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第35話 西条家の華族としての派閥。

 西条家の華族としての派閥。


 それは西条家が公爵家筆頭として繁栄を極めるに伴って最大の派閥となって行った。


 華族の半数とまではいわないが二番目に大きい派閥の倍近くの華族をその支配下に置いていたのだ。


 日本は島国であり、森林も多く農業も盛んだったが、その国土の周辺は全て海である。


 西条家を筆頭に、その派閥の華族たちは漁業や海運業で財を成した名家が多かった。


 その何でも西条家の繁栄は異常だった。西条家派閥の西条家を除くすべての華族の資産を西条家だけで凌駕していたのだ。


 西条家が遠洋漁業の船たちは、船が沈むのではないかというくらい大漁で戻って来る。それは毎度のことだった。


 漁場がいいのか、何か特別な漁の方法を行っているのか、西条家の船以外の者たちには、その情報は開示されていなかった。


 情報を開示しようとすると必ずその前に不審死を迎えるのた。西条家の手の者の仕業であることは間違いないのだが、だれもそれを指摘もしないし咎めもしなかった。


 西条家の報復が恐ろしかったからだ。


 明治末期。西条家の隆盛は「天皇家に次ぐ」とすら噂されていたのだった。


 西条公爵家派閥の上位に嬬森侯爵家は位置し方波見伯爵家と千鳥伯爵家はその中位に位置していた。いずれにしても西条家に逆らえる家柄ではない。


「れいなさん、紗栄子はどこに行ったの?」


 西条伶佳に問われてれいなは直ぐには応えられなかった。どう返事をしようか、纏まらなかったのだ。


「これは西条家の伶佳お嬢様。本日はお招きにお応えいただきありがとうございます。父も喜んでおります」


 西条家の当主監物の名代として伶佳は来ている。監物は自分が主催のパーティーでないと出席しないからだった。


「そんなことはいいわ。紗栄子はどこなの?」


「紗栄子、と仰いますと嬬森紗栄子様ですか?」


「あたり前じゃないの。他に紗栄子なんて名前の知り合いがいるの?」


「いえ、嬬森のお嬢様以外に紗栄子様という取り合いは居りません」


「でしょうね。だから、そんな話はどうでもいいのよ。さっさと紗栄子を連れてきなさい」


 本日の主役であるはずの方波見れいなも伶佳は全く気にしていなかった。当然その伴侶となる筈の千鳥凱史も眼中にない。


「嬬森のお嬢様でしたら、御気分が優れないとのことでお帰りになりましたよ」


 今の紗栄子に伶佳を合わせてはいけない、そう確信したれいなは、嘘を吐くのだった。

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