解決までの真相
杏那の考察を聞いた周一は感心した。
「そうだったのですか。相変わらず素晴らしい考察、お見事でした。レオ様の情報網も素晴らしいです。レオ様は杏那様が学園に行かれているとき、熱心に情報収集をされていらっしゃいますからね。」
周一は杏那とレオに賛辞を贈った。レオは予想外に影の努力を暴露され、少し照れているようだった。
「そうなのですか?」
杏那がレオに聞くと、レオはぎこちなく答える。
「いや、まあ、当然の務めだ。」
杏那がふと思い出したようにレオに一つ質問をする。
「そういえば、レオ様、どうして私が彩玉家の馬車に乗っていると分かったのですか?」
レオは一つ咳払いをして平静を取り戻して返事をする。
「一昨日、杏那の部屋の窓に彩玉家の封筒が挟まっているのを見かけたんだ。そこへ水宮家からのお見合いの手紙に、指定の住所。彩玉家のことは昔から知っていたから、おおよそ何て書いてあるかは検討がついたし状況は読めた。でも杏那がなかなか僕を頼ってくれないから、僕がそっと付いて行ったんだ。僕は杏那の護衛騎士だからね。杏那を危険なところに一人で行かせたりしないよ。」
「そう、だったのですか。あの、頼りにしていないわけではなく、レオ様は言わなくても来てくださる気がしていましたし、昨日は私自身、答えを出すのに時間がかかり、それからお話するタイミングがなくて…。」
「分かっているから大丈夫だよ。杏那の思っている通り、僕は杏那のことはちゃんと把握しているし、何かあればいつでも僕が駆け付けるから安心して自由に行動すると良いよ。」
レオはそう言うと杏那の左手を握った。するとちらりと見えた杏那の左手首には以前レオがプレゼントした小さな子虎が駆ける姿のチャームのついたシルバーの繊細なブレスレットが輝いている。そのブレスレットの存在に気づいた豪、理世、周一の大人三人はすぐに察したのだった。
(((あのブレスレット、レオ様専用の杏那様追跡装置になっているはず…!)))
そんな大人たちの驚きとブレスレットの役割に気づいているのかいないのか、杏那は皆にお詫びを述べる。
「レオ様、それに皆さん、事前にお話しできず申し訳ありませんでした。昨日のことは皆さんのおかげで解決したのです。ありがとうございました。」
「杏那様、大丈夫ですわ!ぎりぎりでも私にご指示をくださいましたし、それで私から月城様、周一様にもお話はお伝えできましたし!」
「そうですぞ、お嬢様。限られた時間で見事なご判断、ご指示でした。お嬢様が謝ることなどありません!」
皆は口々に杏那をフォローした。そんな様子を見ていた廉は一人思った。
(杏那は本当に仲間を信頼しているんだな。そんな杏那から頼られる男って、杏那が直接求めなくても、気づいて杏那のために何かをしてあげられる、先回りできる男にならないといけないということか…。それをあのレオという騎士はやってのけているということか…。)
若干の気まずい空気を変えようと理世が話を振る。
「あの、そういえば杏那様から私へのご指示は水宮家の先代ご当主様をお連れすることのみでした。杏那様がお見合いのカードを私に託してくださいましたので、先代ご当主様とのお話も早かったのですが、龍也様のことも杏那様がご指示を出されていたのですか?」
「いえ、私は特に何も…。」
皆が一斉に廉の方に視線を向け、豪が問いかける。
「廉よ、そういえばなぜ龍也殿と一緒に来ることになったのだ?」
「あ、その、お見合いのカードにお見合い相手の名前がなかったので、龍也さんが出したのか確認しに行ったのです。水宮家で適齢期と言えば龍也さんくらいしか思いつきませんでしたし、でも僕のことを知っている龍也さんが出したとも思えなくて…。それで本人に確認しようと…。お見合いの話だけなら、問題ないかと思ったのですが、勝手なことをしてすみませんでした。それで龍也さんに聞いたら、龍也さんはお見合いのことは知らず、何か手違いがありそうだから確認する必要があると言って、二人で神城家の家を訪ねたのですが、皆さん出かけていると言われて。それでますます心配になった龍也さんと先代ご当主様の家に行ったのですが、そちらもすでに出かけられた後でした。それで慌ててようやくあの池の場所へと向かったのです。」
当日の廉の苦労が伝わり、皆少し同情しながら聞くと同時に、廉が杏那のお見合いを気にしていたと分かり大人たちは内心嬉しく思った。
「そうだったのか、今回は廉もお手柄であったな。」
豪が褒めると、杏那が続いた。
「そうですわ。今回の解決には水宮様の術の力が必要でした。もしあの場に龍也様がお見えにならなければ、この一件はまだ解決せず、長引いていたでしょう。龍也様をお連れくださった廉様のおかげで龍神様も水宮様も早く呪縛から逃れることができたのです。ありがとうございました。」
杏那が笑顔で廉にお礼を述べると、廉は自分も少なからず役に立てたのだと心が喜ぶのを感じたのだった。




