第27話「祭、祭は居なくて?」
「祭、祭は居なくて?」
伶佳は屋敷に戻ると直ぐに祭を探した。元々付いて行くと言う祭を強引に置いて嬬森家に向かったのだが、そんなことはもう忘れている。
「いかがなさいましたか、お嬢様」
伶佳の大声を聞きつけて祭が慌ててやって来た。
「いかがも何も無いわ。紗栄子を何とかしなさい」
「何とか、といいますと」
「何とかは何とかよ」
「そう仰られましても具体的にいっていただけないと祭は何をすればいいのか判りません」
祭は『またか』という顔をしたが、今回は少し違うようにも感じた。いつもより声のトーンが少し高い。いつもより怒っているようにも聞こえるのだ。
「使えないわね。とりあえず紗栄子をここにお呼びなさい。話はそれからにするわ」
「お呼びになられるのは構いませんが、それでどうなさるおつもりですか?」
「どうもこうもないわ。ただ太田さんに会わせないようにするだけよ」
「それは無理ではありませんか?太田さん、ご本人の意思もあるでしょうから」
「太田さんも紗栄子より私の方がいいに決まっているわ」
「太田さんがそう仰られたのですか?」
「そうじゃないけど。でも誰が見ても私の方が上じゃないの。太田さんも同じに決まっている」
それは西条公爵家と嬬森侯爵家の格の違いが大きい。誰も西条家には逆らえないのだ。
「いいから紗栄子を呼んでくればいいのよ。太田さんの耳には入らない様に注意してね」
そういうと伶佳は祭を部屋から追い出してしまった。
「さて、どうしたものかしら」
祭としては伶佳が無茶をしてしまうことは避けたいのだが、言い出したら聞かないのは日常茶飯事だったのだ。
特に太田は神戸家の使用人というのも問題だった。神戸家と親交を結ぶことは本来あり得ない話だったからだ。
困った祭はとりあえず当主である監物に相談することにしたのだった。




