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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
第二章
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千年前のテイアグロス

「そうだな、特に問題はないだろう。」

そう言うとレオは二人に話し始めた。


「千年以上前、この地にはもともと人間たちが住んでいた。あるとき、魔王が魔族を引き連れてこの地を襲い占領した。特殊な力を持つ魔族は人間たちから恐れられ、すぐに魔族の支配地となってしまった。大地は荒れ、空気は淀み、人々は魔族の犠牲となった。


そんな状況からこの地を救うため神界から降り立ったのが太陽神テイア様だ。テイア様の力でこの地は救われ、今のテイアグロスが興った。この神殿もあの王宮も魔族が支配する以前からこの地にあるものだ。丁寧に修繕や改築が施され、そこまで古くは見えないが、とても長い歴史が刻まれている。


ここにある資料はこの地が魔族の支配下となった時、国を守りたい者たちがなんとか打開策を見つけようと必死で探り集めた記録だ。それを先導したのが国を奪われた王家の者と昔から神に仕えていた神城の一族、そして必死に魔族に抵抗し、国の復興に尽力した今の国政における古参の家々だ。」


初めて聞く古の話を清一と杏那は興味深く聞いていた。遥か昔の惨状に立ちむかった勇気ある者たち。その者たちに想いを馳せると込み上げてくるものがある。ここにある貴重な魔族の情報も当時の勇気ある者たちが必死の想いで集めたもの。その思いを受け継ぎ、なんとしてもこの国を魔王から守らなくてはならないと、杏那は責任を感じるとともに決意を新たにするのだった。


「レオ様、貴重なお話をありがとうございます。この国の歴史としての伝承は太陽の女神様が魔王を討伐しこの地を救った、というところから始まっているものばかりでしたが、そんなにも長い歴史と陰の努力があったのですね。ここにある資料にもそのような歴史が隠されていたなんて、なんだかとても感慨深いです。」


また、杏那は昨日の一件でこの部屋にある書物の有効性を改めて高く評価していた。


「それに資料にあった魔法陣を無効化する祈り、実戦では初めて使いましたが、本当に効果がすぐに表れ驚きました。」

「効果が現れたのは杏那の神力も影響しているだろう。呪文は誰もが発動できるわけではないからね。」

「然様。驚くべき速さで効果が現れたということは、杏那の日々の精進と神力の賜物でしょう。」


研究熱心な杏那と、何を言っても褒めてくれそうな二人。

(あ、なんだか今日は褒められる日みたい。)

若干の気まずさを感じた謙虚な杏那は話を変えようと試みる。


「あの、レオ様はその頃から女神様と共に、この国を見守ってくださっていたのですか?」

「あぁ。そうだね。千年前は私もまだ幼かったが、そのころからテイア様にお仕えしていたよ。だから当時のことは実際に見ていたし、今でもよく覚えているよ。」


千年という長い間、レオはこの地をテイアと共に守ってきたのである。そう思うと、普段フランクに接してくれているレオに対して、清一と杏那はとても恐れ多い気持ちになるのだった。それと同時に杏那には当然思い当たることがある。


(千年の時を見守ってこられたということは、歴代の太陽の乙女様たちを今と同じようにお守りになったということよね。それなら、先代の乙女様のことも…。)


杏那は歴代の乙女たちがどのような人生を送ったのか気になっていた。どのように窮地を脱してきたのかなど目立った功績は神殿の文献に残るが、それ以外のところはそばで見ていた人に聞くのが一番だ。


そして中でも気になっていたのが先代の乙女、清一の娘で、豪の妻、清乃のことだった。清乃については記録がほとんどなく、おそらくはあるのだが、清一が隠しているようなのだ。神城家の一族の中でも清乃については皆話したがらない。清一も豪も自ら話してくれることはなかった。杏那は太陽の乙女としても神城家の一人としても清乃のことを度々気にかけているが、センシティブな内容になるであろうことは杏那にも分かるため、聞けずにいたのだった。そんな中、レオはおそらく、いや確実に事実を知っている。関係の近い清一や豪に聞くのは気が引けるため、まずはレオに聞いてみるべきかと杏那は思考を巡らせていた。


そんな様子を察したかのようにレオが口を開いた。

「杏那、歴代の太陽の乙女のことが気になるのか?」

「えっ!?」

杏那ははっとして顔を上げる。

「そんなに驚かなくても、ははっ。杏那は杏那だよ。誰とも比べる必要はない。いいね?」

「比べるだなんて、そんな…。」


杏那は気になっていたことを言い当てられた上、何だか上手く纏められてしまい、返す言葉が見つからない。それでもやはり、杏那の心の中に清乃のことが引っかかっている。それはいつか関わるかもしれないという勘なのか、単に一番身近な先代だから気になっているのか杏那にもまだ分かってはいなかった。


いつの間にかファイルを元の書棚に片づけていた清一が二人に言う。


「レオ殿、杏那、今日のところはこの辺にして、そろそろ行きましょうか。」


こうしてこの日の神殿訪問はお開きとなった。

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