第53話 「そのあたりは祭さんにお任せいたします」
「そのあたりは祭さんにお任せいたします。なんとか伶佳お嬢様を止めてください」
それが一番難しいことを判った上で紗栄子は頼んでいる。
「西条のご当主様から縁を切って無一文で放逐するとでも仰っていただいてはどうでしょうか?」
それは確かにお嬢様育ちの伶佳には耐えられないことだろう。太田と結婚できたとして質素な生活に耐えられるかどうか。というか質素な生活を想像できるかどうか、というところだった。
「確かにそれは妙案かも知れませんね」
祭としても紗栄子の提案自体が半信半疑であるうえ伶佳の反応も想像が付いていない。
「それでしたら、今からお屋敷に戻られて直ぐにでもお願いします」
「それはいいのですが、紗栄子お嬢様」
「はい、なんでしょう」
「その、紗栄子様が確かに全てを揃えてくださいと言う保証はあるのでしょうか?」
祭としては伶佳を説得できたとしても西条家の悲願が為されなければ元も子もない。寧ろ伶佳と監物の両者に責められることになるだろう。迂闊に提案できる話ではなかった。
「証拠ですか。まず揃えてみせろ、とでも?」
「そうですね、そうしていただければ」
「こちらとしては非合法な手段を用いないといけないことを、先にやってみせろと?」
確かにそうだった。贄を全て揃えてみせたところでやっぱり伶佳は止められません、では堪ったものではないのだ。
「そ、それは」
「それに伶佳お嬢様には将来に渡って太田さんに近づかないようにしてもらわないといけませんし」
結婚はしないがちょっかいは出す、ということでもダメだということだ。
「先に結婚でもしていただいたらどうですか?」
そんなことを今からやっていてはとても間に合わない。紗栄子も解って言っている。
「それでもとても」
「間に合わないでしょうね。ではどうされます?」
「どうすると言われましても」
紗栄子からは口に出して言わない方法が一つだけあった。




