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第20基音:豪商の恩返し

「信じられん……信じられんぞ……っ! カデンツァの国家級技師たちが総出で匙を投げた大魔導機関を、まさか指を鳴らしただけで直してしまうとは……!」

地下室で腰を抜かしていたマルコさんは、未だに震える手で自身の髭を引っ張りながら、何度も大魔導冷却機関と俺を交互に見つめていた。周りの技師たちも、完璧な青い光を放ちながら静かに駆動する機械の前で、拝むように跪いている。

「本当に大したことじゃないんですよ。色んな魔力の波長が喧嘩して詰まっていただだけなので」

「それを一瞬で見極めて解きほぐすのが『大したこと』なわけないだろう!? ああ、神よ……! やはりアルト君は我がマルコ商会の救世主だ!」

マルコさんは涙目になりながら俺の手をガシッと両手で握りしめると、そのまま本店最上階にある豪華絢爛な応接室へと案内してくれた。

ふかふかのソファに腰掛けると、高級な茶葉の香りが漂う紅茶と、見たこともないような繊細な洋菓子が運ばれてくる。

「プルプルッ〜♪」

パルスもテーブルの上で嬉しそうにプルプルと揺れ、カノンは俺の隣にぴったりと寄り添いながら、マルコさんを鋭い(だが誇らしげな)眼差しで見つめていた。

「さて、アルト君。まずは今回の命の恩人……いや、商会の恩人である君に、最大級のお礼をさせてほしい」

マルコさんはそう言うと、卓上にズシリと重い革袋をふたつ置いた。

「まずは今回の緊急修理の報酬として、白金貨五枚だ」

「は、白金貨五枚……!?」

金貨百枚に相当する白金貨が五枚。一瞬で目玉が飛び飛び出るような大金だ。

「さらにだね! アルト君とカノンさんには、我がマルコ商会の最上級SランクVIPタグを寄贈する! これさえあれば、世界中の我が商会でのお買い物がすべて無料、さらに商会が持つあらゆる情報網にアクセスが可能だ!」

「無料!? い、いやマルコさん、さすがにそれは貰いすぎです……!」

「いいや! あの機関が止まっていれば、我が商会は数億ゴールドの損失と信用失墜で倒産していたのだ! これでも安すぎるくらいなのだよ!」

マルコさんは熱っぽく語ると、ふと表情を引き締め、声をひそめた。

「……ところでアルト君。君たちがこのカデンツァにやってきたのは、何か特別な目的があってのことかね? 私の持つ情報網でお手伝いできることなら、何でも言ってくれたまえ」

「実は……」

俺はカノンの身体構造のこと、そして彼女の本来の性能を取り戻すための『失われたパーツやコア回路』を探していることを打ち明けた。

話を聞き終えたマルコさんは、深く頷きながら顎に手を当てる。

「なるほど……古代魔導兵器の特殊パーツか。素晴らしいタイミングだよ、アルト君。実は今週末、ここカデンツァの地下競売場(オークション)にて、大昔の遺跡から発掘された『オーパーツの魔導コア』が出品されるという情報が入っているのだ」

「オーパーツの魔導コア……!」

カノンが反応し、その紫の瞳を僅かに見開いた。

「アルト様……私の中で眠る補助記憶素子が、そのコアの波長に反応を示しております。おそらく……私がかつて紛失した、第二補助機関の可能性が高いかと」

「本当かい、カノン!?」

「はい。間違いございません」

目的地であるカデンツァに到着して早々、カノンのパーツに繋がる最大の有力情報が飛び込んできた。

「よし決まりだ! その競売会、我がマルコ商会の特別推薦枠として、アルト君たちをお通ししよう! 欲しいものは私がすべて競り落としてプレゼントするよ!」

「そこまでしていただいて良いんですか……!?」

「ガハハ! 命の恩人のためなら安いものだ! さあ、競売会まではまだ数日ある。今日は我が商会が所有する最高級ホテルで、旅の疲れをゆっくりと癒したまえ!」

豪商マルコさんの全面的すぎるバックアップを受け、俺たちの『カノンパーツ奪還作戦』がいよいよ動き出すのだった。

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