第43基音:魔導都市フォルテ
ビアンカの街を出発して数日。街道を抜けた俺たちの視界に、雲を突くほどの巨大な魔導塔と、幾重もの巨大な歯車が組み合わさった壮大な外壁が飛び込んできた。
学術と機械の巨大都市――【魔導都市フォルテ】だ。
「すごい……! 街全体から、見たこともない密度の魔力が響き合っている……」
「ここは世界中の魔導技師や古代研究者が集う場所。街の動力を支える魔導炉の振動が、微細な音となって流れておりますわ」
「ぷしゅ〜!(目を輝かせて周囲を見回すパルス)」
行き交う人々の手には見たこともない魔導具があり、空には魔導船が緩やかに浮かんでいる。活気あふれる街並みに圧倒されながらも、俺たちはまず情報収集のために、街の地下街にある評判の『情報屋』へと足を運んだ。
「――ほう、『紫色の魔導結晶』と、古代のSランク魔導兵器の手がかり、かね?」
薄暗い店内でパイプの煙をくゆらせる老店主は、俺たちが提示した結晶の破片の写真とカノンの姿を見て、細い目をさらに細めた。
「結晶については何も知らん。だが……お嬢さんと同じ波長を持つ『古代遺跡』なら、心当たりがあるぞ」
「本当ですか……!?」
老店主は古い羊皮紙の地図を広げ、フォルテから少し離れた不気味な谷間を指し示した。
「ここから南西に位置する古代遺構――【廃都アリア】だ。数百年前に一夜にして滅びたと言われる捨てられた大迷宮さ。実は最近、あそこに『黒いフードを着た集団』が頻繁に出入りしているという噂があってな」
「黒いフード……『不協和音の影』……!」
「さらに言えば、アリアの最深部には古代の記憶データや兵器の設計思想を保管する『アーカイブ』が存在すると言われている。お前さんたちが探している答えも、そこにあるかもしれん」
「あ……くっ……!?」
その時、老店主が「アリア」の名を口にした瞬間、カノンが突然胸を押さえてその場にしゃがみ込んだ。
「カノン!? どうしたんだ!?」
「あ……アルト……様……。胸の奥の……記憶回路が……激しく熱を帯びて……っ。あそこに……あの迷宮の底に……私の『過去』が……私を造り出した『原点』が……眠っていますわ……」
カノンの紫色の瞳が、未だ見ぬ深淵を見つめるように揺れている。不安と恐怖、そして拒絶の波長が彼女の全身から漏れ出していた。
俺はそっとカノンの肩を抱き寄せ、その手に自分の手を重ねた。
「大丈夫だよ、カノン。何があっても、俺が君の隣にいる。……カノンの過去も、敵組織の陰謀も、全部俺たちが決着をつけよう」
「アルト様……。……はいっ!」
俺の温かな調律の波長に触れ、カノンは震えを収めて力強く頷いた。
「よし、フォルテで必要なアイテムと調律用具をしっかり補充したら、すぐに【廃都アリア】へ向かおう!」
「ぷしゅーーっ!!」
敵組織の足取り、そしてカノンの隠された過去。すべてが眠る深遠なる大迷宮『廃都アリア』への挑戦が、今まさに始まろうとしていた。




