第45話 太田は神戸家に仕えてもう長い。
太田は神戸家に仕えてもう長い。
元々は太田は神戸家に執事として仕える父とと同じく神戸家の女中だった母との間に産まれた。
自分が神戸家の使用人の息子であり道隆は主筋であることを理解したのは尋常小学校2年のことだった。
それから太田新平の使命は九歳上だが道隆を守ることになった。
太田が神戸家がかつての織田家の傍流の末裔であることを理解したのは高等小学校を卒業した時だった。
それからというもの、太田は日本における神戸家や他の家々の継ぐものを研究し始めた。神戸家が継いでいるものは旧支配者と呼ばれる存在の中でも特に強力で強大な力を有している存在だった。
ただし、その存在は封印されていて本来の力を無尽蔵に使うことが叶わない。神戸家の様に少し力を分け与えて眷属とし自らの封印を解かせるよう仕向けているのだ。
紗栄子が言う事は太田にも理解できた。西条家や神戸家の悲願が成就することは人にとっては不幸でしかない。
ただ神戸家の存在は、その人にとっては不幸でしかない存在を現実に顕現させるために作られた一族なのだ。
その神戸家に仕える太田たちも同様に、同じ目的に向かって邁進することが求められている。そして今までは太田もそれを正しいと信じて来たのだった。
神戸家が継ぐものと同じくらい力を有している存在の封印を解くことを悲願と指定西条家。
その中心的存在と言っても過言ではない嬬森家の一人娘が否定的な考えを持っていることは太田にとっては信じられなかった。衝撃的だったのだ。
「そっ、そんなことをすれば嬬森家は」
「判っております。今西条家に逆らえば嬬森には未来はないでしょう。私の命も含めて」
「それを判っておられるのに、私に手伝えと仰るのですか?」
「太田さんだからお願いしているのです。私が大好きな太田さんなら私の気持ちを理解していただけるのではないかと」
理解はできる。人間にとっては厄災とも言うべき存在を顕現させることは地上に地獄を現すことになっしまう。
「私はこれでも神戸家の人間です。西条家の悲願を阻止することは寧ろ積極的に関わりたい。ですが、やはり神戸家の悲願も同様に、という訳には行きません」
無名祭祀書の解読に成功した西条家と比べると神戸家は何歩も遅れている。まだ封印を解く方法が書かれた魔道書すら特定できていない段階だった。
この段階で西条家に先を越される訳には行かなかった。少なくとも同時期に封印は解かれなければ全く対抗できないのだ。
「お判りいただけませんか?」
「判りません」
「それが人類の、この世界の破滅を意味しているとしても?」




