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第40基音:虚無の尋問

気絶した男をロープで固く縛り上げ、パルスの防風ドームに守られながら霊峰グラン・ヴァルを下山した俺たちは、山裾の街ビアンカの警備隊詰所へと男を引き渡した。

「……おい、起きろ。お前たちの目的は何だ? なぜカノンを……コアを狙った!?」

冷めた水を浴びせられ、目を覚ましたフードの男。俺は詰所の尋問室で、男を強く睨みつけながら問い詰めた。

だが――男の反応は、俺たちの予想とは大きくかけ離れていた。

「あ……え……? ここは……どこだ……? 私は……一体……」

男は怯えたように目を泳がせ、縛られた自分の腕を見て茫然と首を傾げている。

「白白しいマネはやめろ! 霊峰でヴァンたちに結晶を飲ませ、カノンを暴走させようとしただろう!」

「ヴァ……ン……? 結晶……? なにを……言っているんだ……? 私はただ、カデンツァの街で怪しい黒服の男に声をかけられ……胸に紫色のペンダントを付けられたところまでは覚えているが……それ以降の記憶が……何もないんだ……ッ!?」

男は激しい頭痛に耐えかねたように頭を抱え、必死に記憶を掘り起こそうとするが、瞳には一切の嘘偽りや誤魔化しの色は見られなかった。

「アルト様……彼の波長を解析いたしましたが、虚言のノイズは検出されません。……真実、何も覚えていないようですわ」

傍らに立つカノンが、静かな声で俺に告げる。

「……あいつ自身も、操り人形だったのか」

胸元の【紫の魔導結晶】によって精神を汚染され、組織の忠実な手駒として動かされていたに過ぎなかったのだ。核となる結晶を俺の『断層調律』で破壊されたことでノイズの支配が解け、洗脳中の記憶ごと意識が抜け落ちてしまったらしい。

(尻尾を掴ませないために、手先まで洗脳して使い捨てにする……どこまで卑劣な組織なんだ……!)

憤りで拳を固く握りしめる俺の肩に、パルスが心配そうに「ぷしゅ〜……」と体を寄せてくる。

「警備隊の方、この男の身柄をお願いします。……これ以上の情報は出そうにありません」

「あぁ、引き受けた。街を危険に晒した容疑で厳重に拘留しておこう」

詰所を後にし、夕暮れに染まるビアンカの街並みを歩きながら、俺とカノンは深く思案を巡らせた。

「黒衣の男は『不協和音の影』と名乗っていた……。カノンの完全覚醒を阻止し、暴走させて世界を滅ぼすことが奴らの真の狙いなら、次も必ず仕掛けてくるはずだ」

「はい、アルト様。……ですが、今の私にはアルト様が満たしてくださった2つ目のコアと、新しく解放された『電撃障壁』の力がありますわ。二度と後手を踏みはいたしません」

「うん。でも、敵の全貌を掴まないことには後手に回るばかりだ。……次に向かうべき場所を探そう」

男の記憶から得られた唯一の手がかり――それは「カデンツァで黒服の男に接触された」という事実のみ。

俺たちは敵組織『不協和音の影』の足取りを追い、さらなる強さを求めて、次なる目的地へと舵を切るのだった。

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