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好きだと伝えたら、一旦保留って言われて、考えた。  作者: さこの


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17/31

不思議な令嬢マリさん

「美味しかったです!」

幸せな時間だった!

「うん、あの追いキャラメルがすごく良かった」

「ナセル様、甘いものはお好きですか?」

「普段は食べない。でも嫌いでもないってところかな」

「へー、知りませんでした」

もしかして昔、勉強が終わったあとにお茶をして、お菓子を食べていたのは私に付き合ってくれていたからなのかな……。美味しそうに食べていたから好きなのだと思っていた。それとも、成長するうちに味覚が変わったとか?

「シャノン、ごめん。ちょっとここで待っててすぐ戻るから!」

「はい」

どうされたのかしら? 忘れ物……っ感じではなさそうですね。久しぶりに街の雰囲気を、ぼぉーっとしながら見ていた。

「あれ、シャノン?」

呼ばれた先を見るとそこには……

「ミカエルと……えっと、花瓶の方?」

可愛らしい方でしたから、私服でもちゃんと分かりました。

「酷いです! まだ根に持っているのね」

ミカエルの腕に絡みつく花瓶の水の人。ミカエルは腕を解こうとしているけれど、気にしなくていいのに。確かランチの時間も一緒にいたから相当仲がいいようだ。

でも名前を存じ上げないからから、つい……

「申し訳ございません。お名前を伺っていなくて……わたくしはシャノン・ド・コレットと申しますの」

「マリ・ロルシーです!」

ロルシー……確か噂になっていた子爵家のご令嬢ですわね。なぜそんなに機嫌が悪そうなのかしら? 私が二人のデートの邪魔をしたから? ミカエルも幼馴染とはいえ、デート中に異性に声を掛けるなんて無粋な真似しなくてもいいのに……

「ロルシー様と、ミカ……、ではなくてロンゴ様はどうされたんですか?」

「デートです。ね! ミカエル」

笑顔のロルシー様となぜか困った顔をするミカエル。

「男女二人で出掛けたらデートでしょう!」

当然でしょう。と言わんばかりのロルシー様。

「仲がよろしいのですね」

休みの日に二人で出かけるくらいだから、仲がいいのは見てわかる。

「いや、単なるクラスメイトとと言うだけで、」

「仲良くさせてもらっています!」

ミカエルの腕をさらに絡ませるロルシー様。

「まぁ、学園で素敵な出会いがあったのですね! よかったですね」

「だから、そんなんじゃないって、シャノン、誤解だから」

またロルシー様の腕を外そうとしていた。照れているのかも。こんなミカエルの姿を見たことがなかったから新鮮だわ。

「シャノン、待たせた……ってなんだ?」

私たち三人の姿を見て、明らかに不信感丸出しのナセル様。

「わあ! ナセル様だ! こんにちは。こんなところで会うなんて、もしかして運命とか!?」

キャッキャとはしゃぐ花瓶の……じゃないロルシー様。

「……シャノン、行くぞ」

「ひど~い! ナセル様ったら。声をかけたのに無視するなんて」

「私の名前を気安く呼んで欲しくない。なぜシャノンは相手にするんだ。この二人は何でここに?」

「デートをしているそうです。とても仲がいいんですよ」

「シャノン、だからデートじゃ──」

「デートではありません!」

「? 先ほど男女二人で出掛けたらデートだと仰いませんでしたか?」

聞き間違いではないですわよね?

「気のせいよ! ね! ミカエル」

「僕は何度も言っている。デートじゃない!」

痴話喧嘩というやつかしら? 仲がいいと喧嘩をするとも言いますし。なんだか微笑ましく思えてしまいます。

「そうか。私たちはデートの最中なんだ。シャノン行くぞ!」

「え、えぇ。そうですね」

どんな方か分かりませんが、ロルシー様は少し変わった方なのかもしれません。

「それならダブルデートしませんか?」

やはりデートだったんですね!

「はあ。話になりません。隣にいるのは確かロンゴ伯爵のご子息でしたよね」

「はい。ミカエル・ロンゴでございます」

そういえばミカエルは、ナセル様と直接話をするのは初めてだったのね。

「すみませんが、見てのとおり私たちはデート真っ最中です。デートの邪魔をされたくないので、そちらの令嬢とどうか二人で楽しんでください。お願いしますね」

笑顔のナセル様だけど、ちょっと怒ってるみたい。言葉の端々が冷たいもの。

「……分かりました」

ミカエルのこんなにしおらしい姿を見たことがなかったから、少し驚いた。私の前ではいつも自信たっぷりだったから。

「よし、行こうシャノン」

「あ、うん。失礼します。ロンゴ様、ロルシー様」

手を取られて早歩きで二人から離れました。不思議な方ですよね。ロルシー様とミカエルはお付き合いをしているのかしら? 

「ごめん。まさか少し離れた隙に絡まれるなんて私のミスだ……。あの彼がシャノンのことを保留って言ったんだっけ?」

「そうでした! 色々ありすぎて、すっかりと忘れていました」

「忘れていたのかよ……こっちは気にしてたのに」

「え?」

「嫉妬ではらわたが煮えくりかえっている」

「嫉妬?」

「シャノンが好きな男だろ!」

「あ!」

「次はなに?」

「返事しなきゃ」

「返事? 何の? 誰に?」

眉を顰め少し機嫌が悪そうなナセル様。

「学園でいろんな人と出会って、それでもミカエルがいいならまた告白して欲しいって言われたの。でも告白したことは忘れて。って言わなきゃ。あのとき、ミカエルに保留って言われて考えたの。好きだったってことには変わりがないけれど、確かに視野は狭かったから、ってきゃっ!」

「うん。それは返事をしなきゃ、早急に」

気がつくとナセル様の胸の中にいた。ぎゅっと抱きしめられている。前が見えない

「苦しい……」

ナセル様の腕を叩いた。息ができない。

「あはは。ごめんごめん。嬉しくてつい。で、いつ返事するの?」

パッと離された。

「まだ決めてないけれど、近いうちには」

「私もその場に居てもいい?」

「え! なんで?」

「ダメ?」

「はい」

「ダメなの?」

「いいですよ。って返事をするわけないですよ。デリケートな問題ですからね」

「……それはそうだな。……デリカシーに欠けていた。ごめん」

「そろそろ帰りましょうか? 遅くなったらお父様に心配をかけてしまいます」

「あ、本屋に寄りたいんだ。兄上に頼まれた本を買いたい」

「本屋さんですか! いいですね! 行きましょう」

王都で一番大きな本屋さんに着いた。私が毎回楽しみにしているこの売り場は、ある仕掛けがあって楽しい。例えば、キャンディーにまつわる本が並べられていて、一緒にキャンディーの販売もしている。私はキャンディーを一つ手に取った。カラフルでキラキラしていてプレゼントに丁度いい大きさだった。私は一番小さな袋を一つ買った。

「お待たせ。なにそれ?」

「ナセル様。お願いがあります」

「お願い? シャノンの願いなら何でも聞くけど」

「ふふ。それは大袈裟ですね。これをマックスお兄様に渡して下さい」

「兄上に?」

ナセル様の綺麗な眉間に皺が寄った。

「はい。昔、マックスお兄様にね、よくキャンディーを貰いました。疲れた時は糖分が必要だって。いつもお兄様のポケットに入っていました。今は知らないけれど、すごく懐かしいと思って」

「えー。何だ、それは! 私は兄上からキャンディなんて貰ったことないよ」

ナセル様が驚いた顔をしています。

「先日はお忙しいのにお時間を取ってもらったお礼です。って伝えてください」

「私にはないのに?」

「ナセル様には別のものを用意しています。もう少し時間がかかります」

「ふーん。分かった」

「キャンディーもいりますか?」

「シャノンがくれるものはなんでも嬉しいよ」

「またそんなことを言って」

「本気だよ。でもそろそろ帰らないと侯爵に怒られそうだから、また今度改めて口説くことにする」

そして無事に家に帰ってきた。

お父様とお母様にどこに行ったか、なにをしていたかと矢継ぎ早に聞かれ少し疲れたのは内緒。

「シャノンちゃん、楽しかった?」

「うん、とても!」

「「そう」か」

お母様は嬉しそうで、お父様は寂しそうな顔をしていたのが印象的だった。

「あら? シャノンちゃん、その髪飾りどうしたの? 出かけるときはつけていなかったけれど、可愛いわね。とっても似合っているわ」

髪飾り? 付けてたっけ……侍女が笑いながら鏡を持ってきてくれた。

「本当だ……」

あれ? 一体どこで……私こんなデザインの髪飾り持っていなかったはず。

「お嬢様、殿下に抱きしめられていたときですよ」

こそっと侍女に耳打ちされて、かぁっと顔が赤くなるのがわかった。え、あのとき……?

「待て! 抱きしめられたってなんだ! そんな破廉恥なことをしているのか!」

「あら? 仲がいいのねぇ。シャノンちゃんもやるわね! さすが私の娘」

「ママは黙ってなさい! シャノン! パパはそんな娘に育てた覚えないからなっ! 殿下め! あれほど言ったのに」

お父様は怒りお母様は楽しそうだった。




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