↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
75/85

第75基音:原初の調律具

シュゥゥゥゥ……

巨兵が解体され、綺麗な光の粒子となって聖域の空気に溶け込んでいく。

不快なノイズが完全に途絶え、澄み切った和音だけが満ちる祭壇の中央。そこに、金色の柔らかな光を放ちながら静かに滞空する一本の音叉――『原初の調律具』が浮かんでいた。

「これが……古代の調律師が遺した器……」

俺が一歩踏み出すと、音叉は呼応するようにキィィィンと清らかな高音を響かせ、引き寄せられるように俺の手元へと滑り込んできた。

冷たい金属の感触を予想していたが、手のひらに触れた瞬間、じんわりと温かい波動が身体の奥底まで染み込んでくる。

(これは……俺の覚醒した『原初魔力』と、完全に同調している……?)

『――正調の継承者よ』

頭の中に、先ほどの古代調律師の厳かな声が再び直接響く。

『汝が手にしたるは、万物の波長を可視化し、干渉の精度を極限まで引き上げる導きの手。それを用い、世界に蔓延る不協和音を正し……囚われし天翼の魂に、真の救済をもたらすべし――』

言葉が終わると同時に、音叉から溢れ出た眩い金色の光が俺の右手へと吸い込まれ、手甲のような繊細な魔導装飾へと姿を変えて定着した。

「アルト様……ッ! 手甲から溢れる波長が……空間そのものの歪みを優しく書き換えていきます……!」

カノンが両手を胸の前で組み、うっとりとその光を見つめている。

俺はそっと右手を握り込み、新しく馴染んだ感覚を確かめた。

これまでは己の身体を触媒にして音波を放っていたが、この調律具のおかげで、周囲の波長の「歪み」や「結び目」がまるで楽譜の記号のように明確に認識できる。

指一本鳴らすだけで、より省効率で、より圧倒的な『解体』と『調律』が可能になったのがはっきりと分かった。

「すごいな……これなら、カノンの残りのコアの波長も、遠く離れた場所から探知できるかもしれない」

「私の……コアの波長を……!?」

「あぁ。カノンの心を取り戻すための指針が手に入ったようなもんだ。……よし」

俺はカノンの元へ歩み寄り、その小さく華奢な手をしっかりと握り締めた。

「遺跡の調査も、能力の覚醒もこれで完了だ。地上へ戻って、まずはカノンの残りのコアを探す準備をしよう。追放された時はどうなるかと思ったけど……お前と出会えて、本当に良かった」

「あ……アルト様ぁ……ッ!!」

俺の言葉に限界を迎えたカノンが、ボロボロと嬉し涙をこぼしながら全身で抱きついてきた。

「私も……私の方こそです……ッ! アルト様に拾われ、調律され、心を与えられたこの命……! 生涯をかけて、アルト様のすべてをお支えいたします……ッ!」

背中の四対の光翼がパッと咲き誇るように広がり、聖域全体を眩い希望の旋律で満たしていく。

こうして俺たちは、古代調律師の遺産と真の力を手に入れ、新たな旅立ちのために深層の聖域を後にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。