第49話 「どういうこと?」
「どういうこと?」
使い魔は自分の意見など言わない。ただ在った事、聞いたたことをそのまま報告するだけだ。
「まさか、嬬森家が裏切るとでも言うの?」
在り得なかった。同じ華族とはいえ嬬森侯爵家は西条公爵家に遠く及ばない。その傘下に居る間は庇護をうけられるが裏切ったとなれば西条家は徹底的に嬬森家を潰しにかかるだろう。
「これは慎重にしないと」
このまま監物や伶佳に報告することは出来ない。
それは西条家に対しての裏切りととらえられても仕方ないのかも知れないが正確な、確実に情報でなければ西条家閥の重鎮である嬬森家を簡単に離反させるわけには行かないのだ。
「これは早急に紗栄子さんとお会いしなければならないわね」
今なら嬬森家に行く口実はいくらでもある。
「伶佳お嬢様」
「どうしたの祭。まだ太田さんを連れて来れないの?」
伶佳はさっきほどではなかったが、まだ怒りが収まっていない。
「明日、嬬森家に行ってまいります」
「明日?今から行ってきなさい」
「今からでは向こうに付くのが夕方になってしまいます。太田さんもすでに嬬森家を辞しておられるでしょう」
「確かにそうね。でも明日太田さんが嬬森に行く保証はないでしょ」
「そうでございますね。でも紗栄子様とはお話しできると思います」
「確かにあの小娘は屋敷に引きこもっているでしょうから居るでしょうね。まったく太田さんはなぜあんな見すぼらしい娘がいいのかしら」
伶佳は伶佳なりに太田が紗栄子を好いている事は感じてはいるのだ。それが余計に腹立たしい。
「神戸家に直接お伺いする訳にはやはり行きませんので」
「どうしてよ」
「敵、申し訳ありませんが、敵の本拠に乗り込むことになりかねませんから」
「敵って太田さんは敵じゃないわ」
「太田さんはそうかも知れませんが神戸家はどちらかと言えば敵で間違いございません。それも因縁の相手、ということです」
「古い昔の事なんでどうでもいいじゃない。神戸家なんてもうどうでもいいわ。解読は成功したんでしょ。だったら神戸家をどうこうするよりさっさとアレの封印をとけばいいじゃない」
伶佳としては西条家の悲願など既にどうでもよくなっていた。




