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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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王宮の地下で

 魔法陣により空間を飛ばされ、杏那はその衝撃で地面に膝をついた。辺りには灯りがなく、窓もないようだ。陰鬱としている。杏那が飛ばされた場所は魔王が封じられていたあの部屋だ。そこへ少し遅れて香久耶がやってくる。手には小さなランプを持っている。杏那はその光を頼りに辺りを見渡すと驚きの光景が飛び込んで来た。


(真利耶様!それに水宮様まで!)


杏那から見て右側には魔力の循環が見える檻があり、その中に真利耶と龍也が捕まっている。真利耶は眠らされているのか今のところ無傷だが、首に魔力の通うチョーカーのようなものがある。おそらくこれで真利耶の生気を吸い取っているのだろう。龍也の方は脱出を試みたのか服は至る所が裂けている。龍也の方も気を失っているようだ。


(真利耶様のお願いしたいことって、香久耶様を止めてほしいということだったのね。でもこの状況、香久耶様が魔王ということなの?いえ、違うわ。魔王は封じられていた。おそらく封じを解いてしまったのが香久耶様。魔王に利用され操られていると考えるのが妥当かしら。)


杏那は少し後ろを振り返ると護符の貼られたガラスケースを見つける。香久耶に気づかれないようにガラスケースを注視すると中には透明の水晶が置かれている。


(レオ様から聞いた逸話通りだとしたら、あれが魔王を封じていた水晶かしら。)


杏那が考えていると、香久耶は持っていた扇子で杏那の顎を上げ、顔を近づける。

「水宮様に近づくなんて許しませんわ。」

「えっ?」

杏那が考える間もなく、香久耶の瞳の色が紫色に変わる。そして香久耶の身体から重厚で威厳ある男の声が聞こえてくる。


『あぁ、ようやく少し回復した。これだけの人数の生気を一度に吸い取れるとは…こういうのは好みではないが応急処置としての回復には効くものだな。魔力の強い者はいないが、それなりには力を回復できそうだ。それで、この女がお前の宿敵か。』


紫の瞳が再び杏那を覗き込む。


『こんな小娘に嫉妬とは。まぁいい。おかげで私の力は回復するのだからな。それでこの女をどうしたい?』


(やっぱり香久耶様の中に魔王が入り込んでいるようね。意識まで乗っ取られている。それに“これだけの人数の生気を”ということはおそらく、あの会場にいた女性たちの生気を何らかの方法で吸い取ったようね。)


杏那は視界の隅と気配でレオ、豪、理世、廉が近くにいることを確認する。レオが事前にこの部屋を見つけ、伝達しておいてくれたのだった。


『ふん、まぁ良いだろう。お前の好きにさせてやるさ。お前の望みを最高の形で叶えるためだからな。やれ。』


意識の中で香久耶と会話をしているであろう魔王が命じると、暗闇の中から黒のローブにフードを目深に被った三人の男が現れ、その内の二人が杏那を押さえつけようと飛び掛かる。


しかし何者かに妨害され、杏那には触れることもできず、後退った。


そしてその弾みでフードが捲れ、顔が露になる。青白い肌に黒髪の若い男。北方からの商人として入り込んだ魔王の手下だ。


「うっ!!なんだこいつ、どこから入った!?」


杏那の前に立ちはだかったのは廉だ。剣を振り、二人の男を撥ね退けた。致命傷にはなっていないが、二人の男はそれぞれ腕と足を押さえている。


「杏那、大丈夫か?」

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