第34話「それは私にはなんとも」
「それは私にはなんとも」
「何?あなたと比べて私には会う価値が無いとおっしゃるのかしら?」
紗栄子は驚く。
「いえ、そんなことは一言も言ってません」
「言ったじゃない。ウチに行く理由が無いって」
「いえ、西条家に行かれない理由が判らないといういみで言っただけです」
「だからウチに行く意味がない、ってことなんでしょ?」
伶佳の言い分は無茶苦茶だった。ただ太田が来ないことへの苛立ちは紗栄子にも痛いほど感じられた。同じ男を好いていることに違いは無かったからだ。
「そんな意味ではありません。申し訳ありません伶佳お嬢様、少し席を外しても?」
「どうしたの?私とは話をしたくないって事?」
「いえ、少し体調が優れないので」
「私と話したくないのではない、というのであれば直ぐに戻ってきなさい。ここで待っていますから」
「少し休んでまいりますので、どうぞ伶佳お嬢様はご歓談くださいませ」
紗栄子は息も絶え絶えにそれだけ言うと方波見れいなに頼んで休む部屋を用意してもらった。
「紗栄子、大丈夫?医者を呼びましょうか?」
れいなが見ると紗栄子の顔色は青ざめていた。れいなが支えないとまともに歩くことも出来ない。
「少し休めば多分大丈夫」
「伶佳さんね。私が言ってこようか?」
「だめよ、私のことで方波見家にご迷惑はかけられないわ。本当に少し休めば大丈夫だから」
れいなには紗栄子が言うように少し休めばなんとかなるようには思えなかった。
主役があまり座を離れる訳にも行かないのでれいなは会場に戻った。伶佳のことを探してみると取り巻きに捕まって身動きできない様子だった。
「あれなら紗栄子さんが戻っても大丈夫かも知れないわね」
「紗栄子さん、大丈夫だった?」
れいなの婚約者である千鳥家の当主千鳥凱史伯爵が戻ったれいなに聞いてきた。
千鳥家は方波見家と同じ伯爵の爵位を持っている、方波見家よりも古い家系だった。ただ西条家との付き合いは方波見家の方が少し古い。




