第63基音:響き合うふたつの心
ハニーパンを分け合った後、俺たちは色鮮やかな花々が咲き誇る中央公園へと足を運んだ。
木漏れ日が柔らかくカノンの髪を照らすベンチに腰を下ろすと、彼女は胸元のコアにそっと手を置き、遠くで遊ぶ子供たちを愛おしそうに見つめた。
「ふふっ……なんだか夢のようです」
「夢?」
「はい……。昔の私なら、こうして誰かと並んで街の喧騒を楽しむなんて、想像すらできませんでした。音波を乱す害悪として警戒されるか、兵器として恐れられるか……それだけでしたから」
カノンは少しだけ目を伏せ、それから意を決したように俺の方をまっすぐに見つめ返した。
「ですが今は……風の音も、人の歓声も、何よりアルト様のお声が……私のコアをとても温かく満たしてくれるのです。私に『人としての心』を与えてくださって、本当に……ありがとうございます」
紫色の瞳を少し潤ませ、頬を上気させながら微笑むカノン。その表情には、かつての冷徹な兵器の影など微塵もない。
「お礼を言うのは俺の方だ。カノンがいてくれたから、俺は調律師としてここまで歩んで来られた。……これからも、俺の隣にいてくれるか?」
そう言って差し出した俺の手を、カノンは両手でぎゅっと包み込むように握りしめた。少し小さく、けれど確かな温もりを持つ手。
「はい……っ! どこまでも、永遠に……アルト様のお隣にいさせてください……っ!」
溢れ出す感情を隠しきれないカノンの胸元から、トトト……と可憐で甘い共鳴音が鳴り響く。
「ぷしゅ〜〜〜っ」
空気を読んだパルスが、二人の頭上で祝福するように柔らかな光の粒子を散らした。
繋いだ手から伝わる心地よい鼓動。
激闘の合間に訪れたこのささやかな時間は、俺たちが勝ち取ったかけがえのない宝物であり、これから歩んでいく未来を照らす確かな光だった――。




