街でシャノンに会った(ミカエル視点)
マリに誘われて街へ行った。
休日に二人で出かけるほど正直言って仲がいいわけではないけど、積極的に誘われてまぁ、息抜きがてらいいかと思った。別にすることもないし、暇だし……
そこでまさかシャノンに会うとは思わなかった。
街歩き用のワンピースを着ていたシャノンは遠目で見ても目立っていた。一人では無さそうだったけど、まさか相手が殿下とは……嘘だろ? いやいや。シャノンも息抜きがてらだよな。暇だったから? 殿下に誘われて断れなかったのかもしれない。シャノンは人が多いところは苦手だったはずだ。
それにしても、つい最近まで、ほぼ毎日シャノンに会っていたのが嘘のようだ。
学園でシャノンは殿下や公爵令嬢と仲が良くSクラスの生徒という特別な存在。
学園内で、可愛いシャノンにファンはとても多い。みんなが口を揃えて可愛いだの、お近づきになりたいと言う。侯爵家ということもあり高嶺の花で一般の生徒は声を掛けることは難しい。僕は幼馴染だし声を掛けることはできるのに、同じ学園にいながらクラスが違えば顔を合わすことは、あまりない。
顔を見て話しかけようとしても、殿下や王太子殿下の婚約者である公爵令嬢が一緒にいるから話しかけることすらできない。
シャノンは僕のことが好きだと言うのに、殿下はシャノンに必要以上にスキンシップをとっているようだ。まるでいちゃいちゃしているように見え、学園の公認カップルといった感じだ。
シャノンも嫌なら嫌と言えば良いのに。嫌じゃないとか……?
はぁ。最近は母の勧めで見合いをしている。二人の令嬢と会ったけれど、見合い相手の令嬢と婚約をする気にはなれなくて断らせてもらった。父も母もいい条件の家ばかりだから嫡男として家を継ぐ気なら家のことを考えなさいと言った。
シャノンにあんなでかい口を叩いておいて、思ったことがある。
出会いって一体何だろう。シャノンのことは妹や家族としてしか見れないと言って[保留]なんてしておいて僕は一体何様のつもりなんだろうか。
学園でも令嬢に声をかけられることはあるが、気を使うし面倒臭いと思ってしまう。
それになぜか、マリという子爵令嬢がやたらと話しかけてきて、ランチに誘われたりする。
クラスメイトだから問題はないのだが、あるときマリが、ブツブツと
「確かここだったはず……」と言って木陰に敷物を敷いてランチの準備をする。木陰といえば聞こえがいいが、庭の隅っこだぞ? ベンチがある場所や噴水がある景色のいい場所はいくらでもあるのに、なぜこの場所を選んだのかさっぱり分からなかった。
すると僕たちの座った木陰の逆側で声が聞こえた。シャノンの声とおそらく殿下の声。
移動した方がいいのではないかとマリを見ると、ニヤリと笑いそのまま準備してきたサンドイッチを広げ出し、リンゴをわざと転がした! 何やってんだ! と思ったら、シャノンや殿下がいる場所へと向かった。
なにやら揉めているようだ……。出ていって嗜めることなど出来ないから、僕たちは黙って陰から見ていたら、公爵令嬢にはバレていて視線が飛んでき他のが分かった。
そのあと僕たちの中ではリンゴ事件と呼ぶことになる。
なぜ事件かというと、公爵令嬢の逆鱗に触れたからだ。
マリの家には大量のリンゴと子爵に手紙が届けられたようだ。内容までは分からないが公爵令嬢は王太子の婚約者。次期王妃だぞ! そんな方に目を付けられてどうするんだ!
子爵は血相を変えマリにマナーの教師をつけたと聞いた。ルイズ様とは仲良くなれそうな気がするのになぁ……。って。なんだ、妄想癖でもあるのか……? 殿下だけではなく公爵令嬢の名前も勝手に呼んでいるし! それにやたらシャノンのことを気にかけている。
「シャノン様ってどんな人?」
とマリが聞いてきた。
「シャノンは……可愛くて素直で優しい子だよ」
と答えた。これは本当のこと。もっといいところはある。努力家で親思いで誰に対しても優しい。笑顔が可愛い。いい匂いがする。
「嫉妬深いところは?」
シャノンが嫉妬?
「どうだろう。分からない。考えたことがないから」
「ふーん。じゃあ遊びに行こ。多分会えるはずだから」
「誰にだよ」
「本当は私がデートするはずだった相手よ!」
なんだよ、それは。相変わらず意味がわからない。僕は断ったんだけど、あまりにもしつこいから、最終的に分かったと言った。さすがに二人で出かけるのちょっと……と思いクラスメイトを誘ったが、急なことで用事があるからと断られた。そうか、用事があるといえばよかったのか……。次回からはそうしよう。そしてマリと出かけたんだが……。
「すみませんが、見てのとおり私たちはデート中です。邪魔をされたくないので、そちらの令嬢とどうか楽しんでください。お願いしますね」
ナセル殿下とシャノンがデート……。
学園で見せる爽やかイケメンな殿下の顔ではなく、心底嫌そうな顔を見せた(それでも笑顔)笑顔の下の威圧感? これに逆らってはダメだ。
あの笑顔を見ているだけで恐ろしい。シャノンはこの怖さに気づいてないのか……凄いな。流石のマリも静かになったくらいだぞ。
公爵令嬢からの抗議の手紙。次に殿下から抗議の手紙なんて行ってしまったら、子爵家は多分存続不可となる。それにうちまで……となったら、とばっちりじゃないか!
「……分かりました」
と言うと、シャノンと殿下は仲良さそうに行ってしまった。
マリとはもう友達でいることはできない! こんなの爆弾娘じゃないか!
「マリ、僕も行くよ。じゃあな」
「え! ちょっと置いていかないでよ!」
無理だ! クラスメイトだと思い今日は街歩きに付き合ったが、一緒にいると害でしかない!
なんだろう。シャノンに無性に会いたくなった。
久しぶりに家に行ってみようか。殿下との関係も聞きたい!




