保留っていたよな!
〜ミカエル視点〜
「なんだよぉ……コレット侯爵令嬢は、殿下に取られてしまったのか……」
がくりと肩を落とす子息達……
「俺、ミカエルとコレット侯爵令嬢はなにか縁があると思っていた」
「あ、あぁ。親同士が仲良かったんだ」
そういえば入学祝いの晩餐会やお茶会の話はどうなったんだろうな……あれから聞いてないな。
今晩聞いてみるか。それにしても……僕は告白の返事に保留って言ったよな!
あれからまだ十日だぞ! シャノンめ! なにを考えているんだ。浮気者か?
王妃様主催のお茶会は主役のナセル殿下がシャノンと共に去ってしまい、新入生交流会という名前に変えましょう! 皆さん楽しんでいってね。と王妃様の機転で気軽なお茶会? へと変わった。
それなりに交流は持てた……と思う。僕は言っても伯爵家の嫡男だし、令嬢からあとを立たずに話しかけられた。
……多分狙いを変えたんだろうな。殿下がいなくなったから嫡男狙いになった。としか思えない。
シャノンの存在に慣れすぎていて、ちょっと可愛い令嬢じゃなんとも思わなくなってしまったのだろうか……話をしていてもなんかもの足りないと思ってしまうんだよな……。
プラチナブロンドの髪にピンクの瞳、陶器のような白い肌の頬は薄いピンク色で、小さな薄い唇がまた可愛さを引き立てる。
化粧なんてしなくてもシャノンは可愛い。そして清潔感あふれるシャボンの香りもシャノンを思い出させる。
香水や化粧のどぎつい臭いがする令嬢たちのせいで胸が悪くなってきた。ちょっと離れて澄んだ空気を吸いたい……。
お茶会は終わり皆、家に帰ることになった。シャノンは結局会場に戻ることはなかった。
「ただいま帰りました」
今日のお茶会はなんだか疲れたな。
「おかえりなさい、お茶会はどうだった?」
「それなりに楽しんできましたよ」
「そう、良かったわね。そろそろミカエルも将来を考えて婚約者を作ってほしいのよね。お見合いの話も何件かきているわよ」
母上から見合いの話をされるとは思わなかった。今までそんな事を一度も言われたことがなかった。
「見合いですか……そういえば学園に入学する際にコレット侯爵家を招いて晩餐会をすると言っていませんでしたか?」
「……そうね。あなたとシャノンちゃんの入学祝いをと思っていたのだけど、侯爵家は忙しいみたい。先日侯爵夫人とお会いしたときに言われたの」
「忙しい、ですか……昔はよく茶会だなんだと招きあっていたのに」
「あのころが懐かしいわ……シャノンちゃんが娘になってくれれば良かったのに。残念よ」
「残念ってまだ分かりませんよね? シャノンは僕のことが──」
「保留……って言ったんですって? せっかくシャノンちゃんがあなたに想いを告げてくれたのに……」
「僕は伯爵家の嫡男としてですね、」
「うちにはまだ息子がいますから、ミカエルに継いでもらわなくとも大丈夫です! 大人しく侯爵家の婿になってくれれば……」
「え、長男ですよ! それなのに婿に行けと?」
「家と、シャノンちゃんのことを考えたら侯爵家の一員になった方が良かったでしょう!」
「それは、考えませんでした」
「バカ!」
「いや、いや! でもシャノンのことは妹にしか見えなくて」
「妹がいたらの話でしょ! あなたには妹がいません!」
ピシャリと母に言われるも
「ですからそう言う意味ではなくてですね……」
「仲良くしていただいていたから、婚約できれば……なんて思っていたけれど、私たちがバカだったわ。家族同士お付き合いをさせていただいていたけれど、高望みだったのよ。ミカエルお見合いするわよね!」
「シャノンには保留と言ってますし、まだ返事を──」
「それが返事でしょうが!」
「お互いに視野を広めてそれでも僕が良かったらもう一度シャノンの気持ちを聞かせて欲しいと言ってあります。あれからまだ十日ですよ! 考えてみてください! ほぼ毎日一緒にいたんですからすぐに気持ちが変わるわけないでしょう?」
「貴女は乙女心というものを分かっていません!」
はぁ? なんだよ、乙女心って……母に乙女心と言われてもピンと来ない。
何度も言うけどシャノンの事は可愛いと思ってるんだって!
「もういいわ。シャノンちゃんのことは諦めてお見合いの話進めるから。そもそもシャノンちゃん侯爵家のお嬢様。Sクラスに入るほどの才女。ミカエルとは釣り合わないわ。たまたま幼いときから仲良くしてくれただけで、シャノンちゃんは王宮にも出入りできるような立場だもの。今後は気安くシャノンちゃんに声をかけてはいけませんよ?」
「何度も言いますけど、シャノンとは──」
「呼び捨てもいけません。シャノン嬢、もしくはコレット侯爵令嬢とお呼びしなさい。お見合いの件頼んだわよ」
母はため息を深く吐き、僕の顔を一瞥して背を向けた。
いやいや。話を聞けって。そもそも乙女心ってなんだよ。
それなら男心にも気をつけろって言いたい。




