↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
63/85

第63基音:響き合うふたつの心

ハニーパンを分け合った後、俺たちは色鮮やかな花々が咲き誇る中央公園へと足を運んだ。

木漏れ日が柔らかくカノンの髪を照らすベンチに腰を下ろすと、彼女は胸元のコアにそっと手を置き、遠くで遊ぶ子供たちを愛おしそうに見つめた。

「ふふっ……なんだか夢のようです」

「夢?」

「はい……。昔の私なら、こうして誰かと並んで街の喧騒を楽しむなんて、想像すらできませんでした。音波を乱す害悪として警戒されるか、兵器として恐れられるか……それだけでしたから」

カノンは少しだけ目を伏せ、それから意を決したように俺の方をまっすぐに見つめ返した。

「ですが今は……風の音も、人の歓声も、何よりアルト様のお声が……私のコアをとても温かく満たしてくれるのです。私に『人としての心』を与えてくださって、本当に……ありがとうございます」

紫色の瞳を少し潤ませ、頬を上気させながら微笑むカノン。その表情には、かつての冷徹な兵器の影など微塵もない。

「お礼を言うのは俺の方だ。カノンがいてくれたから、俺は調律師としてここまで歩んで来られた。……これからも、俺の隣にいてくれるか?」

そう言って差し出した俺の手を、カノンは両手でぎゅっと包み込むように握りしめた。少し小さく、けれど確かな温もりを持つ手。

「はい……っ! どこまでも、永遠に……アルト様のお隣にいさせてください……っ!」

溢れ出す感情を隠しきれないカノンの胸元から、トトト……と可憐で甘い共鳴音が鳴り響く。

「ぷしゅ〜〜〜っ」

空気を読んだパルスが、二人の頭上で祝福するように柔らかな光の粒子を散らした。

繋いだ手から伝わる心地よい鼓動。

激闘の合間に訪れたこのささやかな時間は、俺たちが勝ち取ったかけがえのない宝物であり、これから歩んでいく未来を照らす確かな光だった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。