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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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当主同士仲良く、そして次なる騒動の予感

 水宮家との神殿での打ち合わせから三日後、神城家が経営する高級料亭の一室には神城家当主・光一と水宮家当主・龍幸の姿があった。


水宮家は表向きにも礼儀を通すため、会食の席を設けたのだった。お礼は早い方が良いということで、神殿での打ち合わせ後すぐに神城家に連絡をとり、光一の予定が空いていたこの日に開かれた。


「神城さん、本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。」


龍幸は緊張した面持ちで礼儀正しく光一に挨拶をする。光一は八十五歳、龍幸は五十二歳、年上で幅広いビジネスを手掛け成功を収めている名家の当主相手とあって緊張するのも当然である。


「水宮さん、本日はご丁寧にありがとうございます。先日は兄の方にも会いに行っていただいたとのこと、わざわざ私の方にまでお気遣いをいただきましたね。」


光一は生粋のビジネスパーソンとあって年下の龍幸に対しても驕ることなく礼儀正しく接する。光一は高齢だが、身なりにも気を遣い若々しく見える。そしてその目や表情には当主としての厳しさだけでなく、ビジネスで培ってきたであろう人間力が滲み出ている。


「いえいえ、とんでもございません。先日は当家の治める土地の私的な儀式に人手が足りず、お兄様の清一さんに頼み込みましたところ巫女様にお手伝いをいただけることとなり、大変助かりました。」


部屋の外では誰が聞いているか分からない会食の席、龍幸は先日清一と龍臣が打ち合わせてきた建前を使ってお礼を述べつつ、本当に伝わっているのか光一に目配せをした。すると光一はちゃんと分かっているという感じで、優しい表情で微笑みながら頷いている。


「清一兄さんからも聞いておりますよ。お役に立てたようでよかったです。」


穏やかな光一に安堵しつつ、龍幸は用意していた話を持ち掛ける。


「それでお礼と言ってはなんですが、今度、儀式用の装束を何点か神城さんの呉服店で作らせていただいてもよろしいでしょうか?」


この言葉にビジネスパーソン光一の目はきらりと輝く。


「おぉ、今なんと!?装束を発注いただけるのですか?それはそれは、大変光栄です。ぜひ詳細をお聞かせいただけますか?」


神城家は乙女の活動を支えられるだけの財力・知力・人脈を有すべく幅広いビジネスを展開している。呉服店をはじめとする服飾分野はその中でも神城家のビジネスの柱を担っている。思いがけず発注の話をもらった光一は声を弾ませている。


龍幸の気の利いたお礼により会話も弾み会食は盛り上がった。会食も終盤、光一はおもむろに話始める。


「これまで互いにあえて距離をとってきた家同士の私たちが、このように会話ができる日がくるとは嬉しいことです。水宮さんもご存じでしょう。昔は私もそれが伝統だと思っていました。勿論、古の約束を違える気は毛頭ありませんが、近しい力を持つ家同士、必要な時には助け合うことも必要だと思うようになりましてね。それに今回のように発注をいただけるなんて、本当に嬉しい限りです。お役に立てることがあれば、またいつでもご連絡ください。」


「神城さん、実は私たちも同じように考えておりました。ぜひ今後も交流の機会をいただければこちらこそ嬉しい限りです。」


こうしてお礼の会食は終始和やかに幕を閉じたのだった。



 会食から数日が経った頃、杏那たちの通う学園ではある噂が広まり始めていた。女生徒たちが至る所で会話をしている。ある日の休み時間に未莉愛が杏那に小声で話掛ける。


「杏那様、ごきげんよう。あの、つかぬ事をお聞きいたしますが、お噂は本当なんですの?」


杏那はきょとんとして未莉愛を見返す。


「未莉愛様、ごきげんよう。噂というのは一体なんでしょうか?」

「やはりご存じなかったのですね。そうだと思いましたわ。」


杏那は学園で誰の陰口も悪口も言わないし噂話の輪にも入らない。不思議と陰湿なものが近づいてこない体質だった。というよりは杏那がいると自然と会話は明るく前向きな方向に進むのだ。そんな杏那をよく理解している未莉愛が心配して教えてくれる。


「実は、杏那様と占術院の後継者、水宮龍也様がご婚約されるというお噂が出ておりますの。」

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