ヨルンだけ拒否するつもりはない。だがあまり頻繁だと仕事に差し障りがある。家の中にも色々とあるため、目を離すわけにもいかない。


「雨の日にたまに町の子どもたちが来るから、その時に一緒に来てもらうのはいいけど……。お返事は今度でいい? 家の中魔法道具が色々あるから、お片付けする時間をちょうだい!」

「もちろんだ。こっちの都合だからね」


 一旦保留にして店へと向かう。今日の目的はもう一つある。どんぐりランプだ。

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