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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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茶会の記憶

 香久耶、杏那、豪は茶会が行われている広間に向かった。残りは国王の先導で、この地下の隠された部屋から国王の部屋に向かう。


 杏那たちが茶会の会場に入ると、招待客と給仕のメイドなど女性たちは皆青ざめ、ぐったりと座っていた。


「爺や、魔王がどんな風に生気を吸い取ったのか見ていなかったけれど、このまま家にお返ししては香久耶様が誤解されたり、王宮のお茶やお菓子に毒が入っていたなんて噂が流れるかもしれないわ。それは国王様にとっても不都合よね。お願いできるかしら?」


杏那は豪にこの会場にいる皆の記憶を修正するよう頼んだ。おそらく皆の記憶にあるとしても香久耶が魔王の口ぶりで急に魔術を展開したところまで。あとは皆生気を吸われて眠っていたはず。でもそんな記憶は香久耶だけでなく王家にとってもこの国にとっても大きな不都合になってしまう。給仕をしていたメイドの命も危ないだろう。そのことを理解している豪は杏那の頼みを承知した。


「分かりました。差し支えのないものに。」


「ありがとう、爺や。」


そういうと広間を締め切り、杏那が会場にいる女性たちに向けて祈りを捧げる。


『太陽の女神よ、天の光よ、闇を照らすは神の愛。太陽の光と温もりで満たしましょう。』


杏那は口の前で両手を組み、ぐったりしている女性たちに太陽のエネルギーを注ぎ始める。室内全体が陽だまりのような優しく柔らかい暖かさで満たされると、女性たちの顔色も徐々に良くなる。そこへ豪が左手の中指にある指輪の深紅の宝玉部分を少し擦り、重ねて術を掛ける。


「時の神よ、導く記憶へ整え給え。」


豪の指輪の宝玉から深紅の光が放たれると、その光の粒が会場にいる女性たちに優しく降り注ぐ。豪はここにいる全員の記憶を同じように、楽しく優雅な茶会を楽しんだ記憶に書き換える。深紅の光が女性たちに吸収されたことを確認して、杏那が光を収めると皆が徐々に目を覚まし始めた。座り込んでいたメイドも目を覚ますと、幸せそうな笑顔で軽やかに立ち上がり給仕に戻っていった。出席していたご令嬢たちは夢の続きかのように“なんだか夢のようにとても楽しいお茶会ですわね”と少しぼんやりした感じで言葉を交わし合っている。回復と記憶の修正は成功だ。


杏那は香久耶に閉会の挨拶を促す。

「香久耶様、閉会のご挨拶を。」


香久耶は王女らしく胸を張り、背筋を伸ばして会場前に歩みを進め挨拶をした。こうして茶会の方は無事に閉会となった。


 閉会の挨拶を終えた香久耶と杏那、豪は招待客の退出をメイドたちに任せ、香久耶の先導で国王の部屋に向かう。途中、香久耶は何も話さない。


(香久耶様、このご様子ということは全部覚えていらっしゃるのね。気まずいわよね。国王陛下も本来なら謁見の間で話を聞くはずなのに、国王陛下の執務室にお呼びになるなんて、この事態を相当重く受け止めておいでだわ。話の流れ次第では私たちも咎を受けかねないわね。)


神殿側が魔王の動きに気づき始めていたことは国王に伝えていた。ならば”事が起こる前に王女である香久耶を守れなかったのか”と責められても不思議はないのだ。しかし杏那たちも魔王に操られているのが第一王女の香久耶であるとまでは分かっていなかった。そんなことを考えながらも杏那は香久耶に気づかれないように気を付けつつ様子を窺っていた。


 国王の部屋の前には護衛の者が扉の両脇に立っていた。香久耶たち三人に気づくと敬礼をして室内に呼びかける。


「王女殿下並びに神殿の遣いの者がご到着です。」


すると中から重厚感ある低い声が聞こえる。


「入れ。」

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