第12基音:Dランク昇格試験
「……えっ? 『Dランク昇格試験』の挑戦権……ですか?」
銀貨の袋を受け取った直後、受付嬢さんから発せられた言葉に、俺は思わず耳を疑った。
「はい! 本来、Fランクから昇格するには何件も依頼をこなして実績を積む必要があるのですが……アルトさんたちが解決した湿地帯の魔力異常は、実質的にDランク相当の危険度だったんです。それを無傷で、しかも初仕事で解決された功績を評価して、ギルドマスターから特例で飛び級試験の許可が出ました!」
受付嬢さんは興奮気味に身を乗り出して言ったが、俺は冷や汗をダラダラと流した。
(いやいやいや! 飛び級なんて絶対無理だって! 俺、レベル1の雑用係だよ!? さっきのだって、たまたまメンテ不足のイノシシと、体内の魔力回路がバグってたスライムがいただけなんだから!)
「あの、受付嬢さん。俺たちまだ駆け出しですし、実力も全然伴っていないので、そんな大層な試験は辞退させて――」
「お受けいたします!!」
俺の辞退の言葉を遮るように、隣のカノンが力強く宣言した。
「カノン!?」
「アルト様、ご遠慮なさる必要はありません。アルト様の偉大なるお力と、日頃の温かなご指導(調律)があれば、Dランクなどという通過点、指先ひとつで超えられます。アルト様が望まれる称号を手に入れるためなら、私は試験会場ごと障害を排除してみせます!」
「通過点って思ってないし! むしろ試験会場を消し飛ばそうとしないで!?」
必死にツッコミを入れる俺の横で、ポケットの中のパルスも「プルプルッ!」と気合を入れるように体を揺らしている。
受付嬢さんは二人の熱量(とカノンの物騒な発言)に気圧されつつも、嬉しそうに一枚の羊皮紙を取り出した。
「決定ですね! 試験内容は『ハーモニア北部に広がる【旧・鉱山ダンジョン】深部での異常波長調査およびボス個体の討伐』です。通常、Dランクパーティが数組で挑むような難所ですが……アルトさんたちならきっと大丈夫です!」
「数組で挑む難所……!?」
絶句する俺をよそに、カノンは優雅にお辞儀をした。
「承知いたしました。アルト様のお手をわずらわせることもなく、瞬時に終わらせてまいります」
(ダメだ……カノンを野放しにしたら試験会場の鉱山ごと地図から消えかねない……! 俺がしっかりついていって、調律で穏やかに解決しなきゃ……!)
「はぁ……わかりました。そのDランク昇格試験、挑戦させていただきます」
こうして俺たちは、Fランク初仕事を終えたその日に、異例の『Dランク飛び級昇格試験』へと挑むことになったのだった。




