王女の務め
王宮の地下に戻ると皆がレオの帰りを待っていた。
魔王を封じた所為か、魔族が立ち去った所為か、魔力の循環する檻も、真利耶の生気を吸い取っていたチョーカーも消え、真利耶も意識を取り戻していた。
真利耶は生気を吸われ心身が冷え切っていたが、レオが戻ってくる前に杏那が太陽のエネルギーを注いで回復させ、真利耶の肩を支えていた。龍也は、状況は飲み込めているようだが複雑な表情を浮かべている。香久耶は俯いていて動かないが、万が一逃げられないよう理世がそっと肩に手を置いている。豪と廉は水晶の置かれていた台座をはじめ部屋の中を念入りに調べていた。
そこへレオが戻って来た。
「すまない、魔法陣の展開による空間移動で逃げられてしまった。」
魔族が魔法陣による空間移動を図るだろうということは杏那たちも予想していた。
(王宮には魔族の空間移動を防止するような結界が必要ね。この点も後ほど神官長様と相談しましょう。でも今は…。)
「レオ様の所為ではありません。それで、どうしましょうか…。」
杏那は香久耶、真利耶、龍也を見て皆に意見を求める。
「王族の方が関わっておられる。今回のことは国王様にご報告し、ご指示を仰ぎましょう。」
豪のまっとうな意見に、皆が頷く。
「でも国王様への謁見は…。」
杏那が言いかけると、二人分の足音が聞こえてくる。
「話を聞こう。太陽の乙女よ。」
現れたのは国王と神官長だ。太陽の乙女の存在は王族の中では国王のみが知っている。そしてその活動は神官長から国王に適時報告が成されているのだ。そうすることで王家と神殿の良好な関係を保ち、神殿側は謀反を起こす企てのないことを証明している。今回も神占に魔王の兆しが現れたこと、王宮での茶会で事が起こりそうであることを、神官長から国王に報告し、神官長の勧めで、魔王を封じた水晶が保管されている地下の部屋を確認しに来たところだったのだ。
「国王陛下…!」
杏那を始め皆が国王に最大の経緯を表す礼の姿勢を取る。
「まずは、場所を移そう。それと話を聞く前に香久耶よ、茶会を終わらせてきなさい。必要な者は共に行ってくれ。内密の話になる。私の部屋で待とう。」
国王陛下のお言葉を受け、神官長の清一が返事をする。
「国王陛下、ご配慮に感謝申し上げます。杏那、月城殿、頼みますよ。」
神官長の命を受け、杏那と豪は立ち上がるが、香久耶は座り込んで俯いたままだ。その様子をみた国王が言葉をかける。
「香久耶、何をしている。第一王女としての務めを果たしてきなさい。話はその後だ。」
国王の言葉に、香久耶は立ち上がりドレスの裾をつまんで挨拶する。
「承知いたしました。」
香久耶の声に力はなく、手は震えているようだった。




