第52基音:共鳴する暴走
「ガァァァァッ……!!」
フォルテシモの胸のコアから放たれた極太の紫色のノイズ光線が、大図書館の空間を歪めながらまっすぐにカノンへと突き刺さる。
「カノンッ!!」
俺は間一髪でその射線に飛び込み、広域調律の光膜を極限まで展開した。
——バリバリバリッ!!
金色の光と紫の悪意が激しく拮抗し、閃光と衝撃波が破裂する。俺の腕の皮膚が焼け付くような不快な痺れに襲われ、足元がジリジリと後退した。
だが、フォルテシモの狙いは俺への直接攻撃ではなかった。
「ふははっ! 無駄だよ調律師! 同型機である私の波長は、既に奴の『原初コア』へ直接アクセスを果たしている!」
「あ……がぁっ……! ア、アルト……様……逃げて……ください……ッ!」
俺の背後で、カノンが己の頭を抱えながら激しく床に悶絶した。
胸元で輝く2つのコアが、かつてないほど不気味な血のような赤黒さに濁り、明滅の周期が危険な領域へと加速していく。彼女の全身から溢れ出す紫電が、もはや俺の手には負えないほどの暴走状態を引き起こしていた。
「あ……あああぁぁぁッ!!」
カノンの口から吐き出されたのは、人間の悲鳴ではなく、かつて都市を一夜で滅ぼした『絶望の破壊波長』。
強烈なノイズの衝撃波が円状に広がり、大図書館の古代石柱が次々と粉砕され、豪快な音を立てて天井が崩落し始めた。
「ぷ、ぷしゅーーッ!?(必死にアルトの前に出て衝撃を和らげようとするパルス)」
「くっ……カノン! しっかりしてくれ、カノン!!」
「無駄だ、無駄だ! 過去の真実と同型機からの強制共鳴……奴の回路は『兵器の起動プログラム』を完璧に再開させた! 見よ、これこそがこの廃都アリアを屠った美しき破壊神の真の姿だ!」
高笑いするフォルテシモの背後に、崩落した天井の隙間からさらなる深層――『古代魔導炉』へと続く巨大な竪穴が露出する。
「さあ三号体……己の内に眠る『殺戮の原罪』に従い、この調律師をその手で噛み砕くがいい!!」
不協和音の紫の闇に呑まれ、光を失った漆黒の瞳で、暴走したカノンがゆっくりと俺の方へと顔を向けた――。




