第48話 「旦那様」
「旦那様」
「どうした」
「伶佳お嬢様の件です」
祭の話を聞く前から西条監物は不機嫌極まりない顔を隠さなかった。何を言いに来たのか十二分に判っているからだ。
「判っておる。そんなことよりもあっちの件はどうなっているのだ」
監物は話題を逸らせた。伶佳と太田の件は耳に入れたくないのだ。ただ監物が何を言っても伶佳が言うことを聞かないことも判っている。だから祭には報告に来るのではなく解決して来て欲しいと思っているのだった。
「解読は完了しております。但しその他のことがまだそろってはおりません」
「内容は聞いているが、方波見に任せればいいだろうに」
「なかなか昔の様には行かないのでごさいます、旦那様」
少し前であれば西条家の力で生贄であろうが依り代であろうが割と簡単に用意ができただろう。しかし時代は移ってきている。そうそう行方不明の人間が大量に発生してはもみ消すのも至難のことになってきているのだ。
「また神崎に頼むしかないだろう」
神崎とは神崎少警視のことで監物とは同級生だった。42歳で少警視などということは通常あり得ない。それほど神崎が優秀だったのと西条監物という後ろ盾があったことが大きかった。
「いつもいつも神崎様にご迷惑をおかけになられると今後色々と動きにくくなられるのではありませんか?」
「仕方あるまい。頼み事はこれで最後であってもよい。すべて神崎に任せるのだ。方波見にもそう伝えておくといい」
「畏まりました」
そういうと祭は監物の書斎を辞した。本当は監物に伶佳のことを相談したかったのだが、聞きたくない気持ちも判る。
「さて、どうしましょうか」
伶佳の言う通り直接太田に会って話をするしかないとは思っていた。ただそれで太田の気持ちが変わるとも思えない。祭にも他人の色恋沙汰は理解できなかったのだ。
かと言っておかねでなんとかなる太田ではないことも判っている。さらに神戸家と西条家との関係もある。
「四面楚歌ってところね」
伶佳は喚いていれば気が晴れるかも知れないが、なんとか事を進めないといけない祭の負担は相当なものだった。
「えっ?」
祭が嬬森家に放っている使い魔からの報告が来た。




