第11基音:初成果とギルドの戦慄
ハーモニアの街へ戻った俺たちは、その足で冒険者ギルドの受付へと向かった。俺の肩の上には、すっかり居心地が良くなったのか「プルプル」と心地よいパルス(波長)を刻む小さなスライム・パルスが乗っている。
「受付嬢さん、薬草採取の依頼、完了しました!」
カウンターにブルーハーブがたっぷり詰まったカゴを置くと、昨日対応してくれた受付嬢さんがパッと表情を明るくした。
「アルトさん、カノンさん! お帰りなさい……って、えええぇっ!?」
カゴの中身を確認しようとした受付嬢さんが、突然目を見開いて悲鳴に近い声を上げた。
「こ、これ……! ブルーハーブだけじゃなくて、全部『最上級極上品』じゃないですか!? 葉の破れ一つなくて、魔力の含有量が通常の倍以上ありますよ! 一体どうやって採集されたんですか!?」
「え? ああ、湿地帯の奥まで行ったら綺麗に咲いてたので、普通に手摘みしただけですけど……」
「普通の手摘みでこんな状態保てませんよ!? それに……その肩に乗っているスライムは……?」
受付嬢さんの視線が、俺の首元でキューッと縮こまっているパルスに注がれる。
「あ、途中で魔力回路がバグって不協和音出しまくってたノイズスライムがいたんです。ちょっと波長をメンテナンスしてあげたら大人しくなって、ついてきちゃって。名前はパルスです」
「ノイズスライムのメンテ……??? いえ、ノイズスライムって普通は周囲の魔物を凶暴化させる危険外来種で、討伐対象なんですけど……メンテって何ですか……?」
混乱する受付嬢さんの横で、カノンがすかさずツッコミ(?)を入れる。
「アルト様の神聖なる指パッチンによって、邪悪な魔力ノイズが綺麗に浄化されたのです。アルト様のお力にかかれば、このような魔物すら一瞬で従順な下僕と化します」
「下僕とかじゃないからね!? ただのペットだからね!?」
俺が必死に訂正を入れる中、受付嬢さんは引きつった笑みを浮かべながら、手元の計算表を叩いていた。
「え、えーっと……最上級ブルーハーブの納品と、湿地帯の魔力異常の原因解決ということで……Fランクの報酬としては規格外ですが、特別ボーナスを上乗せさせていただきますね!」
カウンターにジャラリと差し出されたのは、約束の銅貨三十枚……どころか、銀貨五枚が入った袋だった。
「えっ、こんなに? 銅貨三十枚の予定だったのに……」
「当然です! ギルドとしても湿地帯の調査費用が浮きましたから! アルトさんたち、本当にFランクなんですか……?」
「はい、プレートの通り【LV 1】のFランクです! 運よくメンテ不足の魔物しかいなくて助かりました!」
俺が爽やかに答えると、受付嬢さんは「レベル1でノイズスライムを無力化……?」と頭を抱えてつぶやいていた。
(よし、初仕事で思わぬ大金が手に入ったぞ! これならハーモニアでの滞在費も余裕だ)
ホクホク顔で銀貨の袋を受け取る俺と、俺の隣でマウントを取るようにパルスを睨みつけるカノン、そしてカノンの視線から逃げるように俺のポケットに潜り込むパルス。
こうして、俺たちの『調律の調べ』パーティとしての初仕事は、ギルドに小さな衝撃を残して大成功で終わったのだった。




