魔力の痕跡
神城家に帰宅した杏那が就寝の準備をしていると、扉がノックされた。
「杏那、まだ起きてる?」
扉の向こうから聞こえるレオの呼びかけに、杏那はすぐに答え、扉を開けた。
「レオ様、どうかなさいましたか?」
扉を開けると、杏那と同じく就寝準備を済ませ濃紺のガウンを着たレオが立っていた。長身にサファイアの瞳、そして長い白銀の髪、素晴らしい美貌だ。
(レオ様、相変わらずお美しい…。)
杏那が見惚れていると、レオが声をかける。
「今日は短時間の内に、何度も力を使ったから大丈夫かと思って様子を見に来たんだ。」
「ご心配くださったのですね。ありがとうございます。慌ただしくはありましたが、なんとか。それに一人一人にかけられた術はそれほど強くありませんでしたので。」
「そうか。まぁ、あれくらいでも力を持たない生身の人間には十分という考えだったのだろう。」
「あの、レオ様、解術の時、少し気になることを感じたのです。」
「なんだろうか?ぜひ聞かせてくれ。」
二人は杏那の部屋のソファに腰かけ、話すことにした。
「実は、祈りを捧げ呪いの力を取り除こうと力をかけたとき、以前にも感じたことのある感覚だったのです。力を使うとき、対象によって私が感じとるものもいつも異なります。今回は過去にも感じたことのあるもの。つまり、今回の呪いの根源に似た力を以前にも浄化したことがあったのです。」
「というと魔王の力を感じたのは今回が初めてではないと?」
「はい。そして過去に感じた事象というのが、レオ様を浄化したときなのです。レオ様とお会いしてすぐに龍神様のことがあり、レオ様のあの時のことなかなかお話する機会がありませんでしたが、もしかしたらレオ様があのようなお姿になられたことと、魔王の力は何か関係しているのではと思ったのです。」
レオは腕を組み、右手を顎に当て考えている。
「確かに…言われてみれば…あの時僅かに魔王の気が入っていたのか…?」
「あの、レオ様、レオ様の身に一体何があったのですか?」
杏那は心配そうにレオを見つめている。
「杏那、今日はもう遅い。僕がなぜ杏那に浄化をしてもらわないといけなくなったかは、後日ちゃんと話をしよう。実ははっきりしないことがあってね、探りを入れているところなんだ。でも杏那の感覚がヒントになって、真相に近づけそうだよ。ありがとう。」
レオはそう言うと優しく微笑んだ。
「レオ様…。」
杏那はレオが回復したら聞こうと思っていた、初めて出会った時の状態の真相を他の事案が忙しいからと後回しにしてしまっていたことを反省していた。
「レオ様、私はいつもレオ様に助けていただいてばかりです。レオ様もお一人で抱え込まないでください。」
杏那は今日のことでレオを浄化した時のことを思い出し、レオの苦しみに想いを馳せ落ち込んでいたのだ。そんな杏那の浮かない表情を見たレオは杏那の前に跪いて杏那の手を握る。
「杏那、太陽の乙女、君にそんな顔は似合わない。君のことを守るのが僕の使命だ。あの時のことも時がくれば話そうと思っていたよ。だから心配せず、今日はもう休もう。」
そういうとレオは杏那を抱きかかえ、ベッドに連れていく。そっとベッドに横たえると、優しく布団をかけてくれる。
「レ、レオ様…じ、自分でできます!」
杏那は頬を染めながら慌ててレオに抗議する。
「杏那、おやすみ、また明日ね。」
レオはそういうと杏那の額にキスをして灯りを消し、静かに部屋を後にした。




