番外編【シャノン】
ナセル様と無事に結婚式を迎えた。結婚式が終わって生活が落ち着いてきたところ、お父様とお母様は領地に引っ越しをしてしまった。
「新婚さんの邪魔をしちゃいけないね。寂しいけれどまた会いにくる」
ぼそっと。シャノンがいちゃいちゃしているところを見たくない。ってお父様がナセル様に言っていたけれど、ナセル様は笑顔でだったわ。
そう言ってお父様とお母様が領地へ行ってしまって、今まで離れて暮らしたことがなかったから泣く泣くお見送りをしました。その際に爵位をナセル様に譲って、ナセル様がコレット侯爵になりました。
結婚披露宴と一緒にお披露目会もやっちゃおう! ということでそれはそれは盛大に開かれたパーティーでした。
どれくらい盛大かというと……王宮のパーティーと変わらない規模でした。
侯爵夫人と呼ばれるようになって数ヶ月……が経った頃。
「近頃眠くて眠くて仕方がないの」
ナセル様は王太子殿下を支えるために臣下として今日もお仕事で王宮に行って、夜遅く帰って来たのでした。早急に進めたい仕事があるとかで帰りが遅い日が続いた。
帰ってきたら必ず今日あったことを話する時間を設けている。夫婦円満の秘訣でしょう?
「ごめん。眠たかったら待っていなくてもいいから先に寝てて。もう少ししたら落ち着くと思うんだけど」
その言葉に私は、ふるふると頭を振る。
「ううん。待ってる。ナセル様の顔を見たいもの」
仕事で遅くなるのは王宮で必要とされているからだし、仕事は頑張ってもらいたい。楽しそうだもの。
「なんて可愛いんだ。シャノン! ごめん。もう少しだけ遅い日が続くと思うけれど必ず帰ってくるよ。シャノンの顔を見て同じベッドで寝ないと眠った気がしないんだ」
ナセル様の温もりを感じながら今日も眠りについた。
翌朝
朝食の際にベーコンの香りで吐き気がして食欲が出ない。青い顔をしていたら侍女が
「お医者様をお呼びします!」と言って執事長を連れて行った。
「寝ていれば治ると思うのだけど、過保護ね」
ソファで横になった。
「シャノン大丈夫? 心配だから私も今日は休むよ」
「大事な仕事なんでしょう? 私は大丈夫だから行ってきて。皆さんお待ちですし、お見送りは出来ないけれどここで許して下さいね」
そういうと頬にキスを落として「今日は絶対に早く帰ってくる」
手をギュッと握って後ろ髪を引かれる感満載で渋々家を出て行った。
寝ていれば治るのに大げさなんだから……
お医者様が来て最近の症状を伝え問診が始まりました。
「月のものが最後に来たのは?」
「えぇっーと……」
あれ? ……侍女が代わりに答えていた。
「症状を聞く限り恐らく妊娠しているかと思われます。まだ初期の段階で確実ではありません。身体を冷やさないように無理をしない程度に生活を送ってください。ご主人にはお伝えしたほうがよさそうですな。くれぐれも激しい運動などしないようにとお伝えください」
これはお医者様が侍女に言った言葉。もちろん言葉の意味を理解しているので恥ずかしくて仕方がないのだけど、お腹に手を当てる。全然分からなかった! もしかしてお腹に赤ちゃんが?
「──お嬢様っ! いえっ! 奥様おめでとうございます!!」
私が小さい頃から一緒にいてくれる侍女が言った。そうよね、おめでたいことよね。実感が湧かないの。だってお腹ぺったんこだもの。
「旦那様もお喜びになることでしょう! その前にしっかりと言い聞かせなくてはなりませんね!」
「あ、待って。ナセル様には私から言いたいの」
「もちろんです! 私は執事長とメイド長に報告をさせていただきます。私の時も奥様と同じで妊娠していたことに気が付きませんでした。ですからお気持ちは分かりますし、これは侯爵家の一大事です。安定期に入るまで一部の信頼できる人にしか言わない方がいいと思います」
「ふふ。ありがとう。私もそう思っていたところよ。あ! 領地のお父様とお母様にはまだ内緒にして欲しいと執事長に伝えてちょうだい。大袈裟になりそうだからちゃんと妊娠がわかってからにしましょう」
「そうですね。大旦那様と大奥様には申し訳ありませんが、そのように伝えてきます」
冷えない様にと私の肩にストールを掛けて侍女は報告の為部屋から出て行った。
「赤ちゃんがお腹にいるかもしれないなんて変な感じだわね。ナセル様は喜んでくれるかしら?」
その後うとうととしていたら、ナセル様が帰ってきたようで侍女に声を掛けられた。まだ夕方なのに本当に早く仕事を済ませて帰ってきたみたい。
起きあがろうとしたら扉が開いてナセル様が入ってきた。
「ただいま! 先生はなんて言っていた?」
急いで帰ってきてくれたのが分かる。髪の毛が少し乱れていた。
ナセル様がベットの端に腰を掛けたのを見計らって侍女が部屋から出て行った。
「おかえりなさいませ。あのね……まだ実感がないんだけどもしかしたら、赤ちゃんが出来たかもしれない」
「……え!」
ナセル様一言だけ?
「赤ちゃんが? シャノンのお腹に?」
「うん」
固まるナセル様
「赤ちゃん出来てたら喜んでくれる?」
は! っとした顔をして、すぐに
「もちろん! 嬉しいよ! 驚いて言葉にならなかった! ありがとうシャノン」
その後はお察しの通り動くなとか、段差に気をつけろだの、身体を冷やすなだのと世話を焼いてくれた。
しばらくしてお腹が少し膨らんできて妊娠が確実になったので、領地のお父様とお母様に報告したら飛んできた。
心配だからこの子が産まれるまで王都に滞在するんですって! ナセル様は今ある仕事を終わらせて長期休暇を取りたいからと、帰りが遅くなる日が続いたけれど、朝は必ず一緒に取ってから仕事へ行くようになった。
お腹が大きくなって腰が痛くなるとお母様がさすってくれて、私がお腹にいた時のことを話してくれて、やっぱりお母様は強いわね。と思った。
産気付いてもやはり頼りになるのはお母様。お父様とナセル様は扉の前でウロウロしていて気が散るからとお母様に追い出されていた。
何時間も苦しんだ先に産まれてきた我が子は女の子だった。
ナセル様は名前をずっと考えていたんですって。シャルロッテと言う名前が付けられた。
看護師さんが赤ちゃんを抱かせてくれた。体力は限界に近付いていたのに、この腕に赤ちゃんを抱いた時に嬉しくて、お母様に感謝の言葉を伝えた。
「お母様、私を産んでくれてありがとう」
こんなひどい思いをして私を産んでくれたのね。
「どう致しまして。わたくしはシャノンがわたくしの元に産まれてきてくれてありがとうって思ったわ」
「シャルロッテもありがとう。わたくしがあなたのママよ。隣にいるのはパパよ。抱っこしてもらいましょうね」
シャルロッテに見惚れているナセル様にシャルロッテを抱っこするようにと言うと
「え! 壊れてしまわない? こんなにちっちゃいのにいいの?」
触れたいけれど、触れるのが怖いみたいだった。
「シャルロッテちゃんのお世話は私一人では無理です。ナセル様も協力してくださらないと!」
決心した様にそぉーっとシャルロッテを大事に大事に腕に抱くナセル様。
「ちっちゃいな。私が君のパパだよ。よろしくね。可愛い私達の天使」
ナセル様が言った言葉につい笑ってしまった。お父様と同じことを言うんだもの。
あれ? あんなに恥ずかしいとか思っていたのに私自身もシャルロッテを天使だと思っている。
うーん。血は争えないわね!




