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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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稽古

 稽古の準備をした理世はスパイ任務用の服である黒のボディースーツにブーツ、淡く美しいウェーブがかった金髪を高めの位置でポニーテールにしている。手には黒い手袋、と見るからにやり手のスパイだ。理世が準備をしていると、おもむろに杏那が話しかける。


「そういえば、理世さんがあらゆる武芸に秀でているのは知っていたけど、龍神様がいっていた“武神の娘”っていうのはどういうことなの?」

「言われてみれば、そのようなことをおっしゃっていましたわね。実は私もまったく心当たりがありませんの。あの時は話の腰を折っている場合ではありませんでしたから聞けませんでしたし…。武芸が得意なのを瞬時に見抜かれたのではないでしょうか?」

「そう…なのかしらね。」

「あっ、もしかしたら本家のことかもしれませんわ。松崎は本家である武葉家の分家なのですが、その武葉家の先祖が武神という言い伝えがあるのです。でもあの短時間でそこまで見通すなんて、龍神様ってやっぱりすごいですわね。」


龍神の一件を解決した際、理世は龍神から“武神の娘”と呼ばれていたのだった。しかしそのときは龍神に関わる一斉の憂いを晴らすべく、宝珠に隠された真実を解き明かすのが優先で、龍神のその発言には言及しなかったのであった。


「さてと、準備は整いましたわ。廉様、始めましょう。」


そう言うと、今回は稽古用のサーベルを持って庭に出る。木刀は少し重いので理世に合わせサーベルにしたのだった。豪もまた審判をすべく共に向かう。杏那はやはりサーベルが飛んでくると危ないからという理由で庭の見える一階応接室から見学となった。


 廉と理世がサーベルを構えて対峙する。二人とも稽古とは言え真剣な眼差しだ。


「始め!」


豪の合図で打ち合いが始まる。廉は女性相手ということもあり、少し手加減気味に様子を見ようとしていたが、すぐに手加減不要であると思い知る。理世の踏み込みに廉は一方下がってしまったのだった。


「廉様、手加減は不要ですわ!女性とは言え、殿方と対等に渡り合えるほどの訓練をしてきておりますのよ!」


理世の剣術は軽やかで鋭い。受けたかと思うと、すぐに次の一手が届く。理世のペースにはまった廉は防御で手一杯の状況だ。


(くっ…理世さんってこんなに強かったのか!さすがスパイ一族の精鋭…)


理世は剣のスピードを緩めずに廉に話しかける。


「廉様、私、廉様にお聞きしたいことがございますの!」

「なんでしょうか?」

廉は剣を弾き返しながら返事をする。

「神殿でのあのご発言、通学中のエスコート、廉様の態度は杏那様に本気と受け取ってよろしいのですか?」

「えっ?」

廉は一瞬、剣を止める手が止まった。


理世も合わせて自身の剣を引き、一歩下がって間合いを取ると剣先を廉に向ける。


「あれだけの態度、本気でなければ杏那様がどれほど傷つくか分かっていらっしゃいますか?受け継いだ力や杏那様の家柄、立場、神力が目的ではなく杏那様ご自身を心から愛し大切に想っていらっしゃる、これから守り抜いていく、そういった覚悟はできていらっしゃるのですか?」


廉が即答できずにいると理世がサーベルを握り直して攻め込む。


「覚悟がないなら、この私が許しませんわよ!」


そういって理世は廉のサーベルを弾き飛ばしてしまった。


「そこまで!」


豪の合図で稽古としての勝負は終了となった。理世は弾かれたサーベルを拾って片づけつつ廉に言う。


「動揺させてしまいましたわね。でも杏那様が傷つく姿はもう見たくありませんの。それに廉様が本気なら私は喜んで応援いたしますわ!」


理世ははつらつとした笑顔で廉に微笑みかけた。


(“傷つく姿はもう見たくない”ってどういうことなんだろうか…。)

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