おかしい!
〜マリ視点〜
ぶつぶつと呟く。
おかしいわよ。シャノン? なにあの子? 気に食わないわー!
「おはよう、マリ」
「あら。おはよう、ミカエル」
声をかけられた方へ顔を向けると入学式で迷っていた時に友達になったミカエルだった。
笑顔で挨拶を返す。そうしてみると、ミカエルもイケメンなのよね。
伯爵家の嫡男だし、条件としては悪くないからキープしておこうかな。
「昨日の帰り花瓶の水を人にかけるところだったな」
「見てたの? 躓いちゃって」
「躓くようなものはなかったように思えたんだけど……?」
ちっ。普通は大丈夫? とか言うでしょうに。
「……そうなの。花瓶が重たくて思うように足が上がらなかったのかもしれないわ。これから気をつけるわ。ナセル様にも前を向いて歩くようにと言われたから」
「殿下の名前は気安く呼ばない方がいい。いくら学園でも不敬は不敬だよ」
真面目か!
「あ、そうね。気をつけるわ」
あれ? でもその場を見ていたなら花瓶を持とうか? ってひとことほしかったわね。
花が可哀想だから水を変えるなんてステキ女子なんじゃないの?
それに躓く女子を見たら助けるのが紳士でしょう?
なのにナセルは私じゃなくて、水をかけられそうになった方を助けた。おかしい。
顔を下に向けて考えていた。
「悪い、少し言い方キツかったか……?」
「そんなことないよ。そうだ! 今日一緒にランチしない? サンドイッチをたくさん作ってきたの」
「いいのか? じゃあご馳走になるよ」
「うん、張り切って作りすぎたの」
「へー、俺も行ってもいい?」
「ケニー! もちろんいいよ!」
同じクラスでよく話をするケニーだった。ケニーの家も伯爵家。家は田舎みたいだけど、仲良くしておいて損はないわね。フツメンだけど伯爵家だし。金には困らなそうだし。
そしてランチタイムになり庭にいく。
「この辺で食べましょう」
庭の一角で日陰になる場所がある。木の下に敷物を敷いて座った。
「こんな場所があるんだな」
「うん、たまたま散策中に見つけたの」
ミカエルがランチボックスを持ってくれたので、それを受け取った。
「迷子になったんじゃないのか?」
「もう、やめてよぉ」
ケニーに揶揄われたけど、両手に伯爵家の男子二人が居たら悪くないわね。花より団子って感じ。
すると奥から声が聞こえてきた。私の思惑通りの人物。
「あ、良かった空いてたね」
「うん」
「ルイズが来るまで座って待とうか」
「ナセル様座ってて。テーブルの準備するから」
「手伝うよ」
ナセルとシャノンの声。この木の裏にはベンチがあり、ナセルはこの場所を気に入っているはずだからビンゴ!
少し会話が聞こえるくらいがちょうどいいわね!
「ベンチが空いてましたのね。お待たせしました」
「ルイズ様、すみません。ありがとうございました」
「早かったね。もっとゆっくりでも良かったのに」
「お待たせするわけには行けませんわ! さぁランチの準備をしましょう」
ここに来ればランチタイムは会えるってこと! それにしてもまたあのシャノンがいるのね!
******
~ミカエル視点~
シャノンの声が聞こえた。どうやらナセル殿下と公爵令嬢といるようだ。
シャノンは小さいころ、王宮に遊びに行っていたと聞いた。僕と遊ぶようになってから王宮には行かなくなったはず。
シャノンは王宮は気後れするって言っていたっけ。僕と遊んでいると楽だと言った。
でも時々手紙は届いていた。それは普通の手紙とは違って特別扱いされていた。気にはなったけど、誰からかは聞かなかった。
お茶会も疲れると言い、あまり積極的ではなかったが連絡を取る友達はいたようだった。
聞こえてくる会話は、社会情勢や家族の話など多岐に渡っていた。それを難なく返すシャノン。僕の知っているシャノンとは違う。
お菓子が美味しいだとか、お花が綺麗だとか他愛のない話ばかりしていた。
「あ、そうだシャノン、今週末のカルロスとレイレのお茶会に何を持っていくの?」
カルロス殿下のお茶会? シャノンと同じクラスとは言え、もうそこまで交流を深めているのか! 驚いた……カルロス殿下は留学中の隣国の王族。
「レイレ様は焼き菓子がお好きだとお伺いしましたので、我が家特製のマドレーヌなどをお持ちする予定です。カルロス殿下とレイレ様にお揃いの刺繍を施したハンカチをお渡しします」
「お揃いのハンカチ……それはいいね。今度私にも作ってプレゼントしてくれたら嬉しいんだけどね」
チュっとリップ音が聞こえた。
「もうっ!」
「ナセル様、わたくしがいることを忘れていませんか?」
「目の前にいるのに忘れるわけはないだろう。そもそもルイズだって兄上と私がいてもイチャイチャしているだろう」
「していませんよ!」
「そうだった? 相手がいない私の僻みだったのかもしれない」
「婚約者でもないのに昼間からイチャイチャとするのはおやめなさい。シャノン様が困ってますよ」
「困っているけど嫌ではないんだよね、シャノン」
「嫌です!
「シャノンが私と婚約すると言えばそれで話は丸く治るんだよ」
シャノンが殿下と婚約……? 話が進んでいるのか? 頼むから嘘だと言ってくれ。
「あっ!」
急にマリが大きな声を上げた。どうやらりんごを落として転がしていたようだ。よりによって殿下たちの方へ! なにしてんだよっ!
「誰だ!」
ナセル殿下の厳しい声が聞こえた。




