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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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思いがけない提案

 神城家に伝手があったという驚きの展開に龍也は驚いて龍臣に尋ねる。


「神官長といえばご高齢で滅多にお会いできないお方と聞きますが?」


「その通りじゃ。高齢でとても高貴なお方。我々と同じく異界の存在が見えるお方で、異界の声に耳を傾け神殿で静かに暮らしておられる。神殿の運営はその部下たちに多くを任せているらしい。昔、私は修行が上手くいかないと度々神殿裏手の森に行き、落ち込んでいたのだ。そんなとき、声をかけてくれたのが清一殿じゃった。当時、私が十二歳。清一殿は二十六歳だと言っていたな。子供の私の目から見ても、清一殿は一目で特別な力のある方だとすぐに分かった。清一殿のそばにいると陽だまりのように温かで、空気は澄み居心地の良いものじゃった。そしてまた、私の悩みもすぐに見抜かれてしまった。清一殿は私の悩みを聞き、相談に乗ってくれていたのじゃ。年月が過ぎ、私も家同士の立場や政治的な兼ね合いがあることを学ぶ中で次第に疎遠にはなってしまったのじゃがのぅ。」


龍臣は当時を思い出し、懐かしむような表情で語った。


「神城家との伝手といったらこれくらいしかなかった。でも清一殿なら私からの突然の便りも無碍にはなさらないだろうと思って、昔の思い出話と御礼と共に太陽の乙女の力が必要だということを少しぼかして手紙を書いた。そこにもし必要ならお見合いということにしていただいてもこちらは構わないと、お見合いのカードを同封したのじゃ。」

「そういうことでしたか…。そのカードを廉くんが知っていたということは、あのお嬢さんにも届いたということ、清一様がお渡しくださったということですね。」


まさかの伝手に驚きつつも、心温まるエピソードに和む三人。


「では、その清一様を頼りに?」


龍也が言うと、龍幸がそれを遮る。


「いや、しかし、神城家の現在の当主はその弟君、光一殿。今回のお礼は清一殿を頼りにできるとしても、今後のことは光一殿を通すべきでは?そもそも光一殿は太陽の乙女の力をご存じなのか?」

「そうじゃな。関わりがほとんどない間柄故、そのあたりのことは分からぬ。勝手に動いて恩ある神城家の内情を乱すことは避けたい。まずは、清一殿やあのお嬢さんたちと表向きどのような話にするか話し合うのが良かろう。おそらく向こうも同じことを検討しているはずじゃ。ご当主への話はその後でも遅くはないだろう。」



 龍神の一件があった翌週末、神殿に水宮家先代当主・龍臣と龍也の姿があった。龍臣はまだ万全でないのか、杖をつき、龍也が支えている。神殿は国の守護神である太陽神に民が祈りを捧げる場でもあるので、水宮家の者が訪れても不思議はない。龍臣たちは神官に一際豪奢な扉の前に案内される。白い扉の周りやドアノブには繊細な彫刻が施され、金色に輝いている。扉の前に着くと、神官が中に声をかける。


「お連れ致しました。」


中から扉が開かれ、上位の神官である周一が迎え入れる。


「ようこそおいでになりました。どうぞ中へ。」


二人が中へ入ると扉は静かに閉じられ、先ほど案内してくれた神官は来た道を戻って行ったようだった。中に入ると、広くゆったりとした白を基調とした室内で、中央には二十人は余裕で席に着ける大きなテーブル、ふかふかのクッション付きの椅子が並んでいる。そしてそのテーブルには予想していた面々がすでに揃って着席していた。一番奥に座っている、高齢の男性がゆっくり立ち上がると龍臣たちに声をかける。


「ようこそ、太陽神の神殿へ。さぁ、こちらへ来てお掛けなさい。」


周一の先導でその高齢男性のもとに歩いていく。高齢男性は髭の白さや目じりの皺などから高齢であることを窺わせるが、恰幅の良い健康的な外見で龍臣よりも若々しく見える。その男性と目が合うと龍臣は目を潤ませている。龍臣は思わず高齢男性の手を取ると、手に額がつくほど深く頭を下げている。そしてそれを龍也が支える。


「清一殿、ご無沙汰しております。突然の便りにも関わらず、ご厚情、感謝しております。」

その様子に少し驚きつつも、その高齢男性は、握手していない方の手をそっと龍臣の肩に乗せる。

「龍臣殿、さぁ顔をお上げなさい。何十年振りでしょうな。またこうして話ができるとは嬉しい限りですぞ。」


そう、この高齢男性こそが神殿で最も偉い神官長。神に最も近い立場にいるお方であり、神城家当主の兄、神城清一だ。清一は龍臣を支える龍也に視線を移すと声をかける。


「君は龍也くんだね。君の噂は良く届いているよ。呪術師界を席巻している実力者だとね。君もよく来てくれた。さぁ、二人ともお掛けなさい。」


龍也は“いえ、そんな…”と謙遜しながらも挨拶し、龍臣を椅子に座らせ、自身も隣の椅子に腰かけた。向かいの席には杏那、レオ、理世、豪、廉が座り、周一は清一のそばに控えている。この日は龍臣が事前に清一に頼んで、外部から怪しまれずに話し合える機会を用意してもらったのだった。皆が席に落ち着いたところで清一が話を始める。


「さて、今日は皆も知っての通り、先週末にあった龍神殿の一件について話し合うために皆に来ていただいた。事の詳細については、双方にとって詳細は明かせぬ極秘事項になるだろう。しかし、今回のことで龍神殿の恩人となった杏那たちの交流を妨げるのは避けたい。水宮殿も今後は両家が上手く交流できる関係性を望んでおられる。龍臣殿、何か良い考えはあるだろうか?」


「あの、太陽の乙女様のことは、全て極秘と心得ております。一方で、例えば今回、水宮家の治める土地の私的な儀式に人手が足りず、水宮家が神殿に頼み込んで、巫女様にお手伝いをお願いしたところ快く応じてくださった、そこから交流が始まった、くらいの話とすればそこまで怪しまれるものにはならないかと思いますが、いかがでしょうか?」


「うむ、確かにそれなら太陽の乙女の力に言及するものではないし、水宮殿のご当主が良しとするのなら、こちらに異論はないだろう。杏那どうだ?」

「はい、私も異論ございませんわ。お気遣いに感謝いたします。」


杏那は龍臣に軽く頭を下げた。


「ありがとうございます。ちなみに、現当主・龍幸から神城様のご当主、光一殿にもご挨拶をさせていただきたいのですが、問題ないでしょうか?」

「さすが龍臣殿、配慮に感謝する。あのお見合いのカードを杏那たちに渡したのも光一だ。光一も今回の件に一役買っているので挨拶に行っていただければ表向きにも筋が通るでしょうな。」


清一は龍臣の気遣いに嬉しそうであるが、光一が一役買っていると知って、龍臣は驚いている。龍臣は気になったことを恐る恐る質問する。


「光一殿が、そうだったのですか…。あの、差し支えなければですが、太陽の乙女様のことは神城家の皆様が知るところなのですか?あっ、不躾に申し訳ありません。お答えいただく必要はございませんね。」


恐縮する龍臣を見て、清一は一瞬困惑したが、すぐに返事をする。


「そのこともお伝えしておく必要がありましたな。実のところ、神城家の中でもこのことを知っているのは極一部の人間。光一は勿論当主ですから知っていますよ。ですが、この件をお話になる際は、どうかよくご注意ください。光一にも先ほどの建前の話で十分に伝わりますから。」


「その点お伺いできて助かりました。勿論、無暗にこの件には触れませんので、ご安心ください。」


 こうして事の建前と後日、水宮家当主・龍幸が神城家当主・光一を訪ねお礼をするということで表向きにも筋を通すことが決まった。これでお開きかと思われたとき、龍臣がまたしても控え目に発言をする。


「あの、差し出がましいようですが…、杏那お嬢様のご婚約はその…もしよろしければ、杏那お嬢様のお相手に当家の龍也はどうでしょうか?」

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