表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
61/63

茶会事件の経緯

 中から入室を許可する国王の声が聞こえると、護衛の者が扉を開け、入室を促した。


(国王陛下のお部屋、初めてだわ。)


杏那は貴重な機会に緊張していた。部屋の中に入ると、更に左右に扉がある。入ってすぐの部屋には国王の執務机があるので、主に執務で使う部屋だろう。左手の部屋は奥に大きなベッドが見える。国王の寝室だ。そして入って右手の部屋に皆が集まっている。会議用の部屋ではないのだろう。大きなソファが三つ、それぞれにサイドテーブルが置かれている。国王は奥のソファに腰かけている。調度品は至る所に繊細な金の装飾が施され、とても豪華に整えられている。そして入ってきた三人に声を掛ける。


「まぁ、掛けなさい。」


すると香久耶はソファには座らず、国王の斜め向かい、コの字型に並んだソファに対して膝をつくと、三つ指をついて頭を下げる。

「お父様、申し訳ございません。今回の失態、全て私の責任でございます。取り返しのつかないことをいたしました。どんな処罰でもお受けいたします。ここにいらっしゃる皆さまにもとんでもないご迷惑をおかけし、醜態を晒しました。謝って済むことではございません。覚悟はできております。」

香久耶はもう震えてはいない。この部屋に辿り着くまでに心の準備をしていたのだろう。

「覚悟はできている、ということはすべて覚えているのだな?」

国王が尋ねる。

「はい、覚えております。」

「三人が来る前に、ここにいる者たちからおおよその経緯は聞いた。いくつか私の質問に答えなさい。」

「はい。仰せの通りに。」


「魔王の封印を解いたのはお前だな。どうやってあの部屋に辿り着き、封印を解いたのだ?」

「以前、商人から是非にと渡された願望成就の魔法陣だという紙を見つめていたら、自然とあの地下への通路が開き辿り着きました。部屋の前には土壁がありましたが、その魔法陣を押し当て手を重ねると壁は消え、あの部屋が現れました。私が手をかざすと、水晶から黒い靄が現れ、魔王が解き放たれました。」


「それはいつの話だ?」

「今から約一か月前のことです。」


「その魔法陣をお前に渡したのは誰だ?」

「北方から来たという商人です。実態は魔王の手下で魔族の者でした。」


「その者たちといつから接触していた?」

「半年ほど前、兄の代わりに商談を担当した際に初めて面会しました。魔法陣の紙はその時に渡されたものです。その後は魔王が私に乗り移ってから再び商人として王宮に来ました。」


「お前が自ら呼んだのか?」

「…はい。魔王の指示でしたが、私が再び商談に来てほしいと執事に調整を依頼しました。」


「お前は魔王とどんな話をしたのだ?」

「魔王を封印から起こしたお礼に願いを叶えてくれると、それで己の回復も早まると。また、目覚めたばかりで不完全なので身体を貸してほしいと。」


「魔王に意識を乗っ取られていた間の記憶はあるのか?」

「はい。魔王と手下の会話は全て聞こえていたと思います。今のままではあの女に叶わない、己の身体を取り戻しにいくと言っていました。」

ここまで話させると、国王は清一の方に話を振る。


「清一殿、これで参考になりましたか?」

「国王陛下、貴重な情報をご提供いただき、感謝申し上げます。誠にありがとうございます。そこまで分かれば、状況も彼らの狙いも明確です。」


国王は清一に向かって目で頷くと、再び香久耶の方を向く。

「それで、お前がそうまでして叶えたかった望みとはなんだ?」

「そ、それは…。」

香久耶は少し動揺したようだ。しかし覚悟を決め、言葉を続ける。

「お慕いする方とのご縁を結びたかったのです。」

「そうか。」


部屋にいる全員が事の行く先を心配そうに見守っている。そこで国王は再び清一に話を振る。


「香久耶は操られていたと思われるか?」

「その可能性はあるかと存じます。渡された魔法陣の図柄が分かれば良いのですが…。」

清一が魔法陣の図柄に言及すると、杏那は地下の部屋で香久耶の手を握ったときのことを思い出した。杏那が触れた時、香久耶の右手は焼けるように熱を帯びていたのだ。

「国王陛下、発言をお許しいただけますでしょうか?」

杏那が申し出ると、国王は頷いた。

「香久耶様、右手の手の平をお見せいただけますでしょうか?」


杏那の問いかけに香久耶は俯いたまま、右手を返し、平を見せる。するとそこには魔法陣の図柄が火傷跡のようになって残っている。

(やっぱり…。)

杏那が説明する。

「地下の部屋を隠す土壁を消したのも、魔王を解き放ったのもこの魔法陣と思われます。おそらくは、魔族の者が何らかの方法で香久耶様にこの魔法陣を取り込ませたか、地下の土壁を消すために魔法陣に手を重ねた時に写ったものと存じます。」


杏那が清一の方に視線を移すと、清一もその魔法陣を覗き込む。

「この図柄、確かに。国王陛下、これはこの魔法陣を持つ者の願望を強め、魔王の元へ導くように仕向けるものです。半年の間、徐々に王女殿下に影響したのでしょう。」


「そうか。今回関わった者の扱いについては、少し考える時間をもらおう。香久耶と真利耶は自室で待ちなさい。私が良いというまで、部屋から出ることを禁ずる。水宮殿はまずはその服を着替えよう。すぐに用意させるので、それまで来賓用の客室を使ってくれ。」

龍也の服は魔術に無理矢理逆らおうとした所為で至る所が裂けボロボロだった。


国王は香久耶、真利耶、龍也の三人に護衛とメイドをつけてそれぞれの部屋に送らせる。護衛には部屋から出さないように命じている。国王の部屋には国王と神官長、杏那たちが残った。


「清一殿、皆、今回のこと、迅速な対処に感謝する。茶会の方も丸く収めてくれたようだな。それで、今回のあの三人への対処について意見を聞かせてもらいたい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ