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好きだと伝えたら、一旦保留って言われて、考えた。  作者: さこの


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番外編【シャノンパパ】

マルガリータ王女殿下誘拐未遂事件があった日だった。


「うちの可愛い娘に傷を負わせやがって! 警備は一体どうなってんだ! 警備の責任者を今すぐ呼んでこいっ!!」


コレット侯爵の怒声が会議室に響き渡っていた。整っている顔がまるで鬼のような形相だ。

警備の責任者が来るまでシーンと静まり返る室内。

責任者は近衛兵で侯爵家の嫡男だった。


「お呼びとのことですが……」

何も知らされていない警備の責任者は、恐る恐ると言った感じで周りを見渡していた。

なぜここに呼ばれたのかわかっていない。


「ほう。貴殿が警備の責任者か? 王女誘拐未遂のときに貴殿は何をしていたのだろうか? なぜ賊が王宮に簡単に入ることができた? 答えよ。

「コレット侯爵はなぜ、このような質問を、王女殿下は無事だったと──」


静まり返る室内に侯爵が話の途中で話をぶった斬り会議室の机を叩く。

「王女の話をしているのではないぞ。なぜ賊がこんなにすんなりと王宮に入って来れたかを聞いている。まずお前はその口の端についた菓子のカスを取ってなぜこのようなことが起きたかを調べてこいっ! 呑気に茶をしている暇などおまえにはない!」


「はっはい!」

口の端を押さえて扉へと向かう。

「おい。侯爵殿聞いているか? ことによってはおまえの息子の命ないと思えよ」

「は、はい……」

「つぎ! 賊は口を割ったのか!」

「いえ。舌を噛もうとするので猿轡を嵌めております」

報告する者は緊張しながらも伝えた。

「賊は何人いた?」

「三人と聞いています。捕まえたのは三人で……」

「最低でも四人! 逃亡した者がいる。そうじゃないと剣の数が合わない。いいか? 賊の仲間は必ず捕まった三人を助けに来るはずだ! 誘き寄せる為に罠を仕掛ける。敢えて夜間の警備を減らせ。怪しいやつは捕らえよ。決行するなら早目に行動するはずだ!」

報告してきた者の言葉をぶった斬る。

「おい、コレット侯爵、それは会議して決めることだろう?」

宥める様に宰相が言っても聞く耳持たず。


「宰相! うちの娘に傷を負わせたんだ。逃すわけにはいけない。陛下いいよな?」

鬼の形相で陛下を睨むと、陛下に異論はないようだ。


「陛下の許しも得たぞ。あと手引きをしていたやつだが、おい! 伯爵何か知っているんだろう? さっきからこちらを一度も見てこない。ここは暑いか? その異様なほどの汗はなんだ? それにいつものニヤけた顔はどうした? ん?」

「い、いえ、私は何も」

「陛下、伯爵家の家宅捜索の許可を!」

急に家宅捜査と言われ驚く陛下に、焦る伯爵家。


「な、何をっ! 私は何も知らない! こんな事許されるはずがないぞ! 侯爵殿の(シャノン)はただ剣が掠った程度……掠り傷だろう? たかが傷口すぐに──」


周りの皆の息を呑む声が聞こえた。

「……たかがって言ったか? それではおまえにも同じように傷を付けてやろう。おい! そこの衛兵! おまえの腰の剣をかせ!」

「こ、侯爵殿。そ、それはいけません」

衛兵がコレット侯爵に意見したのだが……

「貸せ! 早死にしたいのか?」

あまりの恐ろしさに衛兵は固まり、その間に剣を抜かれた。

「伯爵、腕をよこせ! 我が娘と同じ傷を作ってやろうと言っているんだ。なぁに。たかが傷口だ、舐めておけば治る」

「ひっひぃぃぃぃ……」

腰を抜かす伯爵。


「口ほどにもないな。ときに伯爵家は借金で家が傾いているはずなのに、この立派な宝飾品はどうした? おまえごときが購入できる品物ではなかろう?」

剣の先で胸に付けていたブローチを弄んでいる。会議室がざわついた。

「ますます怪しい……なぁ。グレイ子爵はどう思う?」

隣に座るグレイ子爵を見る。

「その、わたしは……」

「お前の息子は確か……そうだ門番をしていなかったか?」

「は、はひっ」

急に振られて驚くグレイ子爵。まさかここで息子の話が出るとは思わなかった様だ。

変な返事が返ってきた。


「日頃から門番は許可がないものでも金銭を渡せば通しているというバカな噂が立っているのは知っているな? 最近その者を捕らえたと聞いたがまだそんなバカなことをしている奴がいるんじゃないか?」

「直ちに調べさせよ!」

宰相が言うと数人動き出した。その中にいた男爵家の嫡男に声をかけた。

すぐにこの場から離れたがっている様にも思えた。

「待った! 君は……ブラウン男爵のご子息だな? 男爵の体の具合はどうだ? まだ伏せっているのか?」

「え、えぇ……父はまだ病から回復していませんで、」

「では一昨日王都で見たのはブラウン男爵では無いのだな? 一緒にいた男は北の国の特徴をした者に見えたのは私の目の錯覚だろうか?」

「王都を隈なく捜査せよ! 関係者を洗うんだ!」


宰相が指示して動き出す。その後伯爵家、グレイ子爵、ブラウン男爵の家は王家を謀ったとしてお家断絶。一族総出で強制労働とされた。


警備の責任者である侯爵家の嫡男はその時にサボってメイドとの逢瀬を楽しんでいたようだ。

日頃からサボり癖があるが侯爵家という高い身分のため誰も注意が出来なかったのだそうだ。


侯爵は怒り狂い息子を廃嫡とした。

「うちは先祖代々王家に忠誠を誓ってきた。このようなことが二度とないよう家名に誓います!」

と言い自身は隠居し、降爵を願った。


名探偵コレット侯爵の誕生だった。

侯爵家に楯突くと家がなくなるとまで言われた。ただこのことを知るのは一部のみ。

なぜなら王女誘拐未遂事件は箝口令が敷かれているからだ。

もちろん王女の教育係もクビになったし、王女の世話人は全て取り替えられたのだった。そして数年の教育を経てシャノンに会うことが許された。


王宮の警備の担当は王太子が責任を持つ事になったようで、常日頃から目を光らせているようだ。

サボっているものは容赦なく罰を受けさせ左遷になった者もいる。

あれから一度だけ賊が侵入しようとしたらしいのだが未然に防いだ衛兵は副団長に気に入られ副団長補佐にまで出世した。

功績を残したものには褒美を与え、王太子が公平なジャッジを下すので衛兵は次は自分が手柄を立てると鍛錬に力を入れる。人気の職業になった。


これでようやく王宮の警備は安全だと保証された。よってシャノンを王宮に誘ってよしと言う許可が下された。

まさか学園入学のその日になろうとは侯爵も思わなかったようだ。


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