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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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北方からの商人

 杏那たちが令嬢たちの呪いを解いている頃、王宮では香久耶が窓の外を眺めて不敵な笑みを浮かべている。その目は普段の薄茶色の瞳ではなく、魔王の紫の瞳になっていた。


『ほう、私の魔術を解除するとは何者だ?…ん?この感じ、もしや…こんなにも早く現れるとはな。楽しみが向こうから近づいて来るか。だが、今の力では及ばぬ。早くこの女の望みを叶え、力を取り戻そう。明日には我が従者も整うだろう。』


香久耶の瞳がすっと薄茶色に戻る。そして香久耶は明日の来客リストに目を通す。


「明日は北の商人の来訪ね…。これで私の望みも叶うわ。」


 翌日、王宮には北方からの商人という一行が訪れていた。一行は五人の男で構成され、警戒されないためだろうか、皆、品の良い黒のスーツを着ている。年齢は二十代から三十代くらいに見える。若々しく礼儀正しいが、皆少し青白いの肌に黒髪で太陽が苦手そうな雰囲気である。荷物は勿論、警備の騎士たちに中身を確認されるが、宝石や外国の書物など怪しいものは見当たらない。難なく検閲を通った一行は香久耶の待つ応接室へと通された。


「香久耶王女殿下、この度はお招きいただき、ありがとうございます。再びお目に掛かれて光栄にございます。」

机を挟んで、香久耶の向かいに座った男が丁寧に挨拶をする。

「こちらこそ、遠方よりお越しいただき感謝いたします。」

「早速ですが、希少価値の高いものがございます。内密にご紹介したく、もしよろしければお人払いを…。」

商人の男は香久耶に人払いを促すと、香久耶はそれに応じる。

「極秘の商談です。下がりなさい。」


姫一人を残すのを渋る侍女たちであったが姫の命令とあって逆らえない。部屋には香久耶と商人の男五人だけになった。


すると、香久耶の瞳が紫に変わる。そして品よくソファに腰かけていた姿勢を崩し、足を組んでソファの背にもたれる。それを見た商人たちは歓喜の笑顔を浮かべている。


「魔王様、再びお目にかかれて光栄でございます。この日を心待ちにしておりました!」

『やはり、この娘にあの魔法陣を渡したのはお前たちだったか。よくやった。力が戻った暁には褒美を取らせよう。何が欲しいか考えておくといい。』

「魔王様、なんと寛大なお言葉!恐縮にございます。ところでなぜその娘の身体に入っておられるのですか?」

『目覚めたばかりで完全ではないことはお前にも分かるだろう?それにこの娘は王女だという。この姿の方が今は好都合だろう。勿論、力を蓄え、己の身体を取り戻すさ。』

「然様でございましたか。」

『では早速、計画を確認しようではないか。』

「はい!」


 北の商人は人ではない。魔王に仕える魔族の者。魔王が封じられてからずっとその開放を望み、封じられた水晶玉を探していたのだ。千年以上の時を経て、ようやく王宮の地下にあると目星をつけた。もっと前から気づいてはいたが上手く近づけずにいたのだ。王室の者にも度々接触してきたが、封印を解きに動くものが現れなかったし、王宮の地下とあって忍び込んで探すこともできなかった。


あの魔法陣は魔王の元に導かれるためのもの。強い欲望を持つ者に反応し、どんな障害物も越えて魔王の元に導かれる魔法陣なのだ。


しかし商人たちもこれほど上手くいくとは思っていなかった。せめて水晶の場所に辿り着ければ良いと思っていた。それが水晶の封印まで解き、自らの身体を貸してくれている。予想以上の成果に商人たちは浮かれている。


 水晶玉から解放されたばかりの魔王はまだ万全ではない。千年近く封じられ力は弱まり、香久耶の身体を借りている状態だ。自らの身体を取り戻さねばならない。香久耶の意識を乗っ取れる時間も限られている。完全復活には程遠い状態だ。


 魔王と従者たちはこの後の計画を確認する。その計画が成功すれば魔王は僅かでも力を回復できるだろう。

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