第59基音:解かれた呪縛
青いホログラムの光が静かに揺らめき、数百年前の真実の記録が終わりを告げる。
「私は……殺戮のためだけに生まれた存在では……なかったのですね……」
カノンは胸のコアに手を当て、ぽろぽろと涙を零しながら、自身の胸の奥にある「心」の温もりを噛みしめていた。
「ああ。君は最初から、誰かを守りたいと願う強い心を持っていた。フォルテシモの言っていた『兵器としての原罪』なんて、どこにもなかったんだよ」
俺はカノンの頬をつたう涙を優しく指で拭い、微笑みかけた。
「アルト様……! ありがとうございます……! あなた様が私を見つけてくださり、調律してくださったから……私は自分の過去と向き合うことができました」
カノンは感極まったように俺の胸へと飛び込み、固く、いとおしそうに抱きついてきた。
「ぷしゅー、ぷしゅーーっ!」
パルスも嬉しそうに俺たちの頭の上でぴょんぴょんはね跳び、安らぎの波長を全身から振りまいている。
重く苦しかった決戦が終わり、薄暗かった最下層の空間に、静けさと柔らかな光が戻りつつあった。
「さて……地上に戻ろうか。みんなが待っている」
「はい、アルト様! どこまでも……あなた様とお供いたします!」
互いの手を強く握り締め、俺たちは上層から差し込む光の方へと歩み始めた。
『不協和音の影』の脅威はまだ世界に渦巻いている。だが、どんな過去があろうとも、固い絆で結ばれた俺とカノンの音色は、決して途切れることはない――。




