第15基音:お祝いの夜
「まさか……本当に『旧・鉱山ダンジョン』のアーマータイラントを討伐して帰ってくるなんて……」
「怪我も一切ありませんし、洞窟の崩落被害もゼロです! これで文句なしの合格……いえ、特例中の特例ですよ!」
「良かったです! カノンが出力を調整して、丁寧にメンテ不足の魔物を片付けてくれたおかげですよ」
俺が笑顔で答えると、受付嬢さんは「丁寧に……?」と引きつった顔で呟きながら、俺たちのギルドプレートを手元に引き寄せた。
専用の魔導具で刻印が書き換えられ、銅色だったプレートが落ち着いた鈍色の『鉄プレート』へと変化する。
「おめでとうございます! お二人を正式に【Dランク冒険者】として認定いたします!」
「プルプルッ♪」
ポケットの中のパルスが嬉しそうに跳ね、カノンも優雅にお辞儀をした。
「アルト様が望まれる栄誉の一助となれたこと、心より誇りに思います」
「ありがとうカノン、パルス。これで受けられる依頼の幅もグッと広がるな」
昇格手続きと報酬の受け取りを終え、ギルドを出るとすっかり街は夕暮れに包まれていた。
「よし! 無事にDランクになれたし、報酬もたくさん貰えたからね。今夜はお祝いをしよう!」
「アルト様とのお祝い……っ! はい、喜んでお供いたします!」
俺たちは、ハーモニアでも美味しいと評判の宿屋兼食堂『フェルマータ亭』へと向かった。
◇
「カンパーイ!」
木製のジョッキを掲げ、俺とカノンは乾杯した。
テーブルの上には、こんがり焼かれた肉料理やフレッシュな野菜サラダ、そしてパルスの大好物である特製の魔力シロップを垂らした極上ミルクが並んでいる。
「プルプル〜♪」
パルスは器の中で幸せそうに体を躍らせながら、美味しそうにシロップを吸い上げている。
「アルト様、この肉料理、とても柔らかくて美味しいです。あぁ……アルト様とこうして美味しいものを食べられるなんて、これ以上の幸せはありません……」
カノンは頬をうっすら赤く染めながら、愛おしそうに俺を見つめてくる。相変わらず重めのデレだが、心から喜んでくれているのが伝わってきて俺も自然と笑みがこぼれた。
「追放された時はどうなるかと思ったけど、カノンやパルスと出会えて本当に良かったよ。これからもよろしくね」
「アルト様……! 永久に、どこまでもお供いたします……っ!」
「プルプルッ!」
美味しい料理とお酒を楽しみながら、Dランク冒険者としての第一歩を刻んだ夜。
俺たちは明日からの旅や新しい依頼に思いを馳せつつ、温かな宴の時間を心ゆくまで楽しむのだった。




